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ダイアボリカル-異端聖杯詮索譚-  作者: 我楽娯兵
序幕
1/8

とある魔法使いの物語

 ──自由は幸福であり、無知は罪罰である、高潔は義務であり、死とは祝福である。

 私たちに課せられた宿命であり、これは神の子たる人々が背負いし責務である。

 清く正しく、清廉で正しき道を征き邪悪を払う事が私たちの使命であった。

 しかし、世界は邪悪に満ちている。

 人が人を憎み、人が人を虐げ、人が人を殺す。正しく醜悪な悪逆であり許してはならない事だ。

 他者に救いの手を差し伸べるべし、他者を赦し受け入れるべし、他を虐げるべからず。何物にも優しくあれかしと私は教わった。

 だがしかしこの世には虐げるしか解決する方法しかない事もある。

 誰かを犠牲にし、誰かを蹴落とし、誰かを生贄にして人は生き残れない生き物だった。

 残酷な宿命を背負った生き物に幸福を求める心は呪いのように心裡に巣食い、重荷のように圧し掛かってくる。この幸福を求める良心と、悪徳を極める悪心のそれは双方に矛盾を孕んでそれらが共存する。

 獣には無い心理であり、人が人足らしめている真理だった。

 奇跡を求め、神の痕跡を探り各地を巡る。神がいる事は判っている、だがその所在は未だに判っていない。

 だがから私たちは問いに行くのだ。神の軌跡を、『聖痕』を求めて。

 清く正しく、人の模範たれ。私たち聖痕探索福音騎士団の教訓でありそれを実行していた。

 そんな中で私はある男と出会った。

 その男は邪悪を宿した怪物であり、奇跡の破壊者だった。

 このダイダロス大陸で散見される神の痕跡である『聖痕』を悉く抹消するのがこの男の使命であり、宿命だった。

 私とは違う生き方だった。

 奇跡を求める生き方。奇跡を否定する為の生き方。真逆の生き方だった。

 だが、彼の願いは至極単純で、そして純粋な欲望だった。人が人を慈しむ心のそれであり、奇跡を壊す事こそ死せる者たちへの餞だった。

 奇跡を破壊する行いは許されるべきではない。神へ問う機会の一切を奪う行為は、人々の宿願を奪う行為だったからだ。

 何故我々を産んだのか、何故我々を創造したのか。好奇心と安寧を求めての願いだが、彼は神を否定し続けた。

 この世の奇跡の痕跡であるモノを破壊し、彼は其の生涯を終え今はイカルス平原で眠りについた。

 私の名前はカミラ・ランドール。ここに記すのはとある魔法使いの聖杯詮索の記録である。

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