二歩後ろでしか、歩けない
三人組の中で、いつも二歩後ろにいる私の話です。奇数は苦手、でも一人ぼっちも怖い。
実際の気持ちをもとに書きました。誰かひとりでも、読んでくれたあなたに届きますように。
わたしの名前は三影。
三人でいるといつも自分だけが影になってる気がしたから、この名前をつけた。
わたしたちは高校三年生。
陽光と揺良、そしてわたし。
「三人ってほんと仲良いよね」って誰かは言うけど、三人で並んで歩いたことなんて、たぶん一度もない。
わたしの中では「三人組」と言い切れる自信はない。
そう、わたしはいつも二歩後ろにいる。
一歩じゃないの。二歩なの。
一歩なら視界に入るのに、その一歩すらも意地のせいで踏み込めない。
三人で並んで歩いていても、気づけばわたしはいつも、二歩後ろにいる。
そういう自分をずっと見てきたから。
中学三年生のとき、初めて「三人組」になった。
最初は何も気にしていなかった。
でも、ある日班決めのときだった。
「女子二人、男子二人で四人組つくって」って。
なんとも言えない気まずさが降ってきた。
だって、、わたしたちは三人。
余るのは誰か一人だから。
すると陽光が、「三影なら、他の班でも大丈夫でしょ?今回はそれでお願い!」
何が「大丈夫」なのかなんて、わからなかったけど、「いいよー!」って笑った。
笑いながら、心の中で泣いた。
こういうときだけ都合よく使われる自分が嫌だった。
それからも同じようなことが何度もあった。
ペア活動、グループ学習って。
気づけば、わたしがひとりで、どこかに行かされる。
別にいじめられてるわけじゃない。
でも、ちゃんと「ここ!」っていう居場所がない。
あの頃からだ、奇数が嫌いになったのは。
初めて「奇数」の居心地の悪さを知った。
高校に入って、今度こそ二人だ、居場所がある、と少し期待した。
でも、気づけばまた三人組だった。
三人でいると、必ず誰かが真ん中で、誰かが端になる。
わたしは、ほとんど真ん中、、の後ろ。だった。
しかも、陽光と揺良は、最初から仲良しで、わたしは途中参加。
わかってる。
だからこそ、ふたりの空気を壊さないように、必要以上に笑って、合わせて、黙った。
陽光が「三人でいるの楽しいね!」と言うたび、わたしは心の中で、「そうだね」とだけ答えた。
ある朝、「三影ー!おはよー!」と揺良が廊下を走ってきた。
「昨日の宿題やったー?」
「やってなーい」
「じゃ今一緒にやろ!わたし教える!」
たまに揺良は距離が近い。
すると陽光が、「なにーズルー!」って後ろから追いかけてくる。
わたしはそんな時間が嫌いじゃない。
でも、また次の日には、揺良は陽光の方にくっついてる。
また違う日には、
「陽光ってまじ面白い!好き笑笑」
揺良が笑って陽光に言ったとき、わたしは心の中で小さくつぶやいた。
『わたしには、そんなこと言ってくれないのに』って。
数学の授業中もそうだ。
揺良と陽光は席が近い。
陽光は数学が苦手だから、揺良にくっついて教わってる。
「ここどうやんのー」
「これはこの公式使って、、」
揺良が陽光にノートを見せて、二人だけで盛り上がっている。
『わたしも混ざりたい。入れて』って言えなかった。
だって、どうせわたしが近づいても、二人の世界は変わらないから。
だから、ノートに独り言を書いて誤魔化した。
進路の話をしたときも、わたしは小さく嫌な自分になってしまった。
陽光が「もし第一志望落ちたら、第二志望、二人の大学の近くなんだよねー!」って言ってきた。
「まじ!?」と揺良は笑う。
「そしたら揺良んちでシェアハウスしよ!」って笑って言った。
わたしは考えた。
『冗談だってわかってるけど、もし本当にそうなったら、、』
だから、心の奥で願った。
『絶対第一志望受かってよ。じゃないと、うちらの予定狂うし、また三人だから』
自分でもさすがに引いた。
こんなに自分の心は小さいんだなって身に染みた。
その数日後、体育で二列に並ぶときだった。
わたしは一歩後ろに下がった。
『どうせ余るから。わたしはひとりでいいや』と。
そのときだった。揺良が、、
「三影!組も!」
内心すごく嬉しかった。
でも、素直じゃないから、余計なことを聞いてしまう。
「陽光はいいの?」
「三影と組みたいの!三影もここにいていいんだよ?」と揺良は笑って言った。
その声が、ちょっとだけ私を救ってくれた。
揺良は気分屋だと思う。
揺良がわたしにだけ話しかけてくる日が何十日に一回ある。
「おはよー!三影!あのさー二人で遊ぼ!」
わたしはすごく嬉しかった。でも、
「いいよー」の一言だけで冷たく返した。
なぜかって、怖いから。
また、遠くに行くんだろうなって。
、、、
やっぱりそうだ。
また突然陽光の方に戻っていく。
いろいろあっても卒業にはどんどん近づいていく。
わたしはまだ、『三人でいる』とは言い切れない。
でも――
あの日の体育での揺良の、、
「三影もここにいていいんだよ」
という言葉だけは、何度思い出しても、胸の奥で灯り続けている。
陽光の無邪気さも、揺良の優しさも全部、大好きだ。
『やっぱり奇数は苦手だ』
心の中でそう思いながら、それでもわたしは、二歩後ろを歩く。
きっとこれからも。
彼女たちの笑い声が遠くならないように。
でも、いつかちゃんと
『わたしもここにいていいんだ』って言えるようになりたい。
そう思った。
最後まで読んでくださってありがとうございました。三人組でいるときの、あの微妙な気持ちを、少しでも感じてもらえたなら嬉しいです。感想やレビューをいただけると、とても励みになります。書籍化を目指しているので、応援していただけたら幸いです✨




