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「はっ、マジ? 」
これが異世界クオリティーか。HPとかそんな感じだよな、ポ◯ケモンみたいな。
どれどれ。
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トキトウ レン(24) ♂
種族;人間/地球人
体力;2900/3000
マナ;4500/4500
属性;不明
スキル;【異世界のコスメBOX】Lv.1
→トキトウ レンが所有するメイクボックス。地球のコスメやメイクツールが入っている。
尚、一度手にしたコスメ、ツールは全て自動で補填される。
【ヘア&メイクの申し子】Lv.3
→ヘア&メイクを施す事が出来る。
【成分鑑定/生成】Lv.1
→成分の鑑定が出来る ※但し制限有り
トキトウ レンが有する知識を用いて、希望した効能、効果の成分を生成出来る。
加護;無
備考;ハルシファー王国の聖女召喚の儀式に巻き込まれ、サクラダ ヒナコと共に地球から来た異世界人。
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字面だけ見たら、神スキル! ここが異世界でなければなっ。
しかし、髪もか。ヘアアレンジは専門外のはずだが、出来るのか?
だったら嬉しい。仕事の幅も広がるし。まあ、同じ仕事が出来たらの話だが。
【異世界のコスメBOX】って、俺の仕事道具の事かな。
そういや、俺の荷物どこいった。目が覚めた時は、持ってなかったし、やっぱ消えちまってるーーよな。
体力とマナってのは、基準が分からないから保留だ。
種族のところは、まだ分かるとして。
この性別表記はどうにかならないのか? ♂って言われると違和感が強い。
間違ってはないんだが、男じゃダメなのか。加護もねーし。
普通、異世界モノは加護なりチートなりがあるもんじゃねぇの?
これじゃ、自立は当分先になりそうだ。
24歳独身、健康体、男。あだ名は国のヒモ、とかになったらどうしよう。
小心者な日本人魂が、NOと言っている。
「ハァ、仕事探そ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
王城の一角、ハルシファー国王の執務室では錚々たるメンバーが机を囲って居た。
「此度は、皆ご苦労だった。
ではウイリアムから報告を始めてくれ」
一際威厳を放つ男アルフォンス・ハルシファーは、魔術師団団長ウイリアム・ドバースに視線をやった。
「ハッ。本日予定しておりました召喚の儀は成功し、無事 聖女ヒナコ樣をお迎えする事が出来ました。
尚、儀式を実行した上級魔術師8名、中級魔術師21名は全員マナが欠乏し、3ヶ月程度の休養が必要かと思われます。斯く言う私奴も、1ヶ月は初級以上の魔術は行使出来ないでしょう。
また、中級魔術師の中には、恐らく今後魔術を一切使えない者も数名居る様です」
「…そうか、大義であった。
して、聖女殿以外にも男が1人召喚されたと聞いたが、その者は何者だ。
もしや、勇者や聖女に関する何かか」
「分かりませぬ。すぐに歴史学に精通する者に調べさせましたが、この様な事案は初めてで、王都に保管されている文献には、記載が有りません。
さらに、儀式中に術の乱れやイレギュラーも発生しなかった事から、儀式自体に問題は無く、聖女様もしくは本人に何らかの力が加わったと推測されます」
「分かった。引き続き調査せよ。
ーーウイリアムはどう思う。その者は我が国の脅威になり得るか? 」
アルフォンスの鋭い眼光を向けられたウイリアムは、わずかに眉を顰め視線を下に下げた。
今まで団員や自身の陥った事柄にも、スラスラと淀みなく答えていた老人の憚る姿に、宰相をはじめ、その場に居る面々は動揺した。
「答えられぬのか?
第二王子の報告では、肝は据わっているが別段害はない、とあったが。
ベイリー、そうであったな」
「はい。声色や態度から、その様な素振りは見受けられませんでした。マナの流れも安定していましたし、理性的な人間に見えました。感情的にマナを暴走させる恐れも低いでしょう」
「そうだ、その様にお前から聞いた。
それは自分の判断か? それとも精霊獣の判断か」
その指摘に、突如ベイリーの頭上が淡く光り、小さな鳥が姿を現した。
「勿論、どちらもです」
「ふむ、精霊獣が言うのであれば間違いはないだろうが………ウイリアムよ、何が引っかかっているのだ」
再び彼等の視線が老人へ集中する。
「成功したか確認する為に用意した鑑定士に、聖女様だけでなく、彼も鑑定させました」
「ほう、で」
「体力やマナの数値は平均より少し優れているぐらいでした。
が、属性が不明で、何より加護が文字化けしていたのです」
ーーザワッ
「何だとっ!? それは真か!
