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第8話 もっと、話したいのに

東山刻晴。

同級生。

彼は入学式後の教室で私の顔を、身体を見て、あからさまに嫌な顔をしてから、指定された私の前の席に着いた。

男子が私の顔を、『身体』を見て、嫌な顔をされたのは初めてだった。

女子に嫌な扱いをされた事はあったけど。


彼と会ったのは初めてではなかった。

彼は覚えてなかったようだけど。

初めて会ったのは異国の地で、ここまでは避けられなかったんだけどな。

ていうよりは、助けられたんだけど。

その時には他の男子達とは違って、私の胸をチラッとだけ見た後は私の目を見て話してくれたのが印象的だった。

その頃から他の男達は、例外なく私の胸だけを見て話し続けていたから。


この大きな胸は、私のコンプレックスだった。

女子友達には羨ましがられたけど、私にとっては邪魔者以外の何物でもない。


まあ、お付き合いしている人でもいたならばご奉仕でも出来たんだろうけど、奥手な私はそんな人がいるはずもなく。

ただただ、持て余しているだけだった。


その彼が、東山刻晴が、たった今、私の目の前に現れた。


動物病院。


もはや私の人生のパートナーとなった猟犬『プレアデス』。

呼び辛いから、最初から『すばる』と呼んでいるけど。


支払い待ちで控室に居ると、突然入ってきた彼。

『すばる』が興奮して、尻尾をブンブンと目にも止まらぬ速さで振り回しながら、鼻息荒く飛び掛かる勢いで彼の関心を引こうとした。


コイツは、私が嫌っているヤツには絶対に懐かない。

いや、懐かないどころか猟犬の本能なのか、噛み殺す勢いで向かっていく。


逆に、私が好意を持っている人にはこれ以上無いくらいに媚を売ろうとする。

何故なのか、何処かで、心の奥底で私と繋がってでもいるのかも?


「………………………………………あっ!」

「………………………………………あっ!」


「東山、なんでアンタがここに来るのよ!」


心にも無い言葉が、口から出てしまう。

返事を貰えなくて、思わず舌打ちまでしてしまう。


何でなのよ!

何で返事してくれないのよ?

もっと、話したいのに!

もっと、交わりたいのにっ!

学校で目の前の椅子を蹴ってしまうのも、関心を惹きたい、振り向いてもらいたいからなのに。


『すばる』のように、素直に好意を表せるようになるには、どうすればいいのよっ!

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