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windows95 Phantasmagoria

windows95のマイナーゲームをやってみた感想文です。

1996年、高校一年の時に我が家でも時代の流れに乗ってパソコンを買おうという話になって、windows95がデフォルトで入っていたモニター一体型のPCをロケット電気で買ったのでした。凄い田舎でしたので、当然ネットなんて繋いでおらず、PC単体でメモ帳とマインスイーパだけしか使い道の無いPCであり、文章の印刷はワープロ『書院』があったのでPCなど全く不要でした。

それでもPCが自室にあるって凄いことだったんですよ。同じ高校の女子が毎晩代わる代わる三人づつマインスイーパをやりに泊まり込みで来ていたので。そのうち二人が眠ってしまえば残った一人とやりたい放題でしたから。恵まれた環境といえば恵まれた環境。田舎町では当時のPCの恩恵って計算能力がどうのこうのとかじゃなく、とにかく『買えばリアルに女とやれる』っていうだけの夢の家電でした。

そんなこんなでPCのPCとしての使い道が全く分からなかった当時、とにかくCDソフトを買って差し込めばファミコンみたいにソフトごとに違う画面が出てゲームみたいな『何か』が出来るという情報を得て、とにかく電気屋に通って手当たり次第にCDソフトを買ってPCに差し込んでみるという事をやっていました。『一太郎』とか『浅倉大介のデジタルミュージックメーカー』とか、とにかくなんとなく格好良さそうなパッケージのソフトに全バイト代を注ぎ込んで買っては差し込んで、意味が分からなくてインストールすら出来ないまま終わって。ネット情報が得られないと個人ではソフトのインストールすら出来ないというのは当時としては結構あるあるで、ソフトのインストールは基本的に電気屋が出張サービスで行うものでした。それでも、メモ帳しか使わないのに『一太郎』を入っているのか入っていないのか分からない状態でPCを使っていたって効果のほどなど全く実感できない日々。インストール=ゲームスタートだと思っていて、毎回CDを挿してインストールを押して、読み込みを待って『完了』ってこれでゲーム終わり?って思っていましたから。そんな時代、ロケット電気のwindows95専用ソフトコーナーで、まるでトロフィーのように掲げられて売り出された、この『Phantasmagoria』というソフト。ポップには『海外ゲームソフト』とだけ書かれていて、PCソフトの中でも特に異彩を放って見えました。うっすらとしか覚えていませんが販売価格が一万円を超えていて、買うのに覚悟がいったのだけは覚えています。

先日、庭にある大谷石の二階建ての米蔵の中を探索していたら、このwindows95搭載のPCと大量のソフトが当時のままの保存状態で出てきて、試しにコンセントを挿して起動してみるとHDも壊れておらず当時のままのスペックで動いたため、今の知識をもって動かしてみました。驚いた事にWordもExcel入っていました。当時20万近くしたPCですから、デフォルトで入っているソフトも充実しています。当時、なんて無駄な使い方をしていたのかと痛感させられます。

そんな中、この『Phantasmagoria』というCD7枚組ボックスの箱を見つけて、とりあえず現代の知識をもって難なくインストールしてプレイしてみたのですが、これがとんでもなく凄いというかなんというか、『異常』なゲームでした。

最近のゲームだとゴーグルを着けて実写空間の中にCGのキャラを出現させるARというのはあるじゃないですか?

このゲームはそんなARの逆で、CGの空間の中を実写のキャラが動くという仕様になっています。映画とかで想像すると『それってありきたりじゃね?』って思うかもしれませんが、それがゲームとなるとどれほど難しい事か想像できますか?

これが単純な横スクロールアクションなら実写の動きもそれほど多くのパターンは要らないのかもしれませんが、このゲームは各部屋の天井付近に固定されたカメラ視点で、主人公はバイオハザードのように自由に動き回って各部屋の中を探索したり走り抜けたりといった操作が出来ます。共通の動きのパターンを撮っているというより、各ステージ毎に実写で膨大な量の動作パターンを撮って、プレイヤーの操作毎にそれらの動きを上手く繋ぎ合わせて自然に動いているように見せているようで、アナログ方式で製作にとんでもなく手間のかかったゲームだという事が覗えます。

最近のCG技術がいくら進んだとはいえ、主人公含め人間や動物の描写がCGと実写とでは動きや質感のリアルさが全然違います。単純に実写がリアルの到達点な訳で。

そんなわけで、背景ではなく人物側を実写にした仕様のゲームなんて後にも先にもこのゲームくらいなものでしょう。

このゲームは、ストーリーはSFCの『弟切草』とほぼ同じで、操作感はFCの『龍の寺殺人事件』に似た感じのゲームとなります。

私が今回プレイしたwindows95版は英語版のため、深いニュアンスまで汲み取れていないと思いますが、大まかなストーリーは以下のようになります。

イギリスで、とある新婚夫婦が海沿いの田舎町にあった古い城を新居として買いました。夫は有名なプロのカメラマンでそこそこ金持ち。広い庭付きの古城を買って、そこをアトリエにして、ゆくゆくはそこを自分の会社にしたり学校みたいにしたいと思っていました。

