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第三十回 日は落ちて、辺りは
日は落ちて、辺りは暗かった。部室に着いても、光が漏れていない。
(ここにはいないのか?)
扉に手をかけると、鍵は開いていた。
部屋の奥で卓上電球に淡く照らされているダイアが立っていた。
チハルが見たのは後ろ姿だけだ。
気づいていないのか、ダイアは振り向きもせず、何やらねずみ色の服に着替えていた。
「少しきついが、なんとか入りそうだ」
声の調子は元気を取り戻していた。着ていたのは、猫耳としっぽがが付いた着ぐるみパジャマだった。
その奇怪な姿を問うのは後回しにして、チハルは声を張り上げた。
「さっきの話ですが……嫌です!」
するとダイアは振り向きもせずに言った。
「そんなそっけない返事を待っていたんじゃない!」
さっき血を吐いたとは思えないほど、声は生気に満ちていた。
チハルはまだ言い足りない。
「それから、私はあなたのマネージャーを今日限りで辞めさせてもらいます!」
その言葉はダイアの思わぬところだった。耳を疑うような表情でふり向いた。
「辞める?……どうして?」




