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vol.13*先輩の過去〜part5〜






―――2年前の5月






「お願いです!私をあなたたちと一緒に居させてください!」


真琴はアスファルトの道路に土下座した。



エリナたち3人はそれにかまわずズカズカと歩き、

そして近くのコンビニのある方面に向かった。



「うぜーんだよ。お前みたいな後輩が一番うぜーんだよ!」



立ち止まった3人に対し、真琴は顔を上げる。



エリナは腕を組み、見るからに強そうな態度をとっている。



「なんでそこまでウチらと一緒に居たいんだ?」



皐月は一歩前に出てしゃがみ、土下座する真琴の顔を覗き込んだ。



「…」



「言えねーじゃん。」



静香に続き、かったるそうな表情で、エリナが言う。



「どーせ、ウチらと一緒に居れば他の奴等から怖がられるだとか、

いじめがなくなるとか考えてるんだろ?」



自分の思っていたことを、そのまま突かれた真琴は、思わず冷や汗が走った。



「もーいいよ。こんな奴、放って置こ。」



3人は再び歩き始める。



「…お願いします!とにかく一緒に居たいんです!何でもしますから、お願いします!」






ピクッ






先頭を歩いていたエリナ、それに続いて静香と皐月が足を止めた。



「…何でもするって言ったな…?」



もう夢中だった真琴は、何が何だか自分でもよくわからずに頷いた。



「だったらさぁ、いいんじゃね?」



「それににさぁ、コイツよく見たら結構いい奴そうじゃん。」



「ウチらの召使い…。いいんじゃね?かなり虫のいい話なんですけどっ!」



3人はコソコソとこんな会話をし、一斉に真琴の方を向いた。



「いいよ。ウチらの仲間に入れてやる。」



エリナは相変わらず腕を組み、まるで自分が女王かのように言い放った。



「本当ですかっ!?」



真琴はその場に立ち上がった。



「あぁ。ただし、ちょっとした契約を交わしてもらうよ。」



エリナは背負っていたスクールバッグのファスナーを開け、中身を漁り始めた。



「…あった。これに書いてよ。」



エリナが出したのは、

ピンクのラメの表紙に、ペンで色々と言葉の書かれているリングノート、

そしてボールペン。


エリナは真琴にノートとボールペンを手渡す。



エリナは真琴の前までノートを持って行くと、パラパラという音をたててページを開く。



皐月と静香は両側から覗き込んでいた。



「ほら、ここだよ。早く書いて。自分の名前とクラスとケー番。あとは適当にサインして。」



真琴はボールペンを握ったが、どうしたらいいかなんとなく戸惑っていた。



「何ぼーっとしてんの?早く書きなさいよ。」



エリナはノートを叩いた。


その反動で真琴はノートを落とし、エリナの顔を伺いながらさっきのページを開いていた。



「…契約って…何を契約するんですか?」



真琴は震えた声で聞いた。



エリナたち3人は顔を見合わせる。



召使いなんて、言える訳が無い。



「その…えと…あれよねっ!静香!」



皐月は静香の肩を叩いた。



「えっ、その、なんてゆうか…、あ、そうよ!私たちと仲良くしましょう!って契約よ。

 ね、エリナ様。」



静香はエリナの肩を叩いた。



皐月と静香は2年で、真琴と同い年。




エリナと手を組んだ理由は…言うまでもない、真琴と同じだった。




静香も皐月も、エリナと手を組むまでは目立った子ではなくて、

クラスの中でも地味な存在で、真琴とクラスの違った2人はお互いに名前すら知らなかった。



だから、エリナの事も「様」付け。



「…ほら、早く書いてよ。」



いかにも嫌そうなエリナは、目を細めたまま真琴を睨みつける。



真琴はそこに、『2−3 森 真琴 080-XXXX-XXXX』と書き、

その横に小さく「まこと☆」とサインらしき物を書いた。



「何これ、キモ…」



真琴のサインに、エリナは冷たく言い放つ。



…が、次の瞬間だった。



「これで契約完了!明日からよろしくね!真琴!」



人が変わったかのように真琴はにこやかに笑い、真琴の右手を取り握手をした。



皐月も静香も呆れて身動きを止めている。



「じゃぁ、また明日。明日の朝、アタシの教室来てねー!」



するとエリナはリングノートから1ページ切り取って真琴に渡す。



「ばいばーい!」



歩いていくエリナに、皐月と静香は小走りで追いかけた。





『3−1 浅野 エリナ 090-XXXX-XXXX erina-asanoXX@XXXXX,co,jp』




紙にはそう書いてあった。



真琴は複雑な足取りで自宅へ向かったのだった。





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