永遠の幼女様はペチペチとなでなでが好き。そして俺も。スキル《中二病無双》で俺は幼女様の願いを、命を掛けて全て叶える《読み切り》
ペチペチッ。
「ルーク、ねぇルークぅー」
「んっ。…………はいっ」
とある平原で、ペチペチと頬を叩かれた俺、ルーク。
寝ていた所を起こされては誰もが不機嫌になるが、俺にとって頬を叩かれる事はご褒美である。
現に起こされた今、喜びが止まらないのだ。
目の前には俺が理想とする幼女様。
その腰まである青みがかった髪、宝石を埋め込んだような澄んだ金色の瞳。
あぁ、尊い。
そして、ちょこんとさりげなく、だが立派な二つのツノはまさに魔族の象徴。
そぅ憎まれるべき存在…………なのだが、俺には関係ない!
むしろ、最高のオプション!
何しろ魔族は人間と違い、成長スピードが遅いのだ。
どうだ全世界の幼女を愛する者よ、俺は勝ち組だぁーー。
ならば俺がする事は決まっている。
俺の全て、人生を捧げてこの幼女様、ミーナ・グランテルム様の成長を見守るのだ。
おっと、熱が上がり過ぎたようだ。
「ミーナ様、なにかありましたか?」
「んーとねー。ドラゴンに乗って空を飛びたいな」
ドラゴン?
…………。
「ドラゴンって大地を揺るがし、炎を吐く、危険度Sのドラゴンですか?」
「うん。ルーク、出来ない?」
常人ならば、ここは無理だと言うだろう。
俺もステータスを見れば常人そのもの。
だが、このつぶらな瞳を、その澄んだ心を、俺の言葉で汚す訳にはいかないのだ!
「何をおっしゃいますかミーナ様。ただ、確認しただけですよ。大丈夫ですよ。じゃあドラゴンを探して空を飛んで貰いましょう」
「やったぁー」
ミーナ様は満面の笑みだ。
あぁたまらんっ。
――――。
ドラゴンが住む山は二日程で見つかった。
なぜこんなに早く見つかるのか、不思議に思うだろうがこれが普通なのだ。
ミーナ様の発言する事、その根幹となるインスピレーションは、何か周囲の魔力的な物を感じているからだと推測される。
なぜそこまでわかるかって?
ミーナ様の思考までも分析するのが俺なのだ!
山の麓の村ではそんな幼子を連れて山に入る事を馬鹿げてると言われ、自殺志願者だと思われた。
まぁ無理もない。
幼子を抱いてハイキングするにはあり得ない場所だ。
無理して山に入ったが、山道は案外楽だった。
ドラゴンの縄張りのせいか、魔物が見当たらないのだ。
村人達はビビらせたかっただけか?
――――。
頂上が見えた時、目的のドラゴンがいた。
「わぁーっ、ドラゴンだよルーク。これでお空飛べるかなぁ?」
「きっと飛べますよ。ではここで少しだけ待ってて下さいね」
そう言ってミーナ様を下ろした。
「わかった。また、われのーやる? 見たいな」
「しなくて済むのならしませんが、たぶん、やりますよ」
「わかった。待ってるからね」
「はい。くれぐれも僕が良いと言うまで近付いたらダメですからね」
心の準備はオーケーだ。イメージも出来ている。
振り返り、歩き出すと、ドラゴンは俺に気づいたようだ。
だいぶ翼も体も汚れているな。
それだけ長い年月を過ごしてきたのだろう。
だが、ミーナ様を乗せるのには汚すぎるぞ。
「人間がここに何のようだ?」
言葉を話せるのか?
ならありがたい。
「悪いが後ろにいる子と俺を乗せて空を飛んでくれないか?」
「ふざけているのか?」
「真剣に言っている」
「舐めた人間だ。殺して食ってやる」
やはり、交渉は決裂か。
仕方がないが、使うしかない。
俺のユニークスキル。
《中二病無双》を。
中二病無双とは思想を過激な発言により表現する事で、実際に発言を具現化、能力にするスキルだ。
俺は元々このスキルを使えなかった。
理由は簡単。
わかっていても恥ずかしいからだ。
そのせいで冒険者パーティーからも追放されたのだ。
だが、だが今は違う!
ミーナ様の為を思えばこんな事、容易い。
………いや、訂正しよう。
この恥ずかしさもまた、ご褒美!
右手を左目にかざす。
見ていて下さいミーナ様!
「この世の深淵を覗く我が瞳よ」
深淵なんて見たことないけど。
「我が魂に宿る邪悪なる黒炎の竜神よ」
宿ってないけど。
「我の願いに答え、その封印を今、解除せよ」
俺は手を広げ、叫ぶ!
「中二病無双」
ドラゴンの炎が来るが、俺には全くきかない。
なぜなら、今の俺は竜神なのだ。
いるかどうかはわからないが、効くわけがない。
「な…………何だそれは」
「ふっ、俺にもわからんっ」
本当に俺もわからんのだ。
グランダルフォースも今思い付いただけだし。
「さぁどうする? まだやるかい?」
「信じられんぞ。お、お前本当に、り、竜神様が宿っているのか?」
「信じられんか? なら、これを見よっ神竜の炎舞」
空に向けて放った俺の黒炎は、雲を一掃した。
「その膨大な魔力はまさに竜神様の炎。ほ、本物だ」
いや、偽物です。
まぁこれで話は通じそうだ。
「ルークおわったー?」
「はい。乗せてくれるそうです」
俺はミーナ様に見られないようにして、ドラゴンに凄んで見せた。
「なっ?」
――――。
ドラゴンは飛ぶ。
ミーナ様と俺を乗せて。
もちろんしっかりと背中を洗った後だ。
ミーナ様は自分が飛んでいるようでとても楽しそうだ。
「びゅーん」
両手を広げてそんな事を言うミーナ様を俺の心に刻む。
かわうぃー。
ミーナ様が満足した後ので、俺達は村の近くにおろしてもらった。
忘れそうだったので、帰ろうとするドラゴンに言った。
「ちょっといいか?」
「ま、まだ何かあるのかっ?」
「すまないが、お前、金目の物はあるか?」
「人が喜ぶ物など、持っておらぬはっ」
「そうか……ならその爪か歯か鱗をくれないかっ」
俺はこれでドラゴンの爪と鱗を何枚か貰った。
またはえてくるのだからいいだろう。
俺は無駄な殺しはしない。
だが、俺達も生きていかなきゃならないからな。
そうしてドラゴンは帰って行った。
「ミーナ様、満足されましたか?」
「うんっありがとう。ルーク、あたま下げて」
「はい。わかりました」
俺は、片ひざをついた。
俺の頭にミーナ様の手が触れる。
なでなで。
くぅーーーっ。
この瞬間こそ、俺の生き甲斐だ!
完
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どうやって二人は出会ったの?とか
二人の詳細や続きが気になれば連載しようかと思ってます。
ここまで読んで頂きありがとうございました。