ベスト4入り
ベスト4入りをかけた準々決勝ともなると、流石に秒殺するのは難しい。相手もくせ者揃いでトリッキーな敵ばかりだからだ。しかし、そんな手強い相手を迎えながらも沖矢は冷静だった。
まず、敵のコンを封じる事にした。これは、武器を手にした敵を相手にした時のセオリーであり、鉄板であった。大抵の場合、どんなトリッキーな武器を使っていても、武器さえ封じれば、勝利はぐっと近づく。それは沖矢の場合にも言える事である。その為、沖矢は武器破壊の必殺技"9の太刀"を使用する事にした。
9の太刀が決まれば、ある程度の勝利の道筋は見えて来る事になる。9の太刀は元々、相手がトリッキーな武器を持っている事を想定して、開発した剣技である。刀使い(剣士)にとって、相手が素手である事はほとんどない。
戦場でもそれは同じ事である。その為、9の太刀は陸上兵士として活躍するのならば、うってつけの剣技でもある。
沖矢の作戦は上手くはまった。沖矢の使った9の太刀により、敵のコンは原形をとどめない程木端微塵に打ち砕かれた。敵もまさかここまで武器を破壊されるとは思っていなかった。コン無しでは戦いにならない為、この時点でギブアップし投了した。
しかし、それでも沖矢の表情は冴えなかった。この程度の戦い方では満足しては駄目だと思っていたのであろう。弱い敵に取りこぼさないのは当然の事である。強さに対して貪欲な沖矢が見据えていたのは、こんなちっぽけな大会の優勝ではない。世界の強豪から尊敬され崇拝される様な誇り高き武人になる事である。その為の一里塚でしかない。
この大会は、今までやって来た事の基本が身に付いているかを試す機会でもあった。高いレベルの目標設定をする事で、自らを鼓舞するのは悪い事ではない。沖矢俊才の名が世間に知られる様になるのは、まだ少し先の事であるが、沖矢の存在はやがて連邦軍の陸上兵力にとって無くてはならないものになって行く。
何はともあれ沖矢俊才はベスト4入りを果たした。ここまでくれば大会の頂点も見えて来た。油断大敵ではあるが…。