第7話 日常
翌朝。
俺は愛菜と一緒に登校していた。
朝もちょっと色々あったので少し疲れている。
「先輩!と愛菜さん!」
「"と"って何?酷くない?」
夜月に声をかけられた。
なんで今日は刀弥が居ないのだろうか?
「夜月〜刀弥どうした?」
「兄さんなら一昨日から大会やで!
あ、先輩今日うちの道場でスキワルしない?」
そういう事か…
刀弥は剣道の全国大会で何度も優勝するくらいには剣道が上手い。
ちなみにスキワルとはスキルワールドの略称らしい。
「いいけど一回家に機械取りに行ってからな?
あと武器スティックもう一本買いたいからタナカデンキ寄ってく。」
「おけおけー!俺今日部活ないから先帰って掃除しとくねー」
夜月がいればプレイヤーキラーに負ける心配はあまりないだろう。
昨日の技は恐らくおっさんが言ってた蜘蛛糸を使ったものだと思うがあれさえあればプレイヤーでも死ぬか相当なダメージを受けるはず。
「2人ともスキワルやってるのー?
もし良かったら私もいい?」
どうやら愛菜もやってるようだ。
「もちろん。」
「足手まといならんといてな。」
「夜月。それ以上言ったら殴るね。」
夜月はいっつもこんな感じなので学校でも嫌われているし家族からもあまり好かれていない。
だが俺にだけは何故かめちゃくちゃ優しい。
「私の友達も呼んでダンジョン行かない?」
「愛菜さんの友達ならどうせ弱…
!!痛い!!謝るから!先輩やめて」
1発殴っておいた。
「兎に角今日はダンジョンでいいね?」
「良いです!」
そんなことを話しているうちに学校に着いた。
「また後でなー」
「バイバーイ!」
俺は自分の教室に向かう。
「おはよぉ啓悟。昨日は楽しかったかい?」
「なんで知ってるんだよ!」
「あれれー?僕は楽しかったか聞いただけなのになんでそんなに怒るんだい?」
こいつは高橋。
すごい頭がいいけどすごいムカつく奴だ。
テストで学年1位はいつもこいつが取ってる。
それなのにゲームばっかりしてるのがムカつく所の一つである。
「まあいいや…課題見せて」
「課題やる時間もないほど楽しんだのか…
羨ましいぜ…」
「うるさい」
事実しか言わないところもムカつく。
でもそんな事を言いながら俺の机に課題とメモを置いてくれるのがいい所である。
こいつが書いてるメモの中身は課題の中で俺が分からなそうなところを詳しく解説したものになっている。
見せる前提で頑張れるの凄いな…
それから授業が始まった。
俺はずっと寝て、休み時間に要点だけ高橋に伝えてもらっている。
昼休みになると俺はいつも通り3年の教室に向かう。
お察しの通り愛菜と昼飯を食うためだ。
ちなみに今日の昼飯は購買で買ったパンと愛菜が朝作ってた弁当。
「愛菜ーいる?」
「啓悟遅い…」
不機嫌そうに愛菜が言う。
4時間目の数学で分からない所を高橋に聞いていたら大分時間がたっていたようだ。
「ごめん。これあげるから許して?」
俺は謝罪とともに愛菜が好きなグミを渡す。
これを渡せば大抵なんでも許してくれる。
「許す!一緒に食べよー」
恋人と一緒に学校で食事をする。
…幸せすぎ!
そして五六時間目も相変わらず寝て授業は終わり校門前で愛菜と夜月にrineを送る。
『今校門前にいるけど。タナカデンキくる?』
ちなみにタナカデンキとはただの家電量販店である。
学校のすぐ近くにあるのでゲームの発売日には学校帰りに高橋が新作を買っていく。
『いく!校門前で待ってて!』
『ちょっと無理かなー。すまんな先輩。
道場で待ってるから武器スティック買ったら来てねー』
愛菜と夜月から返信がきた。
とりあえずは愛菜を待つ。
その間暇なのでスキワルの攻略サイトの掲示板でも見るか…
ーーーーー
【速報】
夜月の友人と思われる新人プレイヤー現る。
1
ゴーヤの街の近くの森で夜月が話しかけてそのまま誘拐して行ったのを目撃。
夜月が速すぎたせいでブレブレの写真しか取れなかった。
2
この人昨日ギルドで見た。
3
夜月様が男の人を誘拐!
