第三章~現実~
華々しい事ばかりが続いていたわけではない。戦争の現実とも否応なく向き合わせられていたゼロフォースの兵士達であった。
ゼロフォースの兵士達は、作戦命令が無い時は第56歩兵大隊と行動を共にする事が決められていたのである。第56歩兵大隊は、普通の歩兵大隊であり、連邦軍の地上作戦の為の主力部隊である。
中国の首都北京攻略戦争や、重慶や上海の攻略戦争にもゼロフォースは第56歩兵大隊の一員として、出撃していた。そこで初めてゼロフォースは戦争の恐ろしさを知る事になる。時に隣にいた兵士が爆殺されたり、時に原形をとどめない程の激しい銃撃を受けたりもした。地上戦はそのほとんどが消耗戦である。いかに兵士達を消耗させないかが、戦の勝敗の鍵を握っている。と、言っても過言ではない。
中国の重要都市の攻略にはてこずっているが、成長のチャンスはそう言う時に訪れる。第56歩兵大隊にいる事で、実戦不足を解消させたかったのであろう。各都市を制圧する事が出来なければ、主力部隊である海軍や空軍戦力に好き放題やられてしまう。
中国も日本連邦軍にやられっぱなしではない。迫撃砲や10㎜マシンガン、機銃等で徹底抗戦している。陸上戦で何よりも脅威だったのは、中国陸軍が西暦2498年に正式採用した、98式戦車である。連邦軍陸上方面軍の戦車大隊が展開するまでの時間稼ぎをしなくてはならなかった。それはゼロフォースであっても、困難なミッションであった。
そこで航空方面軍のF-156を中心とした空対地ミサイル(ナパームタンクブローカー)を用いて、敵戦車部隊の殲滅に取りかかる事にした。その威力は凄まじく、連邦軍陸上方面軍戦車大隊が到着する頃には98式戦車をはじめとした中国陸軍戦車大隊は壊滅した。この成功の影にはゼロフォースによる決死の地上対応が上手く航空方面軍とリンクしたものによるものがあった。
こうして制空権を確保した連邦軍航空方面軍はこの戦争を終らせるための一手を打とうとしていた。




