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◆4 週刊誌の深掘りニュース




 S県M郡の廃墟で男女4人死傷


 週刊スクープ 深掘り金曜速報・緊急折込

 9月27日号 S南部通信社


 廃病院での謎の溺死!

 大学生達に襲いかかった不幸な死とは?

 事故か事件か?警察の見解を精査する!


 先週起きた大学生4名死傷事件について、我が社の藤城記者が緊急取材を行った。


 先週9月18日、大学生4名の行方不明事件が発生。

 翌19日に、S県M郡にある廃墟で、溺死した大学生が発見された。


 S県警察の発表によると、事件性は皆無であり、本人達の不注意による事故であるとの事。

 だが、我々の調査で県警の説明には幾つかの不審な点がある事が判明した。



 先ずは事件の整理をしよう。


 先週の9月18日に4名の大学生が行方不明となり、その内の一人の親族により捜索願が出された。

 S県警察の素早い捜索の甲斐もあり、翌19日の深夜には届け出のあった女子大学生を含め、4名全員が発見された。

 残念な事に内3名は既に亡くなっていたが、捜索願の出されていた女子大学生は無事に保護された。


 亡くなった3人の死因は溺死。

 残っていたプールサイドの足跡から、探索中に足を滑らせてプール内に転落した事が判明。

 施設は10年以上前に放棄されていて設備の管理は行われておらず、プールの排水口が目詰まりして雨水が溜まっていた。

 水中には苔や水生植物が繁茂し、底が非常に滑りやすくなっており、自力で這い上がる事は困難だったと思われる。

 ここ迄が警察の発表であり、結果、不幸な事故であったものと結論付けられていた。


 だが、この見解には大きな疑問が残る。


 我々が疑問を抱いた最大の理由は、唯一の生存者にある。

 仮に彼女をAと呼称する。



 警察の発表によると、プールサイドに倒れていたAを発見した時、直ぐ傍のプール内に3名が浮かんでいたそうだ。

 そして、警察官がAの意識レベル(Jsc)を確認したところ、意識不明(300)と判定され、緊急搬送された。


 溺死した3名の直ぐ近くで発見されたAだが、溺れている彼等を助けようとして警察に通報した記録が無い。

 彼等が溺れた時点では既にAは通報出来ない状態であったと思われる。

 Aに一体何があったのであろうか?

 我々は幾つかの仮説を立てて、警察に質問状を出した。


 仮説1、仲間内の諍い説。


 Aと3名の間に争いが発生し、先ずAが襲われて意識を失う。

 残った3名の間でも争いがあり、3名とももつれ合って転落し、溺れた説。


 この可能性を警察は否定した。


 『彼等の身体に残った傷跡は、いずれも水中でパニックになった者が掴まろうとして出来た擦過傷や圧迫する事で出来た内出血跡のみ。

 意図的に昏倒させるならば頭部外傷や首への圧迫痕が残るが、一切確認されていない』

 ※原文ママ


 しかし、そうなると先程述べた様に矛盾が生じる。

 Aが意識不明で発見された事に対する回答になっていないのである。


 仮説2、第三者が居た可能性説。


 我々は、現場に第三者が居り、溺れている3名を横目にAを襲って昏倒させたのでは無いかと仮定した。


 『2人が足を滑らせて転落。

 それを助けようとした人物がプール内の堆積物に足を取られて溺れた事故。

 第三者の足跡(そくせき)は発見されなかった』

 ※原文ママ


 こちらでも、何故Aが意識不明だったかについて、警察は答えていない。


 第三者の足跡は無かったと言うが、写真1を見るとプールサイドが酷く汚れている事が判る。

 この様な状態で本当に、足跡の正確な判別は可能なのか?


 ※写真1

 望遠で撮影したプールとプールサイドの写真。

 ドーム状の建物の1階、掃き出し窓を通して覗ける程度。ハッキリとはしない写り方。

 プールの中は苔と植物による青緑色。かなり濁っている様に見える。

 プールサイド床面は苔や藻等によるものか、緑と茶褐色が(まだら)になっている。

 見た目は酷く汚い。


 更に、下記の写真2を見て欲しい。


 ※写真2

 隣接した5階建ての建築物。窓の拡大写真。

 窓を通して建物内が覗き見える。

 古いストレッチャーやオシロスコープの様な機械類が放置されている様に見える。


 写真を見ると、この建物は元々病院だったと思われる。

 恐らく、廃院する際に後始末をせずに放置したのであろう。

 もし寝泊まりの出来る設備がそのまま残されていれば?

