コンビニ・陽気な妖怪・夜
コンビニで陽気な妖怪が登場人物の夜という単語を使ったお話を考えて下さい。
私の近所にあるコンビニは、おかしい。
平々凡々な学校生活にまぁまぁ楽しかったキャンパスライフ、この就職難にあっさり就活は成功し、なんだ人生チョロいじゃんとか思っていた。
ぬるま湯に浸かるっていうか沈んでいた私を待っていたのは、突然の解雇。
不祥事という私全然関係無いっていうか、部署がそもそも違うのに何故私が引っ被ってクビ切られないといけないんじゃいという、理不尽な理由でだ。
見事無職になった私は、なんかすべてが嫌になり一人暮らしをしていたアパートも出て、田舎のお祖母ちゃんの家に行った。
お祖母ちゃんは私のほぼ愚痴にまみれた話をニコニコと聞いた後。
「大変だったねぇ、よりちゃん。お祖母ちゃんは大歓迎だがら、いつまでもここにいんしゃい」
私の頭を撫でながらそう言ってくれた。
もちろん、何もしない訳ではない。
庭に畑もあるし、少し歩いたところに田んぼもある。
つまり農作業を手伝って暮らしているのだ。
お祖母ちゃんも結構高齢になってきていて、一人で暮らしていくのは心配だったのもあり、母も私が一緒に住むのは大賛成してくれた。
野菜もお米もとれるし、お肉は鶏を飼っている。
ただ、それでも調味料や細々とした物はどうしても買わなければならない。
そんな時に利用するのが、何故こんなド田舎にあるのか不思議なコンビニだ。
ド田舎の過疎地域に何故コンビニがあるのか全く持って謎だったが、夜に行った時、謎は全て解けた。
その日は、買い忘れた物を夜に思い出してしまい、明日買いに行けばいいと思ったものの、一度気になるとどうしても駄目で、コンビニに向かったのだ。
都会では24時間営業が普通だが、こんなド田舎で律儀に24時間営業しなくてもいいと思うし、そもそも採算は取れるのだろうかと要らぬ心配をしながら自動ドアをくぐる。
くぐってア然とした。
「何これ」
いつも閑散としたコンビニは夜にも関わらず賑わっているが、どう見ても人間の客ではないようだ。
「いらっしゃっいませー」
金髪の店員が呆けていた私に声をかけた。
「よりちゃん、どしたの?呆けちゃって」
いやいやいや、だって!
目が三つある人が目薬吟味してるわ、首の長い女性はファッション誌立ち読みしてるわ、白い着物きた女の子がアイス置いてる冷蔵ケースに張り付いてるわ、どう見ても妖怪ってやつだよね、コレ。
「あー、よりちゃんは会うの初めてか!大丈夫だよ、みんな良い妖怪だから」
あ、やっぱりより妖怪なんだ。
3%くらい特殊メイクって思ってたんだけど。
「よりちゃん、今晩は」
おかっぱ頭の女の子がニコニコ笑いながら近寄ってきた。
手には戦う女の子アニメの玩具付きラムネを持っている。
「こ、今晩は」
誰だろう。
近所といってもお隣りの家とは数百m離れているんだけど、お年寄りばかりで子供なんていなかったはず。
「小林さんちの梅ちゃんだよ」
困惑する私を見兼ねてか金髪の店員、いや今野さんが教えてくれた。
いやでも小林さんちは、一昨年老衰で連れ合いを亡くされたお爺さんしか住んでないはずなんだけど。
「おら座敷童じゃもん」
梅ちゃんが自分の正体を教えてくれました。
座敷童?
それって確か家に繁栄をもたらしてくれるけど、出ていかれたら一気に家が衰退しちゃうとかそんな感じのやつだっけ。
「あ、早く帰らねば!」
梅ちゃんは、急いでお会計をして走りさってしまった。
「梅ちゃん座敷童だからあんまり家から出られないんだよね。ほら、いないと家に災いが降り懸かっちゃうじゃない?だからここにもたまにしか来れなくてさー。今日は、よりちゃんにも会えてそうとう嬉しかったみたいだね」
「はぁ」
「最近俺たちが見える人間もめっきり減っちゃったからさー。もー淋しくて、よりちゃんがこっちに引越してから皆嬉しくて三日三晩宴会して、危うく寝過ごしてここ開けれないとこだったよ」
あははと笑いながら今野さんは的確にレジを捌いていく。
そして私は、他の妖怪たちに挨拶をされ……ちょっと待って、今『俺たち』って言った?
え、今野さんも?
「あれー気づかなかった?俺ほら、よりちゃんがたまに散歩ついでにお参りしてく稲荷神社の狐」
いやいやいや、どっからどーみても人間にしか見えないし、ていうか、チャラそうだしなんか陽気だし、めっちゃ喋るし、第一そんな稲荷神社のお狐様がなんでコンビニで働いてるんだよ!
「いやだってほら、ここイナリマートだし」
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