第二十一話 散歩
一
「散歩、これを実践している人は意外と少ない」
「どうした、藪から棒に。散歩が趣味の人間なんて山ほどいるだろ」
「そういうのは散歩じゃあない。そういう人間は大抵目的地がある。そうでなくても帰る場所はある。散歩っていうのは散って歩かなきゃいけないんだ」
「あっそ」
「もうちょっと乗っかって来いよ」
「いや、興味ねえもん」
「……」
「てか、散歩が何だとかどうでもいいから、飾りつけするぞ」
「へいへい」
「……てかその花下手だな」
「うるせえ、男子たるもの雑さも愛嬌なんだよ」
「フェミニストに怒られとけお前は」
二
日の光が短い影をつくる。暑さから考えるに、今は夏なのか、それともただここが南国なだけなのか区別がつかない。世界地図がほしい。
今回の欠片の記憶はこれだけ。大した内容では無い。散歩について誰かと自分が語っている。あと多分文化祭か何かの準備をしている。あの飾り付け用の紙の花を二人でせっせと作っていた。ただそれだけ。相手が誰かもわからない。
リョクの尋問を見ていてもしょうがないので、散歩中。それで言うと、かなり本当の意味での散歩には近いのではないかと思う。
「……この調子じゃ全回収は無理だな」
今回の欠片は、近づくまで全く気配を感じ取れなかった。こういう小さな欠片は、いくつもあった。これまでの傾向的には、欠片の大きさに比例してより大きな気配を感じるように思う。
とはいえ、わざわざ感じ取れないレベルの記憶まで無理に回収する必要もないだろう。そんなどうでもいい記憶、取り戻しても勝手に忘れるだろうし……、いやまて、もしかしたらさっきのミステリのオチが落ちているかも……。
「それはそうと暇だな」
スライムの体内の欠片なんか無視して走っていれば、昨日のうちに町についてこんな思いせずに済んだのである。そう思うと少し気分が落ち込む。
なんてことを考えながら、周辺を歩く。広場よりあんまり遠くには行くなと言われているので欠片の気配を感じたところにだけ向かっていたのだが、もうこの町にはこれ以上は無さそうだ。そのときだった。
『……』
『あ、どうも……』
『ッツ!』
さらりとすれ違った、いやすれ違うはずだったモンスターが、踵を返して逃げていった。俺は何も言えないまま立ち尽くした。
そうか、俺は部外者なのか。ずっと初めから、分かっていたこと。モンスターと種族が違うこと。分かっていたはずだった。
この世界に俺の居場所は……
「おーい、こっちは終わったよー、しゅーごー!」
「……はいはい」
広場から「声」が聞こえたので、向かうことにする。石を投げられたことは、少し迷ったけど忘れることにした。
大丈夫、俺は独りじゃない。
三
「暇だね」
「そだね」
何度したかわからない会話。どっちがどっちのセリフを言ったのかもわからない。
「私が尋問してる間、何してたの?」
「欠片拾い。しょーもないのばっかだった」
「……私の記憶は?」
「ごめん、なかった」
「……リュウが謝ることじゃないさ」
この会話も、この三日で何度したことか。俺は彼女を何も思い出せない。そのせいだろうか、リョクとは今でも微妙に距離がある。
「……そのうち戻るさ」
「ふふ、相変わらず楽観的」
「相変わらず? 昔からそうなのか」
「知らないかぁ」
彼女が一歩半先を歩く。俺はそれを少しよそよそしくついていく。たまに、ふと顔が見たくなっても見えずもどかしい。
「早めにお昼にしよっか」
「うい」
この縮まらない距離感、不思議と気まずさはなく、案外居心地が良かった。
どうも、作者です。今回は少し文字数が少ないので、作者の散歩エピソードを一つ。
昨年の夏のことなんですが、関西方面を一人旅していたんです。灼熱の大地を放浪し、大阪城の天守閣手前まで行って、結局入場料が高いから引き返すとかいう無計画にも程がある旅をしておりました。
信号を待っている間、なんとなくスマホをちらりと見たわけです。そしたら私が普段追っている小説の更新が……
いやね、おもろいよ。読むよ。けどさ、今じゃねえんだ。こっちは汗だらだらでソルティライチ様が居ないと熱中症で死にそうなんだわ。しかもこの疲労困憊状態で読むにはあんたの小説重すぎるんだよ。しかもその回よりによって主人公の相棒ポジの悲しい過去が明らかになる回でクッソ重いしさぁ……
これを読んでる作家の方。私が暇そうなときに更新してください。(無茶ぶり)




