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vol.7*友達契約

帰りのバスは憂鬱だった。



優亜はひたすら隆一とメールし、私は一人で窓の外を眺めていた。



そんな中、2人に会話は生まれるわけないと思った。が、生まれた。



「あのさぁ、智華、聡くん狙ってんでしょ?」




私は隠し事をするのがどうも苦手みたいで、すぐに顔に出てしまう。



「違っ…違うって!そんなんじゃないよ。」



「じゃぁ、なんでイチャイチャしてたの?あたし見たんだからね。

智華のレモンを聡くんが食べてるところ。」






…言い返せない。





それどころか、私の頬は言うことを聞かなくて、どんどん赤く染まってゆく。




「なーんだ、行ってくれればよかったのに。隆一と聡くん、カナリ仲良いんだよ。」





「え!それ本当?」




私は思わず大きな声を出してしまった。



周りの人が、みんな私を見る。



「…すみません。」



私は思わず小さくなった。



でも、やっぱり頬は赤くなるばかり。


元に戻る気配はこれっぽちもない。


自分でも、興奮ぎみなのがよくわかる。


一人でため息をつくと、隣で優亜が小声で言う。



「聡くん。近づきたいんでしょ?」



頬が熱い。私は小さく頷いた。



「だったらさぁ、特別に協力してあげる♪

たぶん聡くんも智華の事意識し始めてるし、隆一に協力してもらえば完璧だよ〜!」



「…う、うん…」



優亜の考えには無理があるような気がした。



「絶対に、絶対何があっても智華たちをくっつけてあげる。」



優亜は携帯をバッグの中へしまった。



「…本当?」



「うん。本当。約束するよ。けどね、その代わりに…」



優亜は窓の外の景色を見ながら私の事を見ずに言った。



「その代わりにね…あたしと…ちょっとした契約してほしいの。」



そう言うと、優亜はパッとこっちを向いた。



「…何それ。契約?」



私の頬が、やっと冷めかけた時だった



「…私と…これからずっと…一生…ううん、永遠に仲良くして。」



私は、契約って、もっと怖いものだったりするのかな?

と思っていたが、予想は外れ、意外にも可愛らしいものだった。




すると、私の熱が移ったかのように、優亜の頬が赤くなりだす。




私だったら、『永遠に仲良くして』なんてとてもじゃないけど言えない。

相手は私の事を、表では仲良くしているけど裏では嫌っているかもしれない。

そう考えると、言った後の反応が怖くて怖くて、絶対に言えない。

そんなセリフを一瞬のうちに口にした優亜は、やはり性格に『自己中』が入っていることを

感じさせられる。



『永遠に仲良くして』。

仮に、それを自分が言ったとして、相手に『ヤダ』なんて言われたら、

悲しくて当分開き直れないかもしれない。


そう考えると、ここで「ヤダ」と言ったら、間違えなく優亜との関係はなくなるだろう。



けど、優亜の事はそんなに好きじゃないし、永遠に仲良くなんて無理だと思う。





ここは、断るべきだろう。





けど、聡くんと仲良くしたいし…。



私が小心者じゃなければ、こんなに悩まなくてすんだのに…。



私が一人で考えている間、2人には空白の時間が生まれていた。








「…智華、ダメ?」



優亜が空白の時間を突き破った。





「…契約して、どうすんの?」




なぜだかわからないが、優亜の目は涙ぐんでいた。




「どうもしないよ。智華とずっと仲良くする自信なかったから…。」




私までもらい泣きしそうだ。










「……いよ。」



「…へ?」



「いいよっ!わかった。契約しよ!」




優亜の赤い頬には涙がつたった。




「…ありがとう。じゃぁ…明日放課後、あたしの教室来て。」






何をするんだろう…。






その時、バスは止まり、私と優亜は真っ先に降りた。
















優亜がこの時演技をしていたこと

















私と友達契約をした優亜の本当の目的

















私がこの二つに気付いたのは、中学を卒業する前日だった―。













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