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二歩後ろでしか、歩けない

作者: ナマケびーん
掲載日:2025/07/21

三人組の中で、いつも二歩後ろにいる私の話です。奇数は苦手、でも一人ぼっちも怖い。

実際の気持ちをもとに書きました。誰かひとりでも、読んでくれたあなたに届きますように。

わたしの名前は三影(みか)

三人でいるといつも自分だけが影になってる気がしたから、この名前をつけた。

わたしたちは高校三年生。

陽光(ひかり)揺良(ゆら)、そしてわたし。

「三人ってほんと仲良いよね」って誰かは言うけど、三人で並んで歩いたことなんて、たぶん一度もない。

わたしの中では「三人組」と言い切れる自信はない。

そう、わたしはいつも二歩後ろにいる。

一歩じゃないの。二歩なの。

一歩なら視界に入るのに、その一歩すらも意地のせいで踏み込めない。

三人で並んで歩いていても、気づけばわたしはいつも、二歩後ろにいる。

そういう自分をずっと見てきたから。


中学三年生のとき、初めて「三人組」になった。

最初は何も気にしていなかった。

でも、ある日班決めのときだった。

「女子二人、男子二人で四人組つくって」って。

なんとも言えない気まずさが降ってきた。

だって、、わたしたちは三人。

余るのは誰か一人だから。

すると陽光が、「三影なら、他の班でも大丈夫でしょ?今回はそれでお願い!」

何が「大丈夫」なのかなんて、わからなかったけど、「いいよー!」って笑った。

笑いながら、心の中で泣いた。

こういうときだけ都合よく使われる自分が嫌だった。

それからも同じようなことが何度もあった。

ペア活動、グループ学習って。

気づけば、わたしがひとりで、どこかに行かされる。

別にいじめられてるわけじゃない。

でも、ちゃんと「ここ!」っていう居場所がない。

あの頃からだ、奇数が嫌いになったのは。

初めて「奇数」の居心地の悪さを知った。


高校に入って、今度こそ二人だ、居場所がある、と少し期待した。

でも、気づけばまた三人組だった。

三人でいると、必ず誰かが真ん中で、誰かが端になる。

わたしは、ほとんど真ん中、、の後ろ。だった。

しかも、陽光と揺良は、最初から仲良しで、わたしは途中参加。

わかってる。

だからこそ、ふたりの空気を壊さないように、必要以上に笑って、合わせて、黙った。

陽光が「三人でいるの楽しいね!」と言うたび、わたしは心の中で、「そうだね」とだけ答えた。


ある朝、「三影ー!おはよー!」と揺良が廊下を走ってきた。

「昨日の宿題やったー?」

「やってなーい」

「じゃ今一緒にやろ!わたし教える!」

たまに揺良は距離が近い。

すると陽光が、「なにーズルー!」って後ろから追いかけてくる。

わたしはそんな時間が嫌いじゃない。

でも、また次の日には、揺良は陽光の方にくっついてる。


また違う日には、

「陽光ってまじ面白い!好き笑笑」

揺良が笑って陽光に言ったとき、わたしは心の中で小さくつぶやいた。

『わたしには、そんなこと言ってくれないのに』って。


数学の授業中もそうだ。

揺良と陽光は席が近い。

陽光は数学が苦手だから、揺良にくっついて教わってる。

「ここどうやんのー」

「これはこの公式使って、、」

揺良が陽光にノートを見せて、二人だけで盛り上がっている。

『わたしも混ざりたい。入れて』って言えなかった。

だって、どうせわたしが近づいても、二人の世界は変わらないから。

だから、ノートに独り言を書いて誤魔化した。


進路の話をしたときも、わたしは小さく嫌な自分になってしまった。

陽光が「もし第一志望落ちたら、第二志望、二人の大学の近くなんだよねー!」って言ってきた。

「まじ!?」と揺良は笑う。

「そしたら揺良んちでシェアハウスしよ!」って笑って言った。

わたしは考えた。

『冗談だってわかってるけど、もし本当にそうなったら、、』

だから、心の奥で願った。

『絶対第一志望受かってよ。じゃないと、うちらの予定狂うし、また三人だから』

自分でもさすがに引いた。

こんなに自分の心は小さいんだなって身に染みた。


その数日後、体育で二列に並ぶときだった。

わたしは一歩後ろに下がった。

『どうせ余るから。わたしはひとりでいいや』と。

そのときだった。揺良が、、

「三影!組も!」

内心すごく嬉しかった。

でも、素直じゃないから、余計なことを聞いてしまう。

「陽光はいいの?」

「三影と組みたいの!三影もここにいていいんだよ?」と揺良は笑って言った。

その声が、ちょっとだけ私を救ってくれた。


揺良は気分屋だと思う。

揺良がわたしにだけ話しかけてくる日が何十日に一回ある。

「おはよー!三影!あのさー二人で遊ぼ!」

わたしはすごく嬉しかった。でも、

「いいよー」の一言だけで冷たく返した。

なぜかって、怖いから。

また、遠くに行くんだろうなって。

、、、

やっぱりそうだ。

また突然陽光の方に戻っていく。


いろいろあっても卒業にはどんどん近づいていく。

わたしはまだ、『三人でいる』とは言い切れない。

でも――

あの日の体育での揺良の、、


「三影もここにいていいんだよ」


という言葉だけは、何度思い出しても、胸の奥で灯り続けている。

陽光の無邪気さも、揺良の優しさも全部、大好きだ。


『やっぱり奇数は苦手だ』


心の中でそう思いながら、それでもわたしは、二歩後ろを歩く。

きっとこれからも。

彼女たちの笑い声が遠くならないように。


でも、いつかちゃんと

『わたしもここにいていいんだ』って言えるようになりたい。

そう思った。

最後まで読んでくださってありがとうございました。三人組でいるときの、あの微妙な気持ちを、少しでも感じてもらえたなら嬉しいです。感想やレビューをいただけると、とても励みになります。書籍化を目指しているので、応援していただけたら幸いです✨

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