ゲームは夫婦がその城に引っ越してきた初夜の場面から始まります。

夜中に妻のエイドリアン(主人公)がメチャクチャな二重悪夢(悪夢を見て起きたと思ったらそこもまだ悪夢の中でさらに怖いものを見る)を見て絶叫しながら飛び起きるシーンというのがタイトル前のオープニングムービーとなります。

弟切草一話分くらいの短いストーリーにCDソフト7枚も容量を使っているゲームなので当然、音楽やSEは全て生音ですし、映像も実写とCGが半々の映画並の完成度です。冒頭のムービーから新婚夫婦の引っ越し初夜という事もあって、飛び起きた妻も夫も当然全裸ですし、実写なので、この時点でこのゲームが同時期のSFCのゲームなどとは全くの別物だと気が付くと思います。

おそらくですが、この主人公の女性を演じている役者さんってそれほど若くないと思います。全裸慣れしている実写の女主人公が冒頭からさも当然のように普通にしゃべって話を進めるゲームなんていうのが出来たなんて、当時これをプレイしていたらもの凄いショックを受けた事でしょう。

ストーリーは、この後、夫の言動が徐々におかしくなってゆき、妻が原因究明のために城の中を探索して、最終的にこの城には悪魔が住み着いているっていう忠告の本を見つけて悪魔祓いの呪文を唱えて妻が悪霊の住む地下室を立ち去る場面でラストになるのですが、その時の妻が無表情で、悪魔を祓う事が出来たのか悪魔に負けて妻が悪魔になったのか分からないままのエンディングとなります。

このゲーム、含みを持たせたラストは面白いのですが、途中に挟まれる数々の残酷なシーンがあまりにもグロテスク過ぎるため当時は結構な話題になっていたみたいで、後にセガサターンから日本語版が発売された際にはCDソフト1枚で、エロシーン、グロテスクシーンは全カットのダイジェスト版みたいな仕様に改編されたようです。(それでもwindows95版にR指定は無かったです。当時、ゲームにR指定というもの自体無かったのかもしれませんが。)

実際、当時でも特撮の技術はそれなりにありましたし、実写のグロシーンはCGのモータルコンバットのグロシーンなどよりもリアリティがあって精神的にキツいものがあります。

ゲーム序盤で、夫と二人で庭のテーブルで楽しく食事をしていると夫がいきなりおかしくなって、近くにいたペットの黒猫を両手で引きちぎってその肉片を妻の口の中に押し込む(結局は夢オチ)シーンとか、特撮フィクションと分かっていても実写だと本当にショッキングな映像として記憶に深く残ります。SEも電子音じゃない生音ですし。

この時代、プレイヤーにしても製作者にしてもゲームの『楽しさ』に何を求めていたのか疑問です。

そこそこの歳の落ち着いた新婚夫婦の生活を天井付近に設置した定点カメラで観察するような視点。妻はプレイヤーが意のままに動かせる。その妻は当時の流行もあってか、いつもピッタリとタイトなセーターを着ていて、何かにつけて動けば胸が揺れる。プレイヤーの操作次第で夫に胸を押し付けてアップ画面に切り替わってディープキスという行動を無意味に繰り返す事だって可能。 そんなホワッとしたエロを大いに含ませながら、そんな熟れた色気がある普通の新妻が悪魔のトラップに引っ掛かって、狂った旦那に言葉の暴力で精神的に追い詰められるわ、獣の生肉口に突っ込まれるわ、火炙りにされて顔面溶けるわ、生きたまま生皮剥がれるわ(全部夢オチですが)。

この究極のエログロナンセンスに芸術性を感じる人って、やっぱり『ドグラ・マグラ』とか『ねじまき鳥クロニクル』とかを最高とか言ってるような変態気質の中年層に限るんじゃないかと思います。

操作は虫眼鏡みたいな十字架の矢印アイコンを使う推理アドベンチャー型で、FCの『さんまの名探偵』や『山村美紗 龍の寺殺人事件』などとシステムを改良した快適な操作性で、操作するキャラも勿論ムービーも人物は実写。BGMもSEも全て生音ですし、ストーリーも短い一本道ながら矛盾点もなく流れも最後まで面白い。ここまで良く出来たゲームでも、フワッと終始感じるエロさとホラー演出をグロさだけで表現しようとして、しかもそのニュアンスを達成してしまった故に21世紀には消されてしまった『名作』でもあると思いました。

英語版で初見一周目なので、詳細まで詳しくは理解できていないです。

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