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異世界に飛ばされたBA(男)の受難  作者: 豆もち。
BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる
9/17

メイドのプチ騒動


 


 目の前に聳える、どこか禍々しさも感じる塔に、俺と日向子ちゃんはビビった。



「蓮さん、やっぱり荷物届けてもらいましょうよ」

「うん、イイね。そうしよう」

「何を言ってるんだ。魔術塔まで来たのに何故用事を済まさない。

お前の為にヒナコまで付き添っているんだぞ」



 いやー、ベルヘルム殿下の仰る通りで。

でもね、行きたいって言ったの日向子ちゃんだし。止めなかったの、アンタらだし。



「いや、何か想像の何倍も入り辛いって言うか。

ここ、本当に人住んでます? 」

「アハハッ、面白い事言うね、レンは。

住んでるに決まってるだろう。その為の建物なんだから。

もちろん自宅から通う魔術師も居るけど、研究とか実験で寝泊まりしてる団員がほとんどだよ」



 なるほど。研究室に缶詰めになる理系の社畜みたいなもんか。

…あ、一気に恐くなくなった。



「そうですか。ところで、入口が見当たらないんですが」

「ああ、大丈夫。ほら、開いた」

「「えっ!?!!?! 」」



 煉瓦造りの壁から、突然空間がっ!

 奥が続いて見えるって事は、これが入口? 嘘だろ?!



「ナニコレ、急に入り口がっ。

やっぱり帰りましょう蓮さん! 」

「でも入口開けてくれたのに、ここで帰ったら…それはそれで恐くない?(今後が) 」

「それは、たしかに」

「何してるの、レン。早く入らないと閉じちゃうよ」



 まさかの時間制限アリ。


 塔の中は、外観よりもずっと広い様だ。

誘導されるままに進むと、応接室らしき部屋があった。



「おお、早かったな。

それに殿下や聖女様まで。ようこそ、魔術塔へ」



 待っていたのは、爺さんと目の下に濃いクマをこさえる20~30代の青年達。

どうしよう、挨拶もまだしていないのに同情を禁じ得ない。うう゛。



「荷物取りに来たんですけど、忙しそうですね。なんか」

「ん? そうか? はて、だいたいこんなもんだから分からんな。

おーい、あのカバンを持ってきてくれ。

あ、聖女様。お座りになって下さい。ベルヘルム殿下とベイリー殿下も」



 爺さん、俺は?

 


「団長、こちらを」

「うむ。ほれトキトゥ、これで間違いないか?

聖女様のお持ち物はすでにお返ししてある。残りはそれが全てだ」

「ありがとうございます」



 鞄を開けて見ると、パッと見た感じ全て揃っている様だ。良かった。

仕事道具のメイクBOXも目立った傷はないな。ブラシも折れてない。



「大丈夫そうです」

「そうか、良かった。せっかくだから見学して行くか? 」

「あ~、いえ。またにします(だって凄い目で見てきてますよ、お宅の部下達。仕事増やすなって顔に書いてあるから、マジで)」



 どこへ行っても歓迎されるはずの聖女様も目に入らないらしく、完全に苛立ちを募らせる団員達を前に、俺も日奈子ちゃんも、そそくさと塔を後にした。



「ベイリー殿下、魔術師ってみんな()()なんですか」

「断じて違う」

「え、でも…」

「レン。さっきのは忘れなさい。きっと疲れてるんだよ、そっとしてあげて」

「…はい」




 日奈子ちゃんとベルヘルム殿下に夕食も誘われたが、道具のチェックを直ぐにでも始めたくて断った。

 気を悪くしたかと心配したけど、どうやら殿下はお望みだったらしい。

満面の笑みで送り出してくれた。

部屋までの案内役にベイリー殿下をつけて。



「なんか、すいません。道案内なんかさせてしまって」

「構わないよ。正直、兄上とは上手くいってないんだ。だから…ちょうど良かった、かな」



 ふーん。やっぱり後継者争いとかあるんだろうな。

まっ、俺には関係ないから、巻き込まないでくれさえすれば何でも良い。


 そのまま本当に送るだけ送って、帰って行った殿下は、イケメンだと思う。

男だけどキュンとしたわ。



「おかえりなさいませ、トキトゥ様」

「ただいま。さっきはごめんね、オスカー君」

「いいえ、とんでもございません。

先に着替えられますか? 」

「そうだね」



 俺が早く脱ぎたがると予想していたのか、着替えが揃えられていた。

ありがとう、オスカー君。

ついでに髪も何とかなりませんかね?

