霊媒師見習いと耽美系無敵吸血鬼
チンチクリン霊媒師見習い少女と弱点皆無タラシ吸血鬼のドタバタほのぼのファンタジー的な。
「十字架アターーーーック!!」
「ぐへっ。」
胸の前で腕を十字に組み、飛び掛かると見事男に当たった。
「何しやがる、このチンチクリン!!」
「煩いエセ吸血鬼!今日こそアンタを退治してやるんだから。」
「はん、ニンニクも十字架も聖水も効かない俺をどうやって倒すんだ?」
「ふふふ、今日の私にはコイツがあるのよ。」
チャキッと構えたのは鈍色に光る−−−
「な、銀玉鉄砲?!」
「ふふん、さすがのアンタも銀には弱いようね。」
「て、アホかーーーーーー。」
スパーンという小気味よい音が響く。
「んなので死んでたまるか。」
「や、やってみなきゃ分かんないじゃない!!」
パンパンと乾いた音が数発。
「痛い痛い。地味に痛い。て、ヤメローー。だいたい、十字架も聖水も触れないなんて、お前の方が吸血鬼なんじゃねーか?ヘボヘボ霊媒師。あ、まだ見習いなんだっけ。」
ニヤニヤと意地悪な顔で見下ろす吸血鬼。
「煩いバカぁ!早くアンタ倒されなさいよね。アンタ倒せば、一人前として認めて貰えるんだから。見習いなんて給料出ないのよ。空気噛んで生きろとでも」
ぐーぎゅるるるるぅ
場違いで凶悪な腹の音が、霊媒師見習いから聞こえた。
霊媒師見習いは、みるみる内に頭のてっぺんからつま先まで赤く染まった。
「あー、 なんだ。これやるよ。」
吸血鬼は、やや気まずそうに懐からチョコレートを取り出し、霊媒師見習いに差し出す。
「……よね。」
「何だ?」
「乙女の腹の音なんて聞いてないわよね?」
「乙女ってガラかよ。」
「聖水フラーーーーッシュ。」
「ぎゃーーーーーーーーーー。」
至近距離でバッチリ眼球に、蜜柑の皮の汁を浴びた吸血鬼はのたうちまわった。
「明日こそ退治してやるんだからっ!」
霊媒師はそれだけ言い残すと、チョコレートを握りしめ立ち去った。
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