vol.1*一目惚れ
私は片瀬智華。
ごく普通の中学生。
3日前、クラス替えをした。
中学生になって2年目、『先輩』になった。
テストは、いつも30位以内には入ったし、運動神経も、良くはないが悪くはない。
もちろん、それなりの恋愛もした。
友達関係も安定している。…いや、安定していた。
…3日前までは―――。
―――1ヶ月前
「とーもかっ!帰ろ♪」
同じクラスの藍子。
小学校の頃から仲が良くて、家も近くて、毎日一緒に帰っていた。
「ごめーん!今日補習だってー、抜き打ちでテストあってさぁ。20点だったぁ。」
「えぇ!いつも30位入ってる智華が!?大丈夫ー?待ってよっか?」
藍子は、笑って私のことを見る。
「平気だよ。」
だから私も、笑って返す。
「…そう?じゃぁ…わかったよ。補習頑張れ!」
藍子は大きく手を振りながら門に向かっていった。
「またねー!」
「うん。またね。」
今日のテスト、私が集中できなかったのにはわけがある。
実は、クラスが一緒になって、私の前の席の二ノ宮聡くんに…、
一目惚れしてしまった。
聡くんは、金と茶が混ざった髪に、
胸元のネックレスが魅力的だった。
十字架のネックレスで、中心には小さなダイヤモンドが埋まっている。
テストなんかよりも…聡くんを見ていたくて。
問題に苦戦して、頭を掻いていたところにも惹かれた。
おかげで、テスト時間は終わってしまい、20点という結果になった。
今日が、私にとって初めての補習だった。