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第五話
奇妙なことがつづく。
男が去るとイルミネーションの灯も消えた。
「マントのことで思い出したことがあるわ」
蘭が突然語り始めた。
「オレンジマーケットの隣町で夜になると赤マントの女が出現し、笛を吹くんだって」
そういえばバイト先の正宗さんも同じことを言っていた。
「赤マント?」
「そう」
黒マントの男と赤マントの女。
明珍火箸の風鈴のようなテレパシーを響かせる男と笛を吹くという女。
謎はそれだけではない。
マントの男が店に這入ってくるとクリスマスツリーのイルミネーションに明りが灯り姿が消えると明 りは消えた。
東北東も方角としては一致する。
「気味が悪いわね」
「でもオレンジとサイクルXってなんだろう」
「…」
でもそれはほんの一瞬に過ぎなかった。
「オレンジマーケット!」
ふたりは同時に声を上げた。
今夜九時。
謎のメモに記された時間まであと四時間。
プラタナスの並木道のはるか彼方の方角からやってきたあの黒マントの男はどこに消えていったの か。
サイクルXとはなんだろう…
ガラス張りから見る夕暮れの冬空に小雪が舞い始めた。