表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルが認識阻害(モザイク)って女神様、マニアック過ぎませんか?  作者: 道 バター
1章 異世界からの帰還編
6/36

意識高い系と黒い線

翌日、布団の中で目を覚ます。


天井、窓からの景色、聞こえてくる鳥の声等から判断するに愛しの我が家らしい、たちの悪い認識詐称魔法に掛かっている訳ではなさそうだ。


寝間着のまま、洗面所に向かい、顔を洗う。洗面台に写る自身の顔は5年前の顔であった。やや伸びた髭を剃りながら、今日の予定を考える。

この行為自体は5年間で身についた癖みたいなものだ。


①学校に行く

②放課後にお気に入りの作家の新刊を買いに行く


以上


なんて素晴らしい労働環境なのだろうか。と少し自嘲する。

この行為自体が以前は嫌だったのだ。


ただ、ここに来て、昨日の出来事を思い出す。


「っ痛」


そして、剃刀を持つ手元がくるい、やや痛みが走った。


懸念材料:クラス内での唯一ギフトがないこと


この事実がどう働くのだろか…、ショウは途端に学校に行きたくない気分になってきた。

だが、行くべきなのだろ。異世界を捨てでもこの世界に戻ってきたんだから。

髭を剃り終え、再度顔を水で洗い、顔をタオルで拭う。タオルには血が付いていた。


傷口に絆創膏を貼り、朝食を済ませて、家を出て、電車に乗り、学校に着いた。


移動するにも今まではショウの隣にはナコがいた。

今は自分一人しかいない。

彼女は口数は少ないが一緒にいないとなんと心細いのだろうと今更ながら気づかされた。


教室に着き、ショウは自分の席に座る。


…誰かに見られている感覚があった。

だが、当たりを見回しても、誰もこちらを見ていない。


そう言えば、このクラスの奴らは普通の高校生に見えても、5年間死線を何度もくぐり抜けた猛者たちだ。


そう簡単に気配を気取られない奴等だろう。


視線を向けてきたのは誰なのだろうか。

こちらを気にしているそれらしいクラスメイトは見当たらない。


疑心暗鬼気味にチラチラとクラスメイトの様子を確認していたら、担任が出席を取りに教室に入ってきた。


担任はクラス委員長に号令をお願いし、皆で挨拶した。


そして開口一番「皆さん、帰還おめでとう、そして、これからは、勉学に専念だね」という言葉が耳に残った。


そして、出席確認と朝礼も終わり、高校生として止まっていた時間が動き出した。


授業はまるっきり忘れているかと言われるとそうではなかった。これも女神のギフトの効果なのだろうか、昨日まで欠かさず授業を受けていましたというレベルでは理解が出来た。


そして、更に違っていたのが、お前、今までそんな奴じゃなかったろ!?という位、積極的に授業で質問する奴が増えたことだ、少し奇妙に感じたがたぶんギフトのおかげなのだろうか。

謎のパラメーターの補正によって頭が良くなった為、自信を得たかのように授業に取り組む奴が増えた。


まあ、5年間も異世界で過ごし、将来のことを真剣に考える奴も出てきたのかなとも思われるが、ショウは正直戸惑っていた。こいつら何でこんな全員が全員、変わるわけ?一斉にある種のマインドコントロールを受けているじゃないかとさえ思えた。


前みたいに、ダラダラと高校生活を過ごせ、いや、皆で前みたいに過ごそう。ギフト無しは特にそう思うのであった。


だが、願いもむなくし、いや、ショウに「現実を見ろ!!!」と言わんばかりに、はっきりとしたギフトの有り無しの差を見せつけてきたのが体育の授業だった。


今日は皆大嫌い(偏見)長距離走だ。


もう、体育教師の手抜きとしか思えないこの授業だが、うちのクラスの奴等と来たら、開始の笛と共に熱心に走り込む、走り込む。


単純な競技だけに召喚前とは違う自分の成長が明らかに見えるのが嬉しいようだ。


ショウはと言えば、ギフトもなく、5年前の自分は持久力もそれほどない身体のため、他のクラスと合同で受ける体育の授業でショウ一人だけが他のクラスの生徒達と変わらないタイムだった。


