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疎まれ聖女は科学で世界を救います!  作者: Belle Etoile
第一章
6/9

06 ロザリオのネックレス

やっと科学っぽさが出てきましたね。(ラブコメ展開はもう少しだけお待ちください。)

食堂へ戻った頃には既にオードブルまでコースが進んでいたので、私はそそくさと自分の席へ戻りました。

すると、ウェイターさんがやって来て食前酒を用意してくださいました。美しいピンク色のお酒で、美味しそうです。


けれどこれに毒が入っているかもしれないと思うとどうも口をつける気にはなれません。

よし、あの手を使いましょう。


「ごめんなさい。私の元いた世界では20になるまでアルコールを飲んではいけない法律があるのです。ですから食前酒は控えておきますね。」

「左様でございますか。この国では16から飲酒が許可されておりますので、問題は無いと思われますが人それぞれ事情がございますからね。それではオードブルをお楽しみください。」



意外とすんなり引いてくれましたね。良かった〜。

このまま最後までのらりくらりとかわしてゆければ毒殺は回避出来そうですね。



そう思っていた私が甘かったです……。


……


食欲がない振りをしてオードブルもお見送りした私の前に現れた新たな刺客、スープ。

これも食欲がない振りで乗り切りましょう!



「申し訳ございません。ウェイターさん、私本当に食欲がなくて……。」

「左様でございますか。しかしながらそちらのスープは整腸作用、食欲増進作用のあるハーブが入っております。

お身体の調子が悪いようであれば、尚更召し上がっていただきたく存じます。」

「あ、でも……。」

「せっかくの聖女様の祝宴でございますから、ぜひお連れ様にも楽しんでいただきたいのです。」



うーん、手強いウェイターさんですね……。

しかたがありません。作戦変更です。


あくまで私の推測ですが、ここまで強引にスープを勧めるという事はスープに何か混入されていると見てよいでしょう。

食事に混入される毒として思いつくのはテトロドトキシン、トリカブト、ヒ素、青酸カリなどでしょうか。


まず、テトロドトキシンは無いでしょうね。

スープの中にフグらしきものはありませんし……。

次にトリカブト。

こちらもトリカブトの毒性成分アコニチンは水に溶けにくいため、除外して良いでしょう。

青酸カリは独特の味がするので、飲んでいる途中で私が気づいてしまうでしょうし。


となると……。


「ヒ素…… ですか……。」


試しにスプーンをスープの中に入れてみましたが、何も起こりませんでした。

もしかすると、異世界の毒は私のいた世界の毒とは違う化合物から出来ているのかもしれません。だとすれば完全にお手上げです。


けれどもし、このスプーンが銀製食器でないならば……。



「まだ希望はある……。」



『これはお守りよ!いつかきっとあなたを守ってくれるわ。』



「ママ、ありがとう……。まさかこんな所で役に立つなんて思わなかったよ……。」



私は上着の下に隠していた純銀のロザリオのついたネックレスを外し、そのロザリオを握りしめ祈る「振り」をしました。

握りしめておかなければ、銀の存在に気づいたウェイターさんがスープ皿を下げてしまう可能性もあったからです。

周りの人達は怪訝そうな顔をしましたが「神へ食前の祈りを捧げています」と説明すると、それ以上何も言われることはありませんでした。


そして祈る振りを終えた瞬間……



ロザリオをスープの中へ落としました。


スープ皿にダイブしたロザリオはみるみるうちに黒くなっていきます。

それを見ていた周りの人達も驚愕で目を見開いていました。


「誰がこのような事を……。」

「聖女様の祝いの席でこのような無礼を働く者は誰だ!」

「このスープを配膳した者を連れてこい!」


和やかな雰囲気が一転、騒然とした空気の中で犯人探しが始まりました。

事情を理解したカノンもすぐにこちらに飛んできてくれました。


「ユウリ!ユウリ!!どこも痛くない?辛くない?大丈夫なの?」

「うん、私は大丈夫だよ。大丈夫だから泣かないで。」



カノンの頭をヨシヨシと撫でながら、私は次の手立てを考える事にしました。

今回は上手くやれたけれど、次も上手くいく保証は全くない。私が傷つくとカノンが悲しむ。それは絶対いや。そんな事になるくらいなら……



ここを抜け出してどこか新しい土地を目指そう。


ご覧いただきありがとうございます。

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