表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルが認識阻害(モザイク)って女神様、マニアック過ぎませんか?  作者: 道 バター
1章 異世界からの帰還編
5/36

久しぶりの友人、久しぶりの家族

ショウは学校の最寄り駅まで早足で歩き、改札を通るころにはいつもの歩幅で歩いていた。

駅のホームで携帯端末を立ち上げ、SNSに裏アカウントでログインする。


この一連の流れは、ショウが召喚前からやっていたことだ。都会に住んでいる以上人混みは避けられない。自分の中にたまった負の感情は誰もしらない空間で心の赴くまま吐き出していた。召喚後にいきなりこのアカウントを使うとはショウも思ってはいなかった。


思わず5年振りに鬱憤の塊のような履歴を見ると、ガキ臭い言葉が並んでいた。


人が嫌いだ。学校が嫌いだ。親が嫌いだ。自由が欲しい。金が欲しい。もっと遊んでいたい。もっと眠っていたい。恋人が欲しい。


今思うと情けのない履歴に、微妙な気分になりつつも、新たな鬱憤を追加する為に以前よりも遅くなったフリック入力で己の心情を書き出していく。

正直、少しは5年前から成長しろよ。という今の自分の気持ちもありつつも、己の不幸な嘆き、身内が誰も見ないだろう嘆きをSNSに吐き出す。


『クリスマスパーティーで皆がプレゼントを貰う中、自分だけ貰えない位の悲しみがあった。俺はサンタさんが憎い。サンタさん、配り忘れてるぞ、マジで』


そして、しばらくして、ショウの携帯端末に通知が来た。

誰かが先ほどの嘆きにコメントを入れたようだ。


『まだ、さん付け?まだサンタからプレゼント貰える気だろ!!』


コメントの書き手は『杉・レムオル』だった。

杉とショウはリアルでは会ったことはない。


杉はショウの思春期特有の鬱憤に口は悪いが毎回ツッコミを入れ、たまに同調するようなことも書いてくる。

ショウの予想では同年代な男子生徒だ。ただ、たまに鋭いコメントをする杉にショウは彼の頭の良さと自分とは違い友達もいそうな雰囲気を感じてはいた。


『ワンチャン、期待してる』


『サンタに抗議しろよ、ここに大きな子供がいますよと!!』


『さすがに偉い人だから無理だよ。もう会えないし』


『マジのセントニコラウス大主教なの!?』


『それより、杉さん元気そうで良かったよ』


『いや、昨日振りだから、昨日の酷い書き込み振りだから。何かあったのか?親父さんの下着と自分の下着が一緒に洗われてて、親と喧嘩して家出とかしたのか?』


『いやぁ~、そんなの家出する勇気は俺にはないけど、後、下着は考えたこともなかった。でも、一緒だったから、5年位は家出した』


『5年ってえらく具体的だな』


『ここからの話は頭がバカになったと思って貰ってかまわないけど、異世界に召喚されてた。今日帰ってきた』


『ウソだろ?モザモザ。まあ妄想だろうけど…、しょうがないな。話しにのってやるよ。剣と魔法の世界とかか?、ワクワク』


ちなみにショウの裏アカウントの名前は『モザモザ』だ。


『ああ』


『まさか、女神に召喚されたとか、言わんだろうな?』


『ああ、されたクラス単位で』


『そこから、王道で行くとスキルを貰って、魔王を倒せと言われる』


『そうだな、テンプレート通りだ』


『そこから、王様から支援を受けて、修行するか。冒険者登録する為、ギルドに行ってオレスゲー展開だろ?』


『そこは城で修行パターン』


『まあ、どっちでもいいか、結局そこからオレスゲーになるんだろ?』


『ならんな、そこから女神の雑用係だ』


『魔王を倒して、ハーレム的な展開だろ最後』


『魔王も主役が倒したよ』


『モブキャラなの、モブモブ?』


『モザモザな、そうだよ』


『妄想なのにえらいダメだな、クラス全員で異世界行った意味あるの?』


『いちよう、帰りに女神からギフトカードを貰えるんだよ、他の皆は謎のパラメーターを貰ってたよ』


『モザモザは何貰ったんだよ、ワクワク』


『だから、サンタさんは何もくれなかったんだよ。悪い子にはプレゼントをあげない方針らしい』


『そっか…、まあ、何はともあれ帰還おめでとう!!』


『ああ、ありがとう、杉』


携帯端末を開く前とは違う気持ちで端末から目を離す。表情もやや和らいだ。

歩き慣れた帰路を5年ぶりに歩く、実家に帰るのにこんなにも緊張するのは母に作ってもらった朝飯を布団でダラダラしていて食べずに慌てて着替えて玄関から出て行こうとして際、母に激怒され、皿と共に家を追い出されて以来だろう。

…あれは怖かった。


ショウは控えめに「ただいま」と挨拶をして、リビングにいる5年ぶりに見た母を見て、目頭が熱くなった。思わす力強くもう一度「ただいま」と言った。

母はショウの気持の込もり過ぎた挨拶に少し怯えていたが「おかえり」と控えめに答え、今日の夕飯がカレーである事をショウにしれっと伝えた。


ショウは「カレー!?」と更に気持の込もり過ぎた言葉を発し、母を更に怯ませた。


カレー:肉と野菜と香辛料と小麦粉により、油と出汁と炭水化物を渾然一体にした奇跡と言っても良い料理。多くの子供達・元子供達(主に男の子)が我が家の味として上げることが多い。


ショウは5年間コレを待っていたのかもしれない、いや、待っていたんだ。

この世界に戻ってきて、今日一番のテンションが上がっていた。


対照的に母はカレーと聞いてショウが上げた奇声に今日一番テンションが下がり、ショウを急き立てるように風呂に入って、飯を食って、直ぐに寝ろと強めにアドバイスした。


ショウは自室に戻り、鞄を置き、部屋着に着替えた。そして、何気ない日常が戻ってきたのだと少し感慨深くなり、こぼれた涙のせいでやや鼻をすする。


そして、母の風呂沸いたとの呼び声を聞き、風呂の前室の脱衣所に移動して、服を脱ぐ、下着などを脱衣所にある洗濯機の中に放り込んだ、…異世界では自分で全て洗濯をしていたのを思い出す。

ここは天国なんだろうか。


浴室に入り、掛け湯して、入浴剤を沈め、浴槽の水を緑色にする。そして、5年ぶりに風呂に浸かる。やや膝を折り曲げてお湯に身を沈める感覚が異様に懐かしい、思わず鼻歌を歌った。こっちの方が天国だなと思いながら、ショウは長湯した。


ショウが風呂から上がって、身支度を整え、食堂に行くとサラダとカレーがデーンと4人掛けテーブルに乗っていた。親父と大学生の兄も帰ってきており、家族で食事をした。いつもの三倍はカレーをお代わりした。


その後は、眠気と実家のような心地よさの影響か目蓋が重くなり、母の言葉に従い早々に床についた。


この世界に来て初めての夜を過ごした。


…考えれば考える程、憂鬱になる明日のことは棚上げだ。

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。


作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