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異世界に飛ばされたBA(男)の受難  作者: 豆もち。
BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる
14/17

魔術師団団長の孫と嫁




 魔法学のさわりだけ習ったけど、俺のスキルに当てはめられるかさっぱり分からん。

 今もこうしているうちに爺さん…じゃなかった、団長()が来てしまう。

 

 なんか、あの変態気質な先生に相談するのは気が引けて、結局何も用意出来てねえ。




「トキトゥ様、ドバース卿がお越しです」

「どーぞー」



 来ちゃった。さては爺さ、げふん、団長様は10分前行動派だな?



「しばらくぶりだな、トキトゥ。

息災だったか? 」

「まあ一応」

「そうか。

今日会いに来たのはな、進捗を聞きたかったんじゃ」



 でしょうねー。



「いや、ほんとすみません。全く進んでません」

「ほ? 」

「 (馬鹿正直過ぎます、トキトゥ様) 」



 しまった。ストレートに言ってしまった。

 オスカー君にあれ程、言われてたのに。

やべえ、オスカー君の方見れねぇ。

かと言って真正面の団長様は、固まっちまった。







「ふむふむ、まあそうか。

ジーク坊から教育を開始したと聞いているからな。()()()()()()()と思っておった」



 教育に間違いはないけど、言い方がなんか違う気が…。

 あとお見通しなんですね。釘を刺しに来たのかな?



「すみません」

「よいよい。トキトゥは歳のわりに正直だな。もうちと、誤魔化す事も覚えた方が良いぞ」

「ドバース卿の仰る通りです」

「 (オスカー君まで?! ) ええー」

「ーーしかし、トキトゥ。

そんか態度であったか?

何やら今日は距離を感じるんじゃが」



 貴方様が偉い人に加えて、チーターだと判明しましたからね!

 俺は保身でいっぱいなんだ。



「認識を改めただけです」

「ふむ、別に前のままで構わんよ。

8人目の孫が出来たぐらいにしか思っとらん」



 いやそれだいぶ大事。

 親しい若者(たにん)(みうち)って、全然定義ちがうからな。

 オカンに引き続き、祖父まで手に入れちゃったよ、俺。

ある意味、心強いな。



「…じゃ、遠慮なく。

怒らないで聞いて欲しいんだが、ウイリアム爺さんって呼ぶのは、さすがに無礼? 」

「ホウ! よいよい!

それでいこう、決まりじゃ! 」



 やったー、本人公認の爺さん呼びGETだぜ。

 てか7人も孫が居て、まだ欲しいのか。



「ありがとう。

明日、休みなんだけどお嫁さんに会えたりする? 」



 ダラケても怒られなさそうだから、親戚の爺さんだと思って接しよう。

その方がゆとりを持てる気がするっつうか、第2の家族みたいな存在が出来て、ホッとしている自分が居た。

 気付かぬ間に、ホームシックだったのかも知れない。

ーーなるか。普通なるよな、うん。異世界だぞ、恥ずかしくない、当たり前だ。

よし、そう思おう。



「会えるぞ。孫は知らんが、嫁は家に居るからな」

「本人が大丈夫だったら、行って良いっすか。近い? 」

「馬車で30分くらいだったかの。

朝一で良いか? 」



 爺さん、いきなり連れてけって言った俺も酷いけど、朝一はヤバくないか。

 お嫁さんも嫌なんじゃ…。



「いや、あくまで本人の許可取ってからだから、ちょっと」

「ん? 問題ない。トキトゥの話をしたらな、いつでも来てくれと言っておった。

何も気にせんで良い」

「あ、意外とノリ気なのね、お嫁さん。

ならいっか、朝一で」

「決まりじゃな!

ワシから宰相と殿下には話を通しておく。

そうじゃ、朝食も向こうで食べれば良いな」

「えっ(いったい何時からのつもりなんだ) 」

「起きたら出かける準備をしておけ。

お腹は空かせておくんじゃぞ。今晩は控えめにしておくのが良かろう」



 いつでも来て良いと、朝ごはん食べさせろは(イコール)じゃないぞ、爺さん。

 俺、初対面から嫌われるのは嫌だよ。



「そこの執事、そのつもりで動いてくれ」

「かしこまりました」



 オスカー君?! 良いの? 嫌がらせ以外の何ものでもないよ?



「どうした、黙り込んで。

なんなら泊まっても良いぞ」

「なあ。お嫁さんとの仲は良好か? 」

「さあな。用がある時しか顔を合わさんし、喋る事もないからのぉ」



 不安だ。俺だったら迷惑でしかない。



「こうはしておれんな。孫に連絡して来よう。

トキトゥ、約束じゃぞ。寝坊せん様になっ」

「あー、はい」

「何だその気の抜けた返事は。シャキッとしろ、若者よ」



 爺さんは、勝手に決めて嵐の様に去って行った。



「オスカー、俺嫌われないかな」

「…ドバース卿には可愛がられていらっしゃるかと」

「いや、お孫さん夫妻に」

「……私には分かりかねます」



 君は道連れにしてあげよう。



「そっか。君も一緒に行くからね」

「はい? 」

「だって俺の執事じゃん」

「かし、こまりました」



 顔に巻き込むなって書いてんぞ、おい。

もっと違う場面で、年相応な反応をしてもらいたいね。









「おはようございます、トキトゥ様」

「おはよう、ミレーさん」



 そう言えば、レン様呼びからトキトゥに戻ってんだよなー。

ハッ! まさかさり気なく距離を置きにきているのか?

