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スキルが認識阻害(モザイク)って女神様、マニアック過ぎませんか?  作者: 道 バター
1章 異世界からの帰還編
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女神、女神、女神(様付けなんてしてやらん)

日は暮れ、空を茜色に染めた。

因みに魔王が討伐されて以降起きるこの空が赤くなる現象をこの世界の一部の住人は魔王の血が空を染めていると信じているらしい。


…だとしたら、怖い。


女神との約束時間の少し前にはもう城の地下の召喚用の魔法陣の前でクラスメイトと担任の全員が揃っていた。


クラスの皆は、帰還の期待のあまり落ち着きなく貧乏揺すりをする赤い顔、親しい友人との今生の別れがまだ尾を引いていそうな影がある顔、何も考えていないいつもと変わらなそうな顔、千差万別な顔をしている。


そんな中、光と花の香りと共に約束通り、女神が現れた。

出現して早々に一礼と共に女神が語る。


「皆さん、お揃いのようですね。それでは改めて、本当にこの世界を救って頂き、ありがとうございました。と、謝辞の言葉だけを伝え今まで死に物狂いで苦労頂いた皆様に帰って頂くのは非常に心苦しいですので、私から皆様にちょっとしたギフトをお送り致します」


そう言った後、杖を持っていない左手を右胸辺りで構えてから、外側に左腕が真左側に水平になるように払う動作をした。すると彼女が腕を払った軌道から無数の光が放たれ、各生徒、担任の前でクレジットカードと同じ大きさの長方形の黄金比で出来た金色のカードが浮いている。


女神は皆にそれを受け取るように言った後、魔法陣の上に誘導する。


そして、再度、謝辞を述べ、帰還の呪文を唱える。その際、クラスの皆の名前を読み上げる。


「・・・、不動茂呂、茂在君…、あっ、茂在翔、勇木イサミ、・・・」


最後の最後で女神がミスをし、数人からショウに視線が飛んできたが、儀式は滞りなく行われ、女神の言葉でこの異世界から旅立った。


「皆様の今後の未来に幸あらんことを、ありがとう英雄たち」


そして、目映い光を放たれ思わず目を瞑った瞬間に床が浮遊感と共になくなり、目を差すような光が止んだ後、目を開くと5年前に座っていた教室の椅子に座っていた。


冒険は終わった。


女神からの召喚により突然異世界に転送させられ、女神の指示で魔物との死闘を繰り広げ、ついには異世界の平和を取り戻し、英雄になったクラスメイト達が現世に帰還した。


長編ロールプレイングゲームをクリアしたような達成感で現世に戻って来たかというと


…そうではない。


異世界で活躍したスキルを失う代わりに、女神よりこの世界で使用できるギフトを帰還時、全員に配られた。

今、クラスメイト達が貰ったギフトカードを仲良さげに見せ合いながら、異世界での冒険の偉業を称え合っている。


ゲーム以上の達成感があるのだろう。


ある者は知力や体力や精神力の大幅な向上、ある者は虚弱であった身体の体質改善、ある者は異世界に関する歴史書、ある者は女神の生写真の等々、一喜一憂している。

しかも、ギフトの影響か転送前の若さに戻っている。


もちろん、僕もギフトが書かれたカードを女神から渡された。


カードを見る。


…。


もう一度見る。


え?


…何度見ても変わらない、どういうことなんだよ女神!!!


「茂在翔:ギフトなし」


放課後の教室、担任はホームルームを早々に切り上げ、直ぐに教室を去っていった。


一部の生徒達は帰還記念でファーストフード店で打ち上げだと騒ぐ中、ギフトなし。

この仕打ちは酷すぎるぞ、女神。


異世界の大陸の端から端まで行かせたり、山ほど働かせて、ギフトなし。

本当に酷いよ、女神。


死に物狂いで苦労した記憶しかほぼないのに、ギフトなし。

ホント、何なの、女神。


明るい雰囲気の教室でショウは一人、負のオーラを漂わせていた。


ショウは考えていた。せめて、生写真でも貰えれば、一喜一憂出来たのに、スキルもなくギフトもないのであれば、見た感じ他のクラスメイトでギフト無しは居なさそうなこのクラスでの孤立感が以前にも増して酷くなるのではないか、と考えるだけで、明日が怖い。


