表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
10/302

第〇〇十話 新任紹介の騒ぎです


 始業式までは少し時間があるので、出席を取ります。担任の先生が生徒の名前と顔を一致させるための恒例ですね。

 私のクラスには編入生はいないので、名前を知らなくても廊下ですれ違ったりしているので見たことがある人ばかりです。元一組の生徒もちらほらと見えました。

 お面越しに聞こえる声は若干聞き取りづらいですが、似通った名前の生徒はいないので大丈夫なようです。

 かけていた眼鏡はスーツの胸ポケットに入っているのが見えました。やはり伊達眼鏡の可能性が大ですね。

 

 全員の名前が呼ばれた後、いよいよ始業式が行われるホールへと向かいます。背の順で二列なので、私は真ん中あたり速水君は一番後ろの方です。

 奈津子さんと並んで歩いていると、いつもより風紀委員の配置が多いなと思いました。

 普段風紀委員は専用のバッチをつけていますが、今回わざわざ腕章を付けているのです。

 何でしょう? 速水君は今朝走り回っていたようですし、何かあったのでしょうか。


 ホールへ入って椅子に座ると、やはり多くの風紀委員。あっ、応援団もお手伝いに呼ばれているようです。

 その時ポケットに入っていた携帯が震えたので、取り出して見ますと、メールが届いていました。

 速水君からで「騒ぎになったら、後ろへ下がるように」とあります。

 騒ぎ?

「速水氏からラブラブメールかしら?」

「奈津子さん……それが」

「ん? 騒ぎ……ふむふむ。ははぁ、なるほど。そういえば、もう一人の先生は三年生の副担任になったみたいよ。かわいい女の子のお面をかぶっていたので、全員どん引きだったみたい」

「……どん引きってことは男性の先生?」

「うん」

 理事長……だから何させているんですか。

 まったく……抗議文の文字数増えますよこれ。

「そういえば、私たちのクラスの副担任の先生は来ていなかったね」

「あぁ、そのうち来るとは思うけど、何しろ風紀委員の顧問の先生だから、今日は無理だったんでしょ」

「……奈津子さんって本当に色んなこと知ってるよね」

「ふふふ」


 二、三年生がそろって始業式が始まります。


 本当なら生徒会二年生メンバーも始業式のお手伝いをするはずだったのですが「一年生も春休みから参加しているし、放送部のお手伝いもあるからね。大丈夫だよ」と芹先輩にいつものにっこり笑顔で言われてしまいました。今、思うと、女子だけ外されたということなのでしょうか。

 それにしても、入学式もまだなのに一年生を使いすぎですよね。

 何て考え事をしているうちに生徒会長挨拶になっていました。

 女子生徒から黄色い声があがります。

 どこからか「芹様ー」なんて声が聞こえましたよ。風紀委員に注意されてましたけど。

 理事長の挨拶が意外にあっさり終わり。

 校長先生の挨拶も簡潔で。

 あれ? 何か急いでいる雰囲気じゃありません?

 何て思っていましたら、新任の先生の紹介の時間になりました。

 壇上に向かう先生が二人ともお面をかぶっているので、知らされていないクラスの生徒が唖然としています。

 あ、確かに女の子のお面ですね。

 隣で奈津子さんが何かアニメの名前を教えてくれました。有名らしいのですが、あいにく私は知りませんでした。魔法少女だそうです。

 二人並んで立った後、女の子のお面をかぶった先生からマイクの前に立ちました。

 そしてお面を外します。

 きゃーーーーーーーーーーー!!!!

 と女子からの黄色い悲鳴。

 柔和そうな少し垂れ目で微笑む先生でした。

「一人目もイケメンっと」

 奈津子さんが呟いて携帯に何かをうっています。

「色々な事情でまだ住む場所が決まっていなくて、学園内の宿泊施設にいたのよ。だから意外と簡単に写真を入手できたんだけど」

「奈津子さん……」

「悪用しないから安心して」

 名前は猫目 誠二、三十四歳。篠田先生より年上ですね。同じくらいに見えますよ、若いです。

 周りがキャアキャア騒いでいますが、奈津子さんはにやにやしながら携帯を見ていました。

「猫目先生の顔は知っていたんですね?」

「うん、結構早くから。さて、次はいよいよ我が担任の登場ね」

 蜘蛛男のお面のままマイク前に来た篠田先生は、一瞬躊躇したようでした。

「篠田……三雲です」

 そう言ってゆっくりとお面を外しました。

 その途端です。


 ギャアアアアアアアアアアアア!!!!


 それは「キャー」なんて可愛いものではありませんでした。

 一斉に立ち上がって前の方に集まっていきます。

 ポカンとしていた私は誰かに腕を引かれて、ようやくハッとしました。

「あ、速水君」

「大丈夫か?」

「ええ、大丈夫ですけど」

 隣にいた奈津子さんを見ると、唖然とした顔をしたまま立っていました。

「奈津子さん?」


「あ、う……嘘……俳優の松吹幸太じゃない!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