05 黒い思惑
小説を書くのは楽しいです。
が、自分で書いてると乱文になっているかどうかって分からないものですね(^_^;)
「聖女様はお二人のうちのどちらですかな?」
どういう事でしょうか?質問の意図がよく分かりません。
私達は2人とも日本で育ち、同じ学校へ通い、ほぼ毎日顔を突き合わせ、そして同じタイミングでこの世界にやって来たのです。
そもそもカノンの家族や、私の家族だって純粋な日本人なのに、どちらかが聖女でどちらかがそうでないということは有り得るのでしょうか。
確かにカノンは気配りができて優しくて、まさに聖女様と言えなくはないけれど、それは言葉のあやであって……。
私がグルグル考えを巡らせていると、不意に隣から伸びてきた腕がスッと天に向かって挙げられました。
「私がその聖女です。」
「えっ……。」
私は暫時、呼吸を忘れるほど驚きました。
挙げられた手を辿った先にいたのはカノンだったからです。
その瞬間、にわかに大聖堂中で喝采が起こりました。
「聖女様、万歳!!」
「聖女様、我々をお救いください!!」
「この世界に大いなる祝福をもたらしてください!!」
そこにいた誰もが口々に聖女様の登場を喜び、彼女こそが救国の女神であると信じて疑わない様子でした。
私だけがその状況について行けず、固まったままでいたのですが
「では貴女は一体何者なのでしょうか……?」
という司教様の言葉で我に返りました。
確かに、聖女様は1人しか召喚されないのであれば、そしてカノンが聖女様であるならば私は一体なんなのでしょう。
私が口ごもっていると、カノンが見かねたように私と司教様の間に入ってこう言いました。
「私は聖女カノンと申します。そしてこの子は私の一番の友人、ユウリです。」
「なるほど、カノン様とそのお連れ様でしたか。大変失礼いたしました。」
なんですか。お連れ様って!
カノンは私の名前をきちんと紹介してくれたのに!
現在進行形で失礼されている気がするのですが、気のせいでしょうか?
でもまあ、そんな事は瑣末な事なのです。それよりもなぜカノンは自分が聖女だと宣言したのでしょうか。
彼女自身が聖女である、と確信できる何かがあったのでしょうか。
これは2人きりになれる頃合いを見計らって尋ねておきたい質問ですね。
私がまたあれこれと考えている間に、先程まで大聖堂にいた人たちは食堂へ向かってしまっていました。
なんでも聖女様召喚が成功した祝宴が開かれるのだとか。
正直なところ、食事など出来る心理状態ではないのですが
「美味しい肉は全てを解決してくれる。」
という先人のありがたい教えもありますからね!
ご飯を食べて気持ちを切り替えてから先の事を考えましょう!
「カノン!待っててくれたんだ!遅くなってごめんね!」
「ううん。大丈夫だよ、一緒に行こう!」
私はカノンと、カノンに向かって「聖女様、救済を…… 救済を……。」と祈りを捧げていたちょっとヤバそうな方々と一緒に食堂へと向かいました。
……
うーん。食事前に席を立つってやっぱりマナー違反ですよね。
でもごめんなさい!私、どうしても行かなくてはいけないんです!
でないと、漏れてしまうので!!
お食事が運び込まれる直前になって急に尿意を催してしまいました。
司教様には
「私に構わず始めてください。」
と言っておいたのですが、明らかに嫌そうな顔をされてしまいメンタルがブレイクしました。
私だって催したくて催してるわけじゃないのに……。
悲しみに暮れながらお花を摘み、急いで食堂へ戻ろうとしたその時
「やっぱり消すなら魔法の方が楽だったんじゃねーノ?」
「いや、相手は黒髪黒眼だ。たとえ異世界の人間とはいえ、魔力を持っていないとは限らない。その場合魔法を使うと勘づかれる恐れがある。」
「まあ、確かに。相手が魔力持ちなら原始的な方法を取った方が安牌だナ!」
「全く……。聖女様以外の存在を召喚すると、最高責任者の私が国から罰せられるため、慎重に召喚の儀を執り行えと伝えたのに……。」
「ま、国王軍が聖女様を迎えに来る前に始末しちゃえば問題ねーヨ!」
あのー、これ多分私を暗殺する系の話ですよね……?
ばっちり聞いてしまったのですが……。
え、聖女様以外の異世界人って秘密裏に殺されてるんですか?
ダークなゲームだとは思っていましたが、シナリオ外まで凝った作りですね〜。
とにもかくにも私には「カノンと元の世界へ帰る」という目標があるのでここで殺されるわけにはいきません。
なんとかこの場をやり過ごさなければ……。
かくして、私は「饗宴」改め「凶宴」と化した食堂へと歩みを進めるのでした。
今のところはモチベーションが高いのでサクサク更新させて頂ければと思います。
よろしければ続きも覗きに来ていただけますととても嬉しいです。