vol.3*帰り道の熱
―――帰り道
私とりーちゃんは、話すことなん特になくて、おたがい携帯電話をいじっていた。
私は、そんな険悪な空気の中、話を持ちかけた。
「あのね、りーちゃん。あたし、聞きたいことあるんだけど。」
「ん…?」
りーちゃんは携帯電話から目を離さなかった。
『聡くんと付き合ってるの?』なんて、恥ずかしくて、とてもじゃないけど聞けない。
けど…聞かなきゃ。
「さ、さ、ささっ、さっきさ、りーちゃん、さ…聡くんと話してたよねッ!」
りーちゃんは、携帯をピコピコいじっていた手を止めた。
「…は?」
りーちゃんは、何年も前からこうだ。
都合の良い時には仲良くして、自分の都合が悪くなったら冷たい態度をとる。
だから、いつになっても好きになれない。
「聡?は?意味わかんない。何言ってんの?なんで聡なの?」
「…いや…、りーちゃん、聡くんと仲よさそうだったからッ!
どんな関係なのかな?って思ったの。」
わかりやすい言い訳。
私は、自分の頬がどんどん赤くなっていくのが触らなくてもわかった。
「…ははーん♪わかった!聡のこと好きなんでしょ?」
お約束の展開。
「…ちがっ、そ、そんなわけないじゃん!」
私は手を振って照れ隠しをする。
「安心しなよ。そんな関係じゃないって。
ほら、部活の!うちサッカー部じゃん?
明日北中と練習試合あるから、車とか出してもらう都合でアドとか交換してんの。
親たち仲 いいし。」
そうだったんだ…。
なんだ、付き合ってるんじゃないんだね。
よかった。
「聡のメアド教えよっか?」
りーちゃんが、私のほうに携帯の待受画面を向ける。
「いいの?」
「うん♪そのかわりぃ、クレープおごってね!」
りーちゃんが、にっこりと私に向かって微笑んだ。
この笑顔は、どうも嫌いじゃない。
「うん、ありがとう!」
手早く聡くんのメアドを受け取り、走って5分ほどのクレープショップへ向かった。