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その右手に愛を : ReConstructed  作者: 篠ノサウロ
第一章 勇者
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第二十話 尋問



 村長さんと別れた俺たちは、宿の予約だけ済ませて、中央の広場へ向かった。


「君が眠っている間にここの使用許可を貰ってね、尋問に使わせてもらうことにした」


「尋問って……、あぁあの暗殺者のか。なんでそんな開けた場所で?」


「普通なら屋内がいいんだけどね、万が一奴の魔法が炸裂したら火事になっちゃうから」


 二人の足音と声が音の少ない空間に響く、そんな中、異質な人工的な噴き上げる音が聞こえてきた。


「噴水?」


「そ、さっき一度見に行ったんだけど、中々の深さがあってね」


 曲がり角を曲がって、広場が見えた。確かに噴水がある。


「まさか、水中で解放するのか?」


「まぁそれが一番安全だからねー」


「よく水攻めなんて許可出してくれたね。そんなのモンスターの倫理観的には大丈夫なのか?」


「まぁあの子も意外と人の心無いからね、アッサリオッケー貰ったよ」


 そら、()()心は無いだろうよ、とちょっとズレたことを考えるが、ここまで会ってきたモンスターはみんな()()()はあったな。どこで区切るかで案外変わるものだな。


「さーて、ちょっと離れててね、ロックを解除するから」


 小箱を手にとったリョクは、あらよっと、と噴水に放り投げた。そうして小走りで覗きに行って、合図を告げる。


解錠(アンロック)


『チッ、炎矢流星、消し炭となれ!』


 ここで俺はわかったことが三つある。一つはやっぱりリョクの教えた呪文は嘘だったこと、二つに、使用者が中二病患者ということは嘘じゃなかったこと、そして最後に……


「うっわおい、マジか!」


 周囲の水がいきなり蒸発したこと。





『いやぁ暴れてくれるねぇ!』


『ふん』


『君、そんなに強かったんだぁ、私の暗殺が任されるだけあるね。私の一般式よりも数倍強力じゃあないか、教えてくれないか? 何てったってこの体積の水を蒸発させるためにはざっと……』


『うるさい、殺すなら早く殺せ』


 壮絶な大魔法が放たれたかと思ったら、蒸気の中から大興奮のリョクと死んだ目をしたローブを被ったモンスターが表れた。いや、眼は見えなかったけれど、あれは間違いなく死んだ目をしていた。


『……MJ(メガジュール)位かな、んで、殺すなら殺せって?ムリムリ、まだ聞かなきゃいけないことたくさんあるもん。さて、そもそも魔法式というのは……』


『聞かなきゃいけないことがあるなら早くその蘊蓄をやめろ!』


『君、面白いねぇえ! 気に入ったよ』


 ダメだ、会話が致命的に噛み合ってない。というか噛み合わせる気がない。たまらず声をかけた。


「リョク、そろそろ聞き取りした方がいいんじゃ?」


「分かってないなぁ、これが終わるといよいよ何もすることが無くなるんだよ? 今は如何に長引かせるかを楽しんでるのさ」


「それ別に俺楽しくない……」


「ぇっ」


 リョクが泣きそうな目でこちらを睨んでくるが、無視だ無視。


「そう……そうだよね……科学の素晴らしさを共有しあった……あの頃の私たちにはもう二度と戻れないんだもんね……」


 無視したら三点リーダー症候群にかかってしまった、てかマジでショック受けてるな。数少ない俺の記憶が女性を泣かせてはいけないと警告してくるので、従わざるをえなかった。


「ごめん、人の話をつまらないなんて言うべきじゃなかった。次からは言わない」


「……言わないだけ? 思ってはくれない?」


「いやぁそういわれても……」


『何言ってるか知らねぇがイチャイチャすんなてめぇら、早く終わらせろ』


 一名キレた者が、当然である。


『あーごめんごめん、君のくっころ仕草が似合わな過ぎてついつい。そうは言ってもそこまで君に聞きたいことはないんだよねぇ……。一応確認だけど傭兵だよね?』


『あぁ、そうだ』


『誰が雇ったのかな?』


『……その口調から察するに、俺が隠さずとも予想はついてるのかも知らねぇが、一応プロなんでな、情報は吐かない』


『じゃあ死ぬ?』


 これがさらっと口に出せる(いや口には出てないのだけども)ところが、リョクの怖いところだ。ゾクッとする。


 この人だけは敵に回さないと、肝に命じておこう。


『逆に話したら助ける気なのか、あんたら風に表現すればお人好しってやつか?』


『まぁ、多分』


『なんにせよ甘いな、殺しにかかってきた相手を見逃そうとするのは』


『本職の君がそう思うならそうなんだろうねぇ』


 クスクス笑うリョク、笑いのバリエーションが多くて見てて飽きない。


『で? 何も話さないなら三十秒以内に処刑するよ。あぁそうだ周りに誰もいないところで殺らないと……』


『おっとそんなに甘くもねぇな、わーった話す話す』


『脅迫しておいてなんだが、プロのプライドは紙より薄いのかい?』


『俺の側にあるとな、気がついたら燃えてんだよ。困ったもんだよな』


 この二名の会話が軽々しすぎるところに、とてつもない違和感を覚える。だって命のやり取りだ。こんなにも簡単に扱われると、命の価値について哲学的な問いを投げかけたくなる。


 そこで何故か彼女がこちらを振り返った。そうして二人だけに聞こえる声で伝えてくる。


「ビックリした? 意外と私もこういう面があるからね」


「……だから?」


「ここから覚悟しといてね、キラーン」


 自分の口で効果音言わないで欲しかったが、返事なら決まっている。


「襲われた瞬間から、とっくに決まってたよ」


 現在時刻は11時25分。その6時間18分後に、俺はその発言の愚かさを思い知ることとなる。

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