4
腐女子去れ
5
そいつなら夜月に宿屋まで連れていかれてログアウトしてたぞ
ーーーーー
………俺の事だよな…
夜月ってそんなに凄かったんだ。
まあ全世界6億台売れてるゲームなら当然か…
「啓悟ー!早く行こー!」
「この子が愛菜の彼氏さん?…愛菜にはもっといい人いるんじゃない…」
愛菜と失礼なことを言う女が来た。
いやまあ…高橋ほど頭良くなければ刀弥みたいにイケメンでもないし運動神経もそこまでない。
俺が誇れることなんてゲームくらいだな。
メリオゴーカートのタイムアタックで世界12位!
スキワルとコラボしているアニメ、愚者の異世界日記のバトロワゲーのランクマッチプラチナランク!
ポシェットクリーチャーランクマッチレート2000!
ワンコ大戦闘深淵ステ全クリ!
その他諸々好成績!
…つい興奮してしまった…とにかく俺が人に誇れるものはゲームくらいしかないわけだ。
「愛菜…その人誰?」
「同じクラスの美咲だよ。
ちなみに今日ダンジョン一緒に行くのもこの子ね。」
嫌なんですけど…まぁしゃあない。
「おっけー。じゃタナカデンキ行こ?」
「うん!」
「割引チケットあるよー」
…良い奴かもしれん。
その後タナカデンキへの道中で美咲とやらに愛菜に着いて色々聞かれた。
愛菜についての話が盛り上がっている所でタナカデンキについた。
「何買うの?」
知ってるだろ…って美咲は朝いなかったか
「追加の武器スティック」
「だったらアタッチメント2個セット買った方がいいんじゃない?」
アタッチメント!そんなのあるのか
…でも非公式品だと壊れたりしそうだな…
「公式から出てるの?」
「もちろん」
だったら買うか…
「確か1つのボタンに色んなことを設定できるようになるんでしょ?」
「そうそう!スマホアプリでボタンごとに発動する効果を決めることで面倒なスキル発動やアイテム効果をまとめて出来るの!」
愛菜の情報すげー
それについていけてる美咲も凄い。
「あったよブレインゲームの周辺機器コーナー」
ブレインゲームとはスキワルの子会社でスキワルや他のゲームのためにゴーグルやスーツなどを作っている会社のことである。
ブレインゲームのゲーム機を使えばアニメや漫画を見る時にまるで自分がその世界の住人のひとりになれたかのような気分で見ることが出来る。
その他諸々良い機能が着いてるせいでお値段が高め。
さらにゲームをやるにはそのゲームに合わせた専用のアイテムが必要。
スキワルの場合初期セットは売られているのだがスキルやプレイスタイルによって結構高めのお値段で追加の物を買わないといけない。
「あったよー追加用武器スティック。
…2万…高いねー」
2万!まずい!今財布に1万5000しか入ってない!
「ごめん…買えないから家帰ろ。」
「?…なんで買えないの?」
「私30パーオフクーポンあるけどそれでも買えない?」
美咲さん神です!…30パーオフなら…ギリギリ買える…でもアタッチメントは無理だ。
「それなら武器スティック買えるけどアタッチメントは買えないかなー」
「じゃあ私払うよ。」
愛菜!?…彼氏として買ってもらうなんて情けないこと出来ない!
断ろう。
「いやいいよ…アタッチメントは諦める。」
「いいよいいよ。その分今日の夜に体で支払ってもらうからね?」
反則です!支払いたいです!
「お願いします!」
「素直でよろしい!」
「…飼い慣らされてんなぁ…」
美咲がなにか言った気がするが気にせず買ってもらう。
にしても2日連続だとちょっときついか?
…昨日やりすぎた俺も悪いが…
「2点で3万500円になります。」
「クーポンお願いします。」
結局買ってもらった。