第二十回 地区予選試合当日
地区予選試合当日、チハルはサッカー部のマネージャーではないので、試合は観客席で見ることになる。特にダイアからの指示はない。チハルはてっきりダイアから「僕のプレーを見てくれ」などと言われるかと思ったが、試合は社会勉強には不必要らしい。
試合は3対0で西桜の圧勝だった。その試合の中心にいたのはまぎれもなくダイア。ミッドフィルダーのポジションで、ボールを鮮やかに左右に散らし、時にはドリブルで相手を抜き去り、時には決定機を作り、この試合で1点を決める活躍ぶりだった。
ダイアのプレーは確かにすごい。素人のチハルから見てもそう思った。これならプロも目指せるのではと、チハルは聞いた。しかしダイアは自分のような選手は全国にごろごろいると言って、苦い顔をした。
西桜の快進撃は止まらず、難なく予選を優勝で飾った。
すると、ダイアのもとに数多くのメディアが押し寄せた。これは大会前のダイアの売り込みが認知度を上げ、人脈を広げていった功もあるだろう。メディアはさも自らが目をつけていた逸材が開花したとばかり持ち上げた。
これはダイアの思惑通りで、多忙ながらも、取材の一つ一つを快諾していた。
ある取材ではこう述べた。
「一般にチームの勝利というのは私は嫌いです。負ければチーム全体の責任にするのは責任逃れだ。私は個人が責任あるプレーをすることを心掛けさせている。そうすればチームは引き締まる」
これは自分の活躍を誇っていると受け取れる。ダイアは存分に自分をアピールし、本当にスターになろうとしていた。そばで見ていたチハルも今や疑いの念はない。この人に付いていける自分が誇らしかった。