鑑定者は誰だ!」
「アルテス教会の総本山、アルテス神殿の神官長テルス樣です。
尤も、神官長のご好意だった為、非公式で記録にも残しておりませんが」
「そういう事か。道理で事前の書類に鑑定士の名が無かったわけだ。
てっきり、聖女を疑うなど不敬と教会に文句を言わせない為だと思っていたが、まさかその教会の権力者とはな」
「左様でございます。申し訳ありません」
「いや、構わん。非公式であれば、教会に借りを作った事にはならん。
おまけに聖女が本物だという確証も得られ、もう1人の人間についても興味深い情報が得られた。結果オーライとでも言うべきか」
「ハッ、ありがとう存じます」
ーーバンッ ガタッ
すると、黙って聞いていた小太りな男、財務大臣マニー・ガンスが勢いよく机を叩いて立ち上がり、意を唱えた。
「陛下っ! それを鵜呑みにしても良いのでしょうか。
アルテス神殿は王国の力が及ばぬ、独立国家です!
件の男の鑑定結果は虚偽かも知れませぬ。属性が不明など、聞いた事もありません。
さらに加護とは、神聖な力。それを神に仕える神官長ともあろう者が鑑定を拒まれるなんて!
そもそも、男は本当に召喚されたのですか?
神官長が細工した可能性も考えられます!」
「私は、マニー卿が言う事にも一理あると思います。ですが陛下、どの様な経緯で来たのであれ、彼の印象については、ベイリー殿下に同意します。
それにアルテス神を信仰するテルス殿が、己の能力を卑下する嘘をつくとは考え難いでしょう」
ジークは、マニーの呈した説に理解を示しながらも、数時間前に出会ったばかりの鴇藤を擁護した。
宰相としての彼の働きぶりを古くから知る一部の者達は、少し驚きながらも同意する様に各々小さく頷いている。
「宰相が言う様に大臣の考えも尤もだ。
だが今回は、これも宰相が言う様に可能性は限りなく低いだろう。ベイリーの精霊獣の事もある。
しばらくは客人として様子を見る事としよう。異議がある者は挙手しろ」
ーーシン…
「決まりだな。その者については、第二王子の預かりとする。
よって先に言った通り、ウイリアムは不問とする。
次、聖女殿の様子を報告せよ」
報告を始めたのは、ベイリーによく似た、少し堅物そうな青年。
王位継承権第1位、第一王子ベルヘルム・ハルシファー、その人だ。
「彼女は酷く取り乱している様で、状況を把握するのに時間がかかりそうです。
今は錯乱状態にあった為、侍医長の催眠魔法で眠りについています。
本人から、自身の情報を聞き出せていないので、すぐに行動に移って頂くのは厳しいでしょう」
「ふむ、困ったな。すぐにでも慣れてもらいたかったが仕方あるまい。
明日も同じ状態なら、同郷の男を接触させて説得しろ。
後で、ベイリーと打ち合わせする様に。問題ないな、ベルヘルム」
「……承知しました。必ずや説得してご覧に見せます」
「うむ、任せたぞ」
「ハッ! (クソッ) 」
「 (避けられない事とは言え、これは荒れそうだ。
完璧主義で貴族の重鎮にも顔が効く第一王子ベルヘルム様と、気は弱いが庶民に人気の高い第二王子ベイリー様。
ベルヘルム殿下にもう少し柔軟性と気遣う心があれば、非の打ち所がないんだが………、こればっかりはどうにもならんな。全てが完璧な王など存在しない。当たり前の事だ。
無いものねだりは良くない。
しかし何故だろう。少し話しただけだが、トキトゥが何か変化をもたらしてくれる様な気がする。
ーーーどちらの王子にとっても、良い影響を与えてくれたら喜ばしいのだけどな。
やはりウイリアム殿が言った、加護が1番気がかりだ。私の方でも、歴史学者や教会に当たって見るか) 」
今後についての流れや予算、警護、著しく戦力不足に陥った魔術師団員の補充、引継ぎの議題がどんどん進む中、意見をまとめながらも、ジークの心は2人の王子の未来を案じていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ーーーよ、異なる時空を越えた者よ。聞こえるか」