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第二十九回 部室から出ると日没前の
部室から出ると日没前の冷涼な空気が肌を触った。夏も終わろうとしている。季節は秋だが今年は暑い日が続いていた。
サッカー部のいない校庭は静かだった。帰ろうとしている生徒の笑い声が遠くから響いてくる。
チハルは教室に向かった。無論、帰るためだ。
廊下で数人とすれ違った。誰もが穏やかな顔をしていた。
教室には居残っている生徒がいた。隅っこに集まって携帯ゲームをしている。気合の入った声を上げて喜んでいる。
チハルは夢を見ている気分になった。いや、これが現実だ。今までが夢だったのだ。ダイアと過ごした日々は戦争のようであった。
「なんて平和なんだろう」
チハルはカバンを手にしたまましばらく考えた。だんだんとダイアに対して怒りのような気持ちが湧いてくる。
一言、言ってやりたくなった。どうしても怒りが収まらない。
私は、私だ。一人で戦争ごっこでもしてろ。
ダイアは部室に居るだろうか。というか、血を吐いたのだ。死んではいないだろうか。もうどうだっていい。いっそとどめを刺しにいってやる。