そこに異世界ではそれなり身体を鍛え、長距離も余裕で走り、ばてもしなかったという誇りがぜえぜえと興奮した犬のような息の上がりようを体感し、もろくも崩れているようだった。


たった1日で出来ていたことが出来なくなる。このような喪失感が起きないように他のクラスメイト達には女神がギフトを割り振ったのだろうか、そして、女神がショウにだけギフトを与えなかったという事実に怒り、叫ぶ出しそうになったが、必死にこらえた。


これ以上クラス内で変人に思われて孤立するのはまずいと、酷く理性が働くそんな自分も嫌だった。


なんなんだ、なんで僕だけギフトがないんだ。女神くそ、女神くそ、女神くそ、グランドに並び、終わりの挨拶をする際、一人グラウンドの土をショウは蹴る。


ショウが去った後、グラウンドには真新しい小さな落とし穴が出来ていた。


クラスメイト達は「良い汗をかいた」と賑やかに制服に着替えながら談笑していた。対照的にショウの心には爽やかさの欠片もない何かが出来上がっていった。


そして、長い長い高校生活開始一日目が終わりを告げようとしている。


ショウはクラスの中での孤立感をだいぶ感じていた。

今日はなんとか乗り切ったが、落ち零れであることがいつばれるのか、ギフトがないことさえばれるのではないかという心持になり、気が気ではなかった。


このまま、クラスでの孤立感を持ったまま過ごすのは嫌だ。


いっそ、異世界での日々を忘れて、ギフトカードの存在も封印し、召喚前の普通の高校生になろう、最悪は担任に相談し、他のクラスへの編入を本気で希望しようかとショウは考えていた。


そんな事を考えていると担任が入ってきてホームルームが始まった。


クラス委員長が号令をし、皆で挨拶した。


そして開口一番「皆さん、スゴいですね。伊達に5年間異世界で過ごしてきた甲斐がありましたね。他の教科の先生方も、私が何かしたんじゃないかと疑う位に質問を受けました」という言葉が耳に残った。


ショウは「僕には関係なし」という気持ちで担任の言葉を聞き流していたら、ホームルームが終わっていた。


昨日はイサミが来たなと思っていたら、本当に再度訪ねてきた。


「茂在君、この後、時間ある?」


ショウには珍しく、今日は本当に予定があった。いつもであれば断れない男が今日は誘いを断る。


「勇木さん、今日は用事があるので、難しいかな…」


「じゃあ、明日は?」


「…暇です」


「じゃあ、明日の放課後にもう一度カード見させてもらうよ、さようなら茂在君」


「さようなら」


手を上げて、帰宅の挨拶をして来たイサミに思わず、手を上げて帰宅の挨拶を返した。


学校の最寄り駅まで歩きながら、約束などしなければよかったと気づく、明日は最悪学校を休んでやろうという目論見がついえた。

ショウは一度した約束は破らないという心情を持っていた。このことでよく異世界では女神にこき使われていた。

失態は取り戻せないと意識を切り替え、電車に乗り、いつもは降りない駅を目指していた。


そしても、昨日同様、裏アカウントでSNSにログインし、採れたての鬱憤を吐き出した。


『今まで、ダラダラと授業を受けていた奴らが次の日に全員意識高い系になってる…、怖い』


今日は忙しいのか『杉・レムオル』から返事はなかった。こういう日もたまにある。


そうこうしているうちに目的の駅に着いた。目指すは大型書店の新刊コーナーだ。実は召喚された当初この好きな作者の新刊をもう二度と読めないのではないかと覚悟していた。だが、今その本(清算前)は無事に手に入ったのだった。後はレジで精算あるのみであった。