 住所不定者(ホームレス)が住み着いていた可能性は高いのではないか?


 仮説3、Aが加害者である可能性説。


 実は3名をプールに突き落としたのがA本人だったならばどうだろうか?

 その後、何らかの原因【転倒や病気等】により、意識不明となった可能性。


 『体格差により不可能』

 ※原文ママ


 警察は、Aが小柄な女性である事を理由に、成人男性を突き飛ばす事は不可能だと答えた。

 しかし、足元が苔で滑る状態ならば、可能性の一つとして考えるべきなのではないだろうか?


 以上の説ならば、3名の溺死体の傍でAが意識不明の状態であった事を説明出来るのではないだろうか?

 ただし、これらの説のどれかが正しかったとしたら、警察には不都合な問題が発生する。

 これは事故ではなく、事件になってしまうという事だ。


 警察は、Aの昏倒を説明出来るこれらの説を完全に否定し、事故であると断定している。

 しかし、この様な疑問の残る事案の場合、事件である可能性を排除するべきではないと思う。

 少なくとも、3名もの命が失われた事件を事故として片付けるのは早計では無いだろうか?


 警察は事件化を(いと)って、単純な事故として処理しようとしているのではないだろうか?

 それとも、我々の知らない何かを隠しているのだろうか?


 今後も我々取材班は、隠された謎に迫る為、調査を継続するつもりである。



 ※写真3

 死亡した成人男性

 溺死した須々木陽翔【すすきはると】氏


 撮影・著 事件記者 藤城蒼佑



◆◆



 メール 灰戸チーフ


 藤城、今回の記事の反響はまぁまぁだ。

 出来れば、もう少しインパクトのある話題が良かったが…及第点だろう。

 少ない写真から、これだけ話を膨らませられたのはナイスだ。

 本音を言えば、望遠ではない建物内部の写真が欲しかったな。


 来週もこの路線の継続で行くので、溺死した3名の周辺や、この建物の管理会社から話を取ってこい。

 警察が言及を避けた未成年者達の情報を手に入れろ。


 最重要目標は入院中のAだが、警察管理下の病院でのインタビューは難しいだろうな。

 警察は、Aは事故に巻き込まれた未成年被害者という立場を利用して情報封鎖をしている。

 事件ならば、警察もAの情報を出さざるをえなかったろうがな…。

 難しいだろうが、Aが目覚めたら話を取ってこい。

 もし出来たら、表紙と特集記事をお前に任せる。


 何としてもAの素性を探れ。


 灰戸。



 メール 新井出です。


 警察から苦情が来ました。

 近所に住むお婆さんから、警察に苦情が入っているそうです。

 『事件のマスコミ関係者が、勝手に人の家の2階に上がろうとした。警察、何とかしろ』…だそうです。

 藤城さん、何をしているのですか?通報されますよ?


 灰戸さんには既に伝えましたが、藤城さんにも一応。

 どうせ蛙の面でしょうけどね。


 貴方達は気にも止めないでしょうけど、()()()というアリバイは作らせて貰います。

 『犯罪行為は止めて下さい』

 万が一の時は巻き込まないで下さいね。



 藤城メモ3


 須々木の名前を使って大学に問い合わせたところ、被害者達の共通点らしきものを見つけた。


 事務のおばさんに、残った荷物の引き取りに関して相談された。

 どうやら俺を被害者遺族と勘違いしたらしい。

 色々と喋ってくれた。

 『カワシマさん遺族から、須々木さん遺族に渡したい物がある』とか。

 カワシマとやらが、警察が隠していた亡くなった未成年者の一人か?

 大学の同サークルに所属していたらしい。

 助かった女子大生とやらも同じサークルなら、4人全員の身元が判るかも知れないな。

 とは言え、無関係の俺が行って身元確認でもされたら、流石にまずい。

 どうにかして、このサークルの情報が欲しい。



 藤城メモ4


 大学の裏垢に、このサークルの情報を求むと記入して待つ。

 報酬は一万円を提示したが、…経費で落ちるのか?



 連絡があった。

 近くの喫茶店で落ち合う事になった。

 なんとかして、入院中の女子大生についての情報が手に入らないだろうか…。




 

来週は『神代の魔導具士 過去編』に戻る予定です。

…気分に依るかも知れませんが…(^_^;)

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