本当にコレ何の油なの。



 着替え終わるタイミングに合わせて、メイドさんがお茶を持って来てくれた。

何で分かるんだろうか。もしやドアの前に張り付いてるのか?



「お茶は私が予め指示しておきました。

さ、どうぞ」

「俺、声に出してた? 」

「いいえ。ですがお顔が雄弁でしたので」



 お恥ずかしや。情けない年上ですまんね、オスカー君。


 あれ、そういえば、また違うメイドさんだったな。

昨日は固定だったのに…初回サービス的なヤツじゃねぇよな。



「オスカー君、ミレーさんは仕事? 」

「ミレーとは、昨日トキトゥ様の世話をした者でしょうか」

「そうそう」

「彼女には暇が出されました」

「ひ、ま…? 」



 暇って、あの暇か?

クビって意味の暇の事、だよな。

何で急にーーーー。



「左様でございます。

()()()は、任された客人の様子の変化に気付く事はおろか、危険に晒したのですから当然です」

「まさか」

「トキトゥ様が下々の者を気になさる必要はありません。

次期に専属のメイドも決まるでしょう。

数日は今日の様に複数のメイドが出入りしますが、ご理解下さい」



 俺が、俺が神様と会ってる間に…

俺のせいでミレーさんが!?

それに給仕や着替えの人達まで、そんなっ。

 あれは仕方ないだろ!

ミレーさんでなくても、必ずああなった。

むしろ直ぐに気付いてくれたってのにっ!



「もし、今朝の俺の事が原因なら、今直ぐ連れ戻して欲しい」

「はい? 」

「何の落ち度もなかったし、仕事も一切手を抜いてなかった!

だから、クビを撤回してもらいたい。

どうすれば良い? 」

「トキトゥ様がそこまで気にされる必要はないかと存じますが、そうですね。

使用人の人事は執事長の担当ですから、執事長に聞くのが1番です」

「今日中に会えるかな」

「トキトゥ様は、ベイリー殿下のお客様ですから下手に出る必要はございません。

ただ、普通であれば執事長が人事権を持ちますが、今回は恐らく違います」



 何でもいいから、誰に直談判すればいいんだ。



「もっと上の方がされた、采配かと思われます。執事長にお会いになっても、撤回される事はないでしょう」



 上? だから誰なんだよ。

 俺のせいで、推定6人はクビになったんだぞ!?

そんなの、重過ぎる。荷が重い。胃が痛い。胃潰瘍になる。



「じゃあ誰に頼めばいいんだ」

「…そうですね。代わりに来たメイドは上級メイドばかりですし、貴賓対応を任されるメイドも数名居りました。

となれば、指示を出されたのはベイリー殿下でしょう (まあ宰相閣下という可能性もありますが) 」

「つまり? 」

「殿下にお願いする事になりますね。

因みにトキトゥ様は、ベイリー殿下に保護されている立場にありますから、本来お願い事を出来る立場にありません」

「……あ~、殿下にアポってとれる? 」

「アポ? お伺いでしたら、可能です。

しかし、今貴方がされようとしている事は、殿下の好意を否定し、突き返す様なものです。私としては、仕えたばかりの主人がいきなり消える事だけは避けたいのですが。

お気持ちは変わりませんか? 」



 オスカー君、心配そうな顔でサラッと毒吐くのね、キミ。

王子が良かれとしてくれた事を断るのはヤバイよな、そりゃ。



「ごめん、殿下に話を通して欲しい」

「はぁ。ずいぶん優しいご主人に当たった様です。

ーーーかしこまりました」



 



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