そして、財布をカバンから取り出し大型書店特有のレジ前で並ぶという行為しているとレジで精算している同じ高校の制服を着た生徒が見えた。

背丈や恰好から女性生徒だと思うが妙な点があった。

彼女の背中には黒い線のようなものが見えた。


これはあれなのだろうか…


大人の象徴、黒いブ…、下着なだろうかそのことに気付き、もう少しぎょう…、観察を続けようとしたところに、自己主張が激しい携帯端末の着信音が鳴ったので慌てて、携帯端末を取り出す。ついでにマナーモードにするべく音を消した。


着信の相手は『杉・レムオル』であった。


『それは怖いな』


「なんだ邪魔をしよって!!」、そう心の中で激怒し、携帯端末から目を離し、ブラじょを探すが精算を終え、何処かに消えた様だった。

※ショウはブラックとブラジャーを掛けています…、ドウデモイイですね。


千載一遇のチャンスを逃したことについて、杉に苦情を言おうとした所、レジ係の店員さんに爽やかに呼ばれた為、先に精算を済ませた。


入手した本(精算済み)と財布を鞄に直して、幾分か冷静になった後、文面を考えながら、駅に向かい、ホームに着いてから返事を書いた。


『ああ、困っている即刻、俺のクラスで代わりに授業を受けてくれないか?千円までなら出せる』


『嫌だよ、安いだろ』


『交渉上手め、1,200円までだぞ』


『だから嫌だって、あと金額を細かく刻むタイミングとしては早すぎるだろ』


『人の足もとを見やがる。1,234円』


『綺麗に1234だな。取り敢えず、異世界設定はまだ活きているという認識か?』


『ああ、設定ではないけどな。もう少し世界は優しくあるべきだよな』


『その割には元気そうだぞ、モザモザ』


『そうか?登校1日目で心の底からクラス替えをしたいよ。来年まで保たんかもしれん』


『そうか…』


その後、しばらく杉から連絡がなかったがコメントでなく初めて杉からメッセージが来た。


『モザモザはもしかして高校生?』


『ああ、なんだよ、なんでメッセージ?』


『同じクラスかもな?』


その後、ショウは杉に返事をしなかった。というか、出来なかった。


いつも心が乱される。


心の拠り所さえも塞がれた気分だ。このアカウントも異世界の記憶と共に封印だろうか?


『杉・レムオル』はクラスのどいつだ?ショウのクラスに杉が付く、名字の奴はいない。

アカウント名からモザモザが誰かは特定されているだろう。


もっと変な名前にすれば良かった等、モザモザでも苗字が分からなければ十分変なのに見当違いなことに悩んでいるといつの間にか、家に着いていた。


昨日とは打って変わって、普通な様子の「ただいま」に母は少し安心して、昨日同様風呂を勧める。

風呂に上がり、飯を食う息子(次男)が昨日とは比べられない程、少食なのを気にしてか母が話を聞こうとするが、「別に」と言われ、会話が終了した。

だが、ショウはその後「自分ではどうしようもなくなったら、話す」と回答を変えた。


ショウは夕飯を食べ終わった後、食器を台所の流しに置き、食器を軽く水で流す。自室に戻り、今日決めた事を実行する。


①異世界の記憶の封印


②女神から貰ったギフトカードの存在の封印


③裏アカウントの封印


と言っても、異世界の記憶はすぐには消えないし、裏アカウントは消すのは簡単だが、杉が誰かなのかも気になる。


杉が同じクラスであってもショウの暗部を言い触らす問題がない人物でなければクラスで過ごし方も多少マシになるかもしれない。


ただ消す覚悟はしておくべきか、ということで。


ギフトカードの封印を進めようと思う。


だが明日、勇木イサミに見せる約束をしている。


取り敢えずは現状クレジットカード用の財布のポケットに仕舞っていたカードを滅多に開かない生徒手帳に入れた。

明日以降はベットの下とか目に行かない場所に封印することを決めた。


その後は、買った本を読み、眠気に襲われた後は素直にベットに戻り込んだ。

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。


作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