第4話 見つめ合ったまま
「……………………っとうわたっうっ?」
「……………………………………………」
「……………………………………………」
『クゥ〜ン…………………………………』
『フミャ……………………………………』
土手から滑り落ちてしまって固まっていた僕を、ワンコが正気に戻すように鳴き声を上げながら見つめていた。
雨上がりの土手から滑り落ちたけど、草むらの上を一気に滑るように下まで落ちたのでそれ程汚れてはいなかったけど、こんな美少女の前でみっともない真似をしただけでなく情けない声を上げて少し恥ずかしくなってしまった。
僕を見つめていた目の前の制服少女の腕の中には、小さな段ボール箱。
ゆっくりとワンコが入った箱を落とさないように立ち上がった僕は、彼女の腕の箱の中に真っ黒なにゃんこが居るのに気が付いた。
「うわ〜、にゃんこだ〜?」
「うわ〜、ワンコだ〜?」
僕と彼女は、お互いの腕の中の箱を覗き込んで、同時に声を上げた。
重なった声に思わず顔を上げたら、彼女が同時に見上げてきた視線と合ってしまって、ドキッとして固まってしまった。
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『クゥ〜ン…………………………………』
『フミャ……………………………………』
「うわ〜、にゃんこだ〜?」
「うわ〜、ワンコだ〜?」
滑り落ちてきて立ち上がった彼の腕の箱の中には、真っ白な、ワンコが。
思わず声に出してしまうと、彼も同時に声を上げて揃ってしまった。
恥ずかしくなって、恐る恐る顔を上げると、また彼と視線があってしまう。
「……………………………………………」
「……………………………………………」
『クゥ〜ン…………………………………』
『フミャ……………………………………』
なんとなく、可笑しくなって、彼と見つめ合ったまま、笑ってしまった。
作者より
過去を思い出しながらこのシーンを書きたくて始めた物語です。
この後の展開などでご要望がありましたらコメントなどください。お願いします。
なお、現実世界ではハッピーエンドではありませんでした。
せめて物語の中では、ワンコにゃんこと共に幸せになれるようにしようと思いますので、ハッピーになれるご要望で。