第一章~特待生~
時は西暦2500年。日本連邦は度重なる核戦争により、滅亡の危機に瀕していた。また、核戦争とは別に宿敵である中国との戦にも手をやいていた。日本国連邦総裁である江村民生首相は、この苦しい国難に対策を打つため、日本国連邦全土に対して腕自慢の若い男を集める為、武道大会を開く事を決定する。この大会の上位16名は、日本連邦軍に特別待遇で入隊する権利を与えられる。
この物語は、その大会名[ストロンゲスト・オブ・ザ・ユナイテッド]日本国連邦で最も強い人間を決める(軍関係者以外)この大会はこの大会が記念すべき初回であった。エントリー総数は1万人であった。まずは書類選考で1000人に絞られた。二次試験からは実技試験を採用。第二次選考を通過したのはその内の100名のみ。
最終選考は、その100名をトーナメント方式で戦わせ、相手を殺す事以外は何をしても良い。ちゃんとレフェリーもいる。安心してくれ。どちらかが降参するまで戦いを続ける。それだけがこの狂った世界の成れの果てで行われるサバイバルトーナメントであった。
この物語の主人公である沖矢俊才もこの、サバイバルトーナメントの100名に残った一人で24歳未婚である。身長176㎝体重65㎏と平均的な大和民族の持ち主ではあるが、彼はサムライの持つある剣術を使える為、ここまで残った。その剣術の名は連邦が絶滅危惧種に指定している一刀両断流と言う。しかも沖矢は免許皆伝の使い手だと言う。流石に真剣勝負とは行かず木刀でも、殺傷能力はある。
この時代にあって、剣術は最早化石に成っていた。過去には武士と呼ばれる国民の大半が使える様な国技であったが、重火器の発達により、軍人の標準装備はマシンガンや火砲にとって変わった。日本連邦軍で現在剣術を使えるのは人口比(6000万人)の0.01%(6000人)に過ぎない。それでも剣術が滅びなかったのは、サムライプライド=武士の誇りを持った人間達がいたからであろう。
時代は変わっても、廃れないものもある。剣術が使える。それを見た審査員は息を飲んだと言う。それ位沖矢俊才の一刀両断流剣術は、軍人としての素質があり、順当に書類選考を通過したのは正当に評価されるべきだろう。この時代の日本連邦軍の貴重なエース候補生である。