第三十二回 ダイアが机の上に置いていた
ダイアが机の上に置いていた小さいスピーカーからチピチピチャパチャパと陽気な音楽が流れていた。チハルにはダイアが何をしようとしていたのか分かった。動かないダイアを見て頭を抱えた。
このまま見殺しにすれば、彼は本当に壊れてしまう。彼は一人きりだ。彼を直せるのは自分しかいないのではないか。
机の上に血の付いたタオルが置かれていた。
もう自分は彼に惑わされることはない。
それなら別に彼といてもいい。
「あーくそっ!」
チハルはうなった。決意した。動かないダイアの着ている服を脱がした。ダイアはタンクトップにパンツと下着姿になった。胸毛は生えてなかった。
チハルもリボンを外し、制服を脱ぎ始めた。不思議と恥ずかしくはなかった。体が燃えるように熱い。
すると、ダイアが息を吹き返したかのようにゆっくりと体を起こした。立てる体力はないらしい。その場で足を広げながら、ケラケラと気の抜けた笑い声をだした。
「ハハハハ。お前も成長した。俺の、跡継ぎになれるぞ」
「私はあなたのようにはなりませんよ!」
「そうかい。ハハハハハ」
駅前に人だかりができていた。皆、面白そうに見ている。カメラで撮影してる人もいる。彼らが見ているのは、猫耳をかぶり、西桜のタスキを下げ、スピーカーからチピチピチャパチャパと陽気な音に合わせて踊るチハルの姿だった。
完