 むしろその意思表示!?

 ツライ。好感持たれていると思ってただけにダメージがデカい。



「あの、どうかなさいましたか? 」

「何でもないです」

「そうですか?

あっ見て下さい、この顔。昨日トキトゥ様がして下さったおかげで、いつもより肌ツヤが良いんです! 」

「ああ、まぁあんだけリンパ詰まってたらね。そりゃ変わると思いますよ」

「りんぱ? りんぱとは何ですか?

それが何の関係があるんです?

私でも出来るでしょうか! 」



 朝から元気だなー。

 おぉ? ミレーさんや、体勢体勢。

めっちゃベッドに乗り上げてるよ。

もうアプローチかと勘違いしそうなくらいに。わざとなら虚しくなるから、止めてくれ。



「あー、出来ると思います」

「本当ですかっ!? 」

「うん。でもとりあえず、どいてもらえません? 」

「はい? 」



 ニッコリ笑いながら、俺の太腿に置かれたミレーさんの手を指差すと、彼女は顔を真っ赤にして飛び退いた。

 んー。だんだんミレーさんのイメージが崩れていくな。

 おっちょこちょいな方が素なのかも知れない。



「もももっ申し訳ありませんっ」

「大丈夫。気にしないで下さい (わざとでないなら) 」

「はい…」



 やっぱり被験者には別の人に頼んだ方が良いか?

 これ以上ミレーさんからの好感度が下がるのも嫌だし。



「それではお支度の準備をしますね」

「お願いします」




 こうして必要最低限の会話のみの気まずい雰囲気は、爺さんが迎えに来るまで続いた。

 途中、オスカー君が部屋に入ろうとして、何か察したかの様にドア閉めた事はあったが。恐らく勘違いしてるな。

 後で訂正しよう。

何より王子に報告されない様にしないとね。






 初めての馬車は、漫画で見た様な立派な物だった。

 不思議と揺れもなく、クッションのおかげか尻も快適で感動した。

さらに、初めての城外で俺のテンションはかなり上がっていた様だ。

 アレコレ目に入ったモノを片っ端から聞いたせいで、爺さんにもオスカー君にも生温かい目で見られている。

ーー現在進行形で。



「フォッフォッフォ!

いや~、トキトゥ。ワシは新しい孫じゃなくて曽孫が出来た様じゃの」

「ブッ」



 くそっ、揶揄いやがって。

 つかオスカー君、笑うのは酷くないか?

吹き出してんじゃん。良くないよ。



「じゃあトキトゥさんは、僕の甥っ子かな? 」

「エリックさんまでっ!

止めて下さい、物珍しかっただけなんです」

「アハハ、ごめんごめん。

でも爺様がこんなに気に入るのは珍しいからねぇー、僕は全然構わないけど」



 朝っぱらからの訪問にも気を悪くする事なく、朗らかに出迎えてくれた孫のエリックさん。

 彼は32歳で、結婚3年目らしい。

 おっ? てことは姉さん女房か。

いいなー。



「それより、朝から押しかけてすみません。…しかもその、朝食まで」

「良いんだよ! 久しぶりに賑やかな朝食になりそうだっ。あっ、妻が下りてきた様だ」



 エリックさんの視線の先を追うと、ヴェールを被った女性が階段を下りて来た。

 手すりにかかった手には、手袋がはめられていて、全身を布で覆う様に隠されている。

 とてつもなく失礼だが、正直不気味だ。



「お待たせしてすみません。お祖父様、トキトゥ様」

「朝からすまんな。

さっそくで悪いが、食事を頼めるか?

ワシは君が作ったスープが好きなんじゃ」



 爺さんっ、孫のお嫁さんに対して、なんて図々しいんだ!



「ええ、すぐにご用意しますね」



 ヴェールで顔は見えないけど、意外と怒ってなさそう?

 声が見た目に反して、すごく明るめな気がする。



「あっ、奥さんすみません!

はじめまして、レン・トキトウです」

「はじめまして、夫からお話は聞いております。テレーズです。

今日は、私のためにありがとうございます」



 深々と頭を下げ、少しトーンの下がった声で、テレーズさんは挨拶してくれた。

やっぱり、いきなり他人に会うのは嫌だよな。事情が事情だし。

 メンタルもフォロー出来れば良いんだが、そっち方面はさっぱりだからなー。

爺さんには期待出来ないし、エリックさん頼みだな。

 お願いします。俺が帰るまで、家に居て下さい。





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