マグマの噴火
中国と日本の戦争の歴史は大日本帝国が存在していた時期まで遡る。今回の様な大規模な軍事衝突はもう、かれこれ10回以上を数える。双方に多数の犠牲者を出しながらも、両国が手を取り歩み寄る事は一切無かった。
世界の実力者達も、この2国のどちらかに付き単純なる二極化構造を意図的に産み出して、それに甘んじて来た。中国が中心となって進めて来た共産主義陣営と、日本連邦国が中心となった資本主義陣営の戦いでもあった。長きに渡り勝敗がつかなかったのは、何よりも相互に破滅する事が分かっていたからである。
となると、必然的に軍拡競争は加速化する。これは仕方の無い事である。中国と日本連邦の間の軍拡競争は長きに渡り繰り返されて来た。そしてそれを止められる覇権国家も消え去っていた。
戦場で試されるのは、訓練の成果であり、それまで開発して来た兵器の能力であり、総合的な軍事力である。戦争を人類が手放せないのは、そうした性格を満たしているからに他ならない。テクノロジーの進歩には必ず戦争が1枚絡んでいる事が多く、人類の進歩には戦争によりもたらされるものが多い。残念ながら、戦争以上に効果的且つ有効的な手段を人類は獲得出来ていない。
しかし、今回ばかりは連邦軍も中国を潰す事に本腰を上げていた。と言うのも、偶発的な軍事衝突だけでなく、いよいよマグマが噴火する時を迎えようとしていたからである。連邦軍内部の不満のガスは、いつ爆発してもおかしくはなく、最早戦争やむ無しと言う所まで来ていた。
ゼロフォースを用いたミッション「アシタノキャリア」で成功を収めた日本連邦軍は、一気呵成に有利な状況で戦いを進めたかった。焦点は、早くもゼロフォースを出撃させる次の戦いに向いていた。元々日本連邦軍は、長期間の戦争に耐えられるだけの戦力を保有していない。いや、正確には日本連邦軍が全力で戦える期間は限られていると、言う方が正しい。要するに限りある戦力の中で可及的速やかに作戦を行う必要があった。




