初めて死ぬのが怖いと思った
それはただの……
どうやら私は死んだようで、なんでそんな事が分かるかというと。
地面から数メートル離れた空中に浮かぶなんて芸当を出来たはず無かったので、今出来るのは私は死んで魂となった故なんでしょう。
気になるのは死んで魂を失った私の身体で、下に目を向ければ縁側に寝ている私の身体。
そんな所で寝たら風邪を引きますと思ったものの、私は死んでるのでした。
近寄ると大層蒼白になり血の気の無い自分の顔を見て、これは間違いないと確信しました。
死因に心当たりはありません。
しかし、私が死んで残るのが私の身体だけだとしたら、私の人生に全く価値は無いのでしょうね。
元々、意味や価値なんて付けようと生きてきた訳では ないですし、付けるには申し訳ないような人生を送ってきたという自負もあります。
嗚呼なんて詰まらない人生だったのでしょう。
だからか未練なんてものは、さっぱり無くて。
もう少しで見られるはずだった桜を見れないのは、少しばかり残念に思いますが、かと言って何が何でも見たいとも思いません。
ふと月明かりが強い事に気がつきました。
見上げれば、微笑んでいるようにも、ニヤリと歪んだ笑みにも見える三日月。
その月を見ていると穏やかな心に急に恐怖という感情が湧いて来て、身体の底から津波のように競り上がり、滴として目からこぼれ落ちました。
嗚呼、どうしようもなく
怖い。
控えめに揺すられて浮上する意識。
寝ていたのかと気づき、目を開ければ不安げに眉を寄せ、
「怖い夢でも見たんですか?」
涙の跡を拭ってくれる貴女。
(解ったと思っていた死を実感したのは、貴女に会えないと知った時だった)
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