表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/44

第八話 探索者ギルドに、いらっしゃぁい♪



        この物語は、


     史上稀に見る高難度にして


   伝説の「クソゲー」として知られる


剣と魔法のRPG『ドラゴンファンタジスタ2』


   を舞台にした、とある探索者たちの


     迷宮をめぐる日常を描いた


       冒険活劇である。



(八)



カランコロンカラン♪



「あらぁ、シクヨロさん。いらっしゃぁい」


 軽快にドアベルを鳴らしながら、探索者ギルドの扉を開けたシクヨロたち一行を迎えたのは、なんとものんびりとした甘ったるい口調で話す女性の声だった。


「いよお、メリアンちゃん、ひさしぶり」


「やだぁ、あなた一昨日(おととい)も来たでしょ?」


 シクヨロに「メリアン(ちゃん)」と呼ばれたその女性は、そう言って笑った。ほどよく美人で、ほどよくかわいい。受付の看板娘、と呼ぶには少々(とう)が立っている。年齢は、ギリギリ三十歳を過ぎているか否かといったところ。だが、つねに笑顔を絶やさない温和な接客態度と、そのしなやかかつ豊満なプロポーションで、メリアン嬢は多くの男性探索者からの人気を集めていた。もちろん、シクヨロも彼女の熱烈な支持者(ファン)の内のひとりである。


「へへ、そうだっけか。……あ、そうそう。例の大富豪(カネモチ)の犬探しの件、キャンセルんなったって?」


「そうよぉ。あのワンちゃん、自力で帰ってきたらしいの。(もう)け損なっちゃったわねぇ」


「その代わりに、べつの依頼が自分のほうからやって来てくれたけどな」


 そう言って、シクヨロは背後にいたアイシアの方を振り返った。


「あぁ、あなたこの前の……アイシアさん、だったかしら?」


「あ、はい。その(せつ)はお世話になりました!」


 そう言って、アイシアは深々と頭を下げた。


「やっぱり、この()探偵社(ウチ)を紹介したのは(ねえ)さんだったか」


「そうよぉ。でもたしか、もう三日も前だったと思うけど」


「三日ぁ?」


 驚いたシクヨロに、アイシアが答えた。


「はい。じつはあの、ちょっっっとだけ道を迷っちゃって……」


「ギルドから探偵社(ウチ)まで、歩いて三十分もかかんねえぞ。どうやったら、そんなに迷えるんだよ」


「んー、なんでですかねえ……」


 シクヨロは、アイシアが自称「あわてんぼうで方向音痴」だったことを思い出した。とは言うものの、ごくふつうの街中で三日もさまよってしまうようだと、いざ迷宮内ではいったいどうなってしまうのか。そのやりとりを聞きながら、そばにいたマルタンがため息まじりに小さくつぶやいた。


「さすが、()エルフ」


「え、なんですか?」


「べつに」


「ふふ、こんにちはマルタンくん。めずらしく、あなたも来てたのねぇ」


 メリアンはそう言ってマルタンの方を向き、すこしだけ姿勢をかがめるとにっこり微笑んだ。白いブラウスからのぞく、やわらかそうな胸の谷間が、少年の視界に飛び込んできた。


「う、うん。どうも……」


 そう言うと、マルタンはすこし赤くなって横を向いた。もちろん、マルタンも彼女の熱烈な支持者(ファン)の内のひとりである。




「それでぇ、今日は4946(シクヨロ)迷宮探偵社のみなさんお揃いで、探索者ギルドになんの御用かしらぁ?」


冒険(クエスト)の受注報告と、迷宮入場の許可申請だな」


「アイシアさんの依頼ね? すると、第十三迷宮ってことだけど……いいのよねぇ?」


「ああ、頼む」


「わかったわ。じゃあ、迷宮要項をよく読んでもらってぇ、この用紙に必要事項を書いて提出してくれるかしら」


「あ、それ、ぼくが記入するよ」


 そう言ってマルタンは、メリアンから用紙を受け取った。


「こういう書類は、あんまり人任せにしたくないんだ。放っておいたら、どんな契約を結ばされるかわからないからね」


「疑り深いヤツだねえ、ガキのくせに」


「ふっ、おじさんに言われたくないよ」


 そう言うとマルタンは、アイシアに向かって話しかけた。


「アイシア、キミも書類の内容をチェックしておいたほうがいい。申請用紙の書き方も教えてあげる」


「はい、マルタンさん。ありがとうございます!」


 そう言ってふたりは、申請カウンターの方へ移動していった。




「そういえば、姉さん(メリアン)一昨日(おととい)オレがギルドに来たとき、アイシアのことを話さなかったよな?」


「あぁ、べつに深い意味はないわ。シクヨロさんが、あの()の依頼を断ったんだと思ったからよ」


「なぜだい?」


「迷宮探偵さんの最初の依頼にしては、すこし難題(ハード)すぎるかなって。それにしても、第十三迷宮なんて、よく受けたわねぇ」


「いろいろあってな。ま、なんとかやってみるさ」


「無理しないでねぇ、あなたレベル三なんだから」


「ほっといてくれ」


 通常であれば、第十三迷宮はそうそう気軽に足を踏み入れていいダンジョンではない。まして、レベルの低い探索者ならなおさらである。にもかかわらず、メリアンはシクヨロの挑戦をとくにとがめ立てしていない。伝説のクソゲーと名高い、この剣と魔法のファンタジーRPG『ドラゴンファンタジスタ2』の探索者ギルドで、これまでに何千何万というプレイヤーをダンジョンへ送り出していった彼女ならではの、経験とカンがそうさせているのかもしれない。


「そうだメリアン、『マカラカラムの護符(タリスマン)』について、なにか知ってるかい?」


「それなんだけどぉ……。私、この仕事けっこう長くやってるけど、聞いたことないのよねぇ、そんなレアアイテム」


「そうか」


「アイシアさんの持ってた古文書は、いちおう確かなものだとは思うけどぉ。第十三迷宮は、未踏エリアもかなり多いから」


「わかった。ありがとな」


「ええ、シクヨロさん。迷宮探偵の初仕事、がんばってねぇ」


 そう言って、メリアンはとびきりの笑顔を見せた。シクヨロは、心のギアがひとつ上がった気がした。




「シクヨロ、書けたよ」


「ああ、ご苦労さん」


 シクヨロは、書類をメリアンに提出すると、探索者ギルドを後にした。


「それでそれで、これからどうするんですか? いよいよ迷宮に……」


 (はや)る気持ちを抑えられないアイシアに、シクヨロは言った。


「いや、まだだ。これから『ルビコンの酒場』へ行く」


「ルビコンの酒場?」


「さすがに、最難関の第十三迷宮をオレたち三人じゃ心もとないからな。もうひとり、仲間を見つけるのさ」




続く



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] メリアンは金髪で、瞳はエメラルドグリーンで胸元がざっくり開いたシャツを着ているに違いない。ハアハア。。
[良い点] アイシア天然すぎる(;´∀`) メリアンもそうですが、登場人物が個性的で魅力がありますね。ルビコンの酒場でどんな仲間が見つかるか楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