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異世界に飛ばされたBA(男)の受難  作者: 豆もち。
BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる
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 それから俺と彼女は放心状態が続いている。



「ふむ。どうしたものか。

まずは、聖女様をお部屋へお連れしろ。

私は、宰相に指示を仰ごう」



 爺さんが指示を出すと、あれよあれよという間に女子高生は丁重に連れて行かれた。

 とりあえず危害を加える気はないのだろう。



「…待て、俺は?

え、ねぇ俺はどうしたらいいの。誰か。

え、置いてかれたんですけど」



 明らかに主要人物は去り、残されたのは俺と後片付けを始めるローブを羽織った数名。

だが、彼らに声をかけても目を逸らされるばかり。

え゛〜、困るんですけど。終始扱い酷くない? 置いてかないで爺さんっ。








「待たせたな、異界の者よ」



 小1時間程して、爺さんがメイドを引き連れて戻って来た。

めっちゃ待たされたんだが。なんの一言もなく。



「う、うむ。そんな目で見るな。待たせて悪かったと思っている。

その。何分想定外でな、対応の協議に手間取ってしまったのだ」

「そうですか。だから何のフォローもなく、こんな場所に()()()()()んですね」

「すまぬ」



 食い気味に謝ったな。偉そうだけど、良心はある様だ。



「で、説明してもらえるんですよね」

「もちろんだ。だがその前に、部屋と軽い食事を用意した。

この者達から世話をしてもらってくれ。食事が終わる頃に部屋へ行こう」

「それは有難いですけど、先に説明じゃだめなんですか(そりゃ腹も減ったし、喉もカラッカラだ。正直休みたい。けど最重要なのは事態の把握だ) 」

「疲れただろう、少し休まれよ」



 ずいぶんキョドってんな。まさかまだ協議中なのか?



「俺の対応、決まってないんですか」

「ギクゥッ! そ、そんな事はない。ほれ部屋へ案内しろ、彼は疲れている様だ。うむ! 」



 わっかりやす。まず心の声って言うか、オノマトペを口に出すんだ。初めて見た。



 まあ気が抜けたというか、仕方なく言われた通りにする事にした。



「では、ご案内致します」

「あ、はい」



 30代くらいの綺麗なメイドさんに案内され、豪華な客室に案内された。

道中キョロキョロと見渡したが、ひょっとして城か何かなんだろうか。

豪華絢爛っつうか、大学の卒業記念に行ったヴェルサイユ宮殿みたいだ。

マジでこんな所に暮らしてる金持ちがいるんだな。

やっぱ、夢でも見てんのか? ワイバーンだっけ、完全にファンタジーの世界だろ。

おかしいなー。そういう小説も漫画も、あんま読んだ事ねえんだけど……。



「すぐに食事をお持ち致します」



 今度は同い年くらいのメイドがペコリと頭を下げて、食事を取りに部屋を出て行った。

残ったのは、最初の綺麗なメイドさんと俺より年下に見えるメイド3名。

非常に気まずいです。はい。



「お客様、お着替えを用意しておりますのでお召し物を」

「あ、はい」

「「………」」



 何故だ。何故彼女達は出て行かないんだ。むしろ近付いて来てないか。



「お客様? 」

「あの、着替えるので離れて欲しいと言うか、出て欲しいと言うか」



 美人なメイドさんに、じっと見つめられる日が来るなんて!

前持って教えてくれてたら、楽しめたのにっ。

急にされても緊張で、どうしたら良いか分からん!



「? 私共でお手伝い致します。

初めて見るデザインですが、どちらの国のお洋服なのですか? 」

「や、1人で着替えられるんで」



 そのベルトにかけた手をやめてくれ!

マズイマズイマズイっ!!

羞恥で死ぬ、恥ずか死ぬ!

 今まで同い年ばかりで、年上のお姉さんには耐性ないから!

いや何言ってんだ、俺! 落ち着け、俺!



「いえ、仕事ですので」

「あっ、ちょっまっーーーーそれはっ! 」




「まあ! よくお似合いですわ。

艶のある、とても綺麗な黒髪をお持ちですから、深い紺色が合いますね。

ーーあら? 瞳も綺麗な黒色ですね、初めて見ました」


「うう゛、お婿にいけない……

ーーーーーーえ、黒目って珍しいんですか? 」



 プロの技でマッハで着替えさせられた。

ボクサーパンツを知らないのか、パンツまで脱がされそうになった時は、マジで焦った。

思わず「それ下着ですっ! 」って叫んじまった。恥ずかしい。

メイドさんも一瞬、手を止めて「あら/// 」なんて照れられてしまったし。

恥ずかしいのはコッチだから!

