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私は急に止まれない。2  作者: 桜 夜幾
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第〇〇一話 春休みに

第二部〔二年生編〕の始まりです。

 困惑していました。


 困却してしまいました。

 


 何に?

 と尋ねられたのならば、私はこう答えるでしょう。


 目の前の光景にと。


 ドアを開けて、私は数秒……いえ、数分だったかもしれませんが、固まっていました。

 そして、後ろにいた人物に固まったまま尋ねました。


「ここですか」

「ここですよ」

「ここしかないんですか」

「ここしか無いですねえ」


 私は目を閉じて右手を額に当てました。

 

 現在、私がいるのは私立泉都門学園高等部、女子寮の中です。

 男子寮と比べると、遙かに大きい……何しろ男子が少ない学園ですので仕方ないのでしょうけど……男子寮の何倍あるのだと言いたくなるほど大きい建物です。

 その女子寮の七階、エレベーターを降りて左に曲がった最も遠い場所に、その部屋はありました。


 突き当たりという場所に嫌な予感が無かったと言えば嘘になりますでしょうか。

 明るい廊下を歩いて、ドアの前で一旦立ち止まった時に、寮監である女性が私の指紋をそのドアに登録しました。

 はい、指紋認証システムです。

 網膜か静脈にする計画があるそうですが、まだ数年かかるとのこと。

 頭痛がしてくるのは私だけなのでしょうか。


 登録が終わり、ドアを開けて中を見た瞬間。

 冒頭のような状況になった……というわけです。


 入ってすぐの場所ですよ。居間のような場所といったら良いのでしょうか。二人部屋だとしたら、共同スペースと呼ばれる場所です。

 その場所で、すでに自宅の私の部屋より広かったのです。

 私の部屋はベッドを置いてでさえ、それなりに広いと思っていました。

 クローゼットを除いても八畳あります。

 私一人なのですから十分な広さなのですが、その部屋より広いのです。十二畳くらいはありそうですね。

 ここだけ……と言うのなら、そうですかと流せそうなものなのですが、あくまでも居間です。


 入り口ですでに疲労困憊状態になりました。

 寮ですよ、寮。


 中へ入りますと、まず目にはいるのが上品なテーブルと椅子。ちなみにテーブルは丸い形です。レースのテーブルクロスがかかっています。

 椅子は五脚。そうですそれくらい大きいテーブルです。お茶会でも開けと言うのでしょうか。

 簡易キッチンと呼ぶには少々大きいとは思いますが、他の呼び方を思いつかないので簡易キッチンと呼ばせていただきます。ともかくそれがあります。

 でも、簡易キッチンに食器洗浄機が備え付けってどうなんですか。

 トイレとバスルームは自動洗浄機能付きときています。

 さらにドアが二つ。

 左を開けるとベッドルームでした。

 無駄にウォークインクローゼットが広いです。

 バレーレッスンできそうな大きな鏡が引き戸の中に隠されていました。バレー習っていません。

 そして天蓋付きのベッドでした。前の方の趣味だそうです。変更可能だそうなので、天蓋は外してもらうことにしましょう。


 魂が抜けそうになりながら隣の部屋に入ってみました。


 勉強部屋です。

 学習机じゃありません。重役さんが座っていそうな机でした。

 本棚が両脇の壁にありますが、ここを埋められるほどの本は持っていません。

 自宅の学習机が恋しいです。


 これ、一人部屋じゃなくて二人部屋でもいいんじゃないですか? と呟いたところ、勉強部屋にはクローゼットは付いていませんと答えが返ってきました。

 ええ、そうでしょうとも。


 もう一度言いましょう。ここ寮ですよ。


 何だか今日は重力が異常にかかっている様に感じます。


 何とか歩いて先ほどの居間に戻り、椅子に腰掛けると頭を抱えました。



またしばらくの間、よろしくお願いいたします。


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