これでは本当に召喚前と変わらない。この5年間は無駄な日々だったのだろうか、ショウは自問していた。


そして、帰還後、何十度目になるのだろうか異世界に残れば良かった。ナコともあんな別れ方をせずに暮らせば良かった。でも、スキルがない僕なんて、と思考に潜り込もうとしたときに誰かがショウに声を掛けてきた。


「ねえ、茂在君。今、話し出来るか?」


「!?、何?勇木さん。」


声の主は異世界での勇者をしていた勇木イサミだった。彼女は元々クラス委員長をしており、召喚前から行事連絡レベルではショウも会話をしていた。

異世界召喚時にも持ち前のリーダーシップを発揮し、クラスをまとめていた。この世界に来て、本来の役割に戻ったような印象を受ける。

そんな彼女は笑顔でショウを訪ねてきた。


「気になったことがあって」


「き、気になること?」


「こっちに帰る前に、女神様が君だけ、フルネームで呼ばなかったのはなぜだ?」


「ああ?あれ?…も、もう言って良いのかな?じ、実は女神様によく頼みごとをされてたから、は、話す機会があったからだよ」


「頼み事とは?」


「うん、僕のスキルは戦闘にはあまり役には立たないけど、偵察とかには向いていたから、捜し物とか、届けものの護衛とか、雑用をよく頼まれていたんだよ」


「そうなのか?知らなかった。だからたまにいなかったんだ」


「ま、まあ、魔王の攻略には直接関係なさそうな仕事もあったし、女神様も勇木さんには魔王討伐に集中してもらいたかったのかもしれないね」


「なるほど、そう言えば茂在君。もう一つだけ良いかな?」


「な、なんだい」


「良かったら、ギフトカードを見せて貰えないか?」


ショウの挙動不審度が更に増す。


「え!?」


「茂在君は女神様と仲が良かったんだろ?さぞかし良いギフトが貰えたんじゃないのか?」


「…いやいや勇木さんに比べたら僕の活躍なんか大したことないよ」


「またまた、ギフトが良すぎて、見せたくないのかも知れないが、教えて欲しい。もちろん秘密にするし、因みに私のはこんな感じだ」


イサキはギフトカードをショウに見せてきた。


【勇木イサミ:知力・体力・筋力・魅力 + 50ポイントを与える。】


「ポイントが何を示すのかは謎なんだけどな」


イサミは発言とは裏腹に満更でもない顔である。


「…でも」


ショウは5分の1いや、10分の1でもいいから、イサミの謎のパラメーターを欲しいと思っていた。

そして、イサミのギフトカードと比較した自分のギフトカードが更に嫌いになった。


「茂在君、そんなに焦らされると更に見たくなってしまうぞ」


「勇木さん、秘密にする約束は守ってくれるよな。後、笑わないでくれるよな」


「…あれ?想定と違うのかな?でも気になるので教えて欲しい。何度も言うがもちろん誰にも話さないから」


「分かった、じゃあ…コレ、です」


ショウは緊張のあまり手が小刻みに揺れていることを感じながらも、イサミにカードを渡した。

イサミは両手で受け取り、丁寧に眺めているが…、顔に貼り付いた笑顔が急に消え、無表情になった。


「コレ、ホントか?」


「うん」


「そっかぁ…」


すぐに返されると思っていたカードをイサミは返さず。顎に片手を当てじっと見ている。ショウは自分の恥ずかしい部分を見られているようで居心地が悪くなり、我慢の限界とばかりにイサミからカードを引ったくるように回収した。


「あっ!?」


「もう良いだろ!長い間見たって、内容が変わるわけがないんだから!」


そう言って逃げるよにショウは鞄もを持ち、その場から走り去った。


逃げ帰るよう教室から去るショウの後ろ姿を見ながらイサミは疑問を口にする。


「あのカードなんかチョット、違うよな?」

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。


作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

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