あ゛あ゛っ、今日1番の精神的ダメージを負ったわ。絶対。



「ええ、左様でございますよ。遠い異国の地に黒い瞳の種族がいると聞いた事がございますが、もしやお客様は彼の国のご出身でございますか? 」

「ん〜、彼の国がどの国なのか分からないので何とも。

生まれは日本です」

「にほん? 初めて聞く名ですね。勉強不足で大変申し訳ありません」

「え、あ、いや。全然。

アメリカとか、中国とかは知ってますか」

「…申し訳ありません」

「っそうですか」



 大国を知らない? バカな。言語の問題か? 呼び方が違うとか。

それともやっぱり、ここは地球じゃないのか?

 異世界…転移。いつから俺は厨二病みたいな夢を見る様になったんだ。実はこんな願望があったのか?



「ですが、本当に綺麗でございますね。

それにお肌も艶々です。何か特別なお手入れを? 」

「ひぇっ、なっ何も。普通の化粧水とクリームだけです(手がっ、手が頬に!) 」

「化粧水?

それは何でしょう」



 きょとん、とした顔で首を傾げた。かわいっーーじゃなくて、化粧水持ってないのか?

そんなに、肌綺麗なのに?



「もしかして、名前が違うんですかね。

ローション、トナーって言えば通じますか? 」

「??? 」



 本当に知らないのか?!



「セラムやパックは? 」

「セラム? は分りませんが、パックでしたら蜂蜜や特別な泥を使ったものがございます」



 古典的なものは在るのか。こんなに(もと)が良いのに勿体ない。

もしくは、余計な薬品が入ってないからこそのナチュラルビューティー、か。



「普段のお手入れは何を使ってるんです? 」

「そうですね。植物オイルが基本でしょうか。乾燥する時は軟膏なんかを塗る事もありますが、それは高価なので滅多に」



 一時代前っつうか、化粧品が発展していないのかな。

 見た感じ顔面偏差値も質感も良い人が多いから、発展させる必要がなかったのかもしれない。地味に虚しい。



「なるほど。まあお姉さん綺麗ですもんね。余計な事は必要ないですよね」

「そんなっ、綺麗だなんて。恐縮です。

それから、申し遅れましたが私はミレーと申します。えっと」



 頬を赤く染めた、綺麗なメイドさん(もとい)ミレーさん。

ちょー可愛いっす。クラシックなメイド服がまたズルい。



「すみません。俺は鴇藤 蓮って言います」

「トキトゥ レン様ですね。レン様が家名でございますか」



 鴇とぅって。発音しづらいんだな、やっぱ。



「蓮が名前です。鴇藤は言いにくいと思うので、蓮で大丈夫です」

「失礼致しました。ご配慮頂きありがとうございます、レン様」

「いえいえ、とんでもないです。そもそも、そんな身分じゃありませんから」

「何を仰います! 王国魔術団のお客様で、貴族のお方でいらっしゃいますよね? 」



 何のこっちゃ。ミレーさんは、俺の事をどう説明されたんだ……。




ーーコンコン



「食事が来た様ですね。こちらへお座り下さいませ」

「あ、はい」



 戻って来たメイド達が運んでくれたのは、ホテルのランチコースのような食事。


ーーぐぅっ



「っすみません(恥ずい)」

「ふふっ、さ、お召し上がり下さい。

お嫌いなものがあったら仰って下さいね」

「ありがとうございます」

「お飲み物は、ワイン、果実水、お水とございますが」

「水でお願いします」

「かしこまりました」



 うま。見た目だけじゃなくて、味もホテル仕様。




ーーコンコン



「失礼するぞ」



 あ、爺さん。……と、キラキライケメンに渋め紳士顔。

 彼らが入って来た瞬間、ミレーをはじめ、一斉にメイド達が頭を深く下げた。

一方、俺はオマール海老に似た食べ物を口いっぱいに含んでいる途中だ。



「おや、まだ食事中だったか」

「ふみません(水水水)」

「慌てなく良い。こちらが勝手に来たんだ、楽にしてくれ」



 顔だけじゃなくて、性格も紳士。しかも声まで良し。かっけー。



「ん゛、すみません。ありがとうございます」

「食事も続けてかまわん。君達は下がりなさい」



 紳士が告げると、メイド達がサッと部屋を出た。

ミレーさんだけ、こっそり会釈してくれた。1人にしないで、ミレーさん。俺の下着姿を見た仲じゃないか。


 そして入れ替わりで屈強な男3名が入って来た。腰に剣さしてるじゃん、コワ!

チェンジで! メイドさんとチェンジで!



「こほん、では話を始めよう。前に座るよ。あ、食べなさい」

「はい(食べづれぇ) 」


「まず、私はこの国の宰相を務めるジーク・ハズバンドだ。

そしてこちらが、第二王子であらせられるベイリー・ハルシファー様だ。

君も会っている彼は、王国魔術師団の団長ウイリアム・ドバース」



 王子!? 宰相?! いつの時代だよ。っていうか魔術師。ずっと聞こえなかったフリしてきたけど、やっぱり魔術とかあるのか。祈祷みたいなやつか、もう魔法的なガッツリファンタジーか。どっちなんだ。


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