vol.16*先輩の過去〜part8〜
電車に揺られて10分。
真琴とエリナは、ある小さな居酒屋に向かった。
元暴走族だった健の父親が経営してるので、
平日の午前中に入ったって注意の一つもされない。
駅の改札口を通ると、真琴の携帯に電話がかかってきた。
♪ピロリローン
電話をかけてきたのは…、自宅…。
お母さんだ!
真琴は電話に出るかでないか迷ったが、なかなか鳴り止まないのででる事にした。
恐る恐る、通話ボタンを押すと…
「はい。」
『真琴?はいじゃないわよ!今どこにいるの!
学校から電話がかかってきたわよ!…何か返事しなさい!』
「…」
『あんたねぇ、学校サボってどうするの!?
他に誰と居るの?あなた今日部活の朝練も出てないんですって!?
あなたねぇ、自分のやった事がどんな事かわかってるの?まったく…』
真琴の母は教育熱心で、
小さい頃から門限や制限が厳しく、
遊びに行く時は必ず親付きだったり、
門限までに帰ってこなかったら晩ご飯抜きだったりと、
とにかく厳しい母親だった。
中学に入ってそれは減ったものの、真琴は母の厳しい愛情にストレスを感じていた。
『とにかく、今日は家に帰ってこないでくださいね!
学校を無断でサボった人の顔なんて見たくありません!』
ブチッ
…真琴はどうしたらいいかわからなかった。
今頃気付いたが、今日は学校のある日だ…。
同級生の子は今頃授業中だ。
夜は家にも帰れなくて…。
真琴は今にも泣き出しそうだった。
そんな真琴を置いて、エリナはどんどん歩いていく。
「早くついてこいよー。」
エリナは真琴にそう言い、またズカズカと歩き始めた。
真琴は、今は母の事は考えちゃダメ、と自分に言い聞かせ、
エリナを追いかけて走っていった。