3・雪と妖精 前編
いらっしゃいませ
ようこそ
第3話「雪と妖精 前編」です。
どうぞ
冬の朝。
黒くて厚い雲の下。
ぼふ!もこてん!
妖精が隣ですべって転びました。
昨夜からの雪が止んだ山盛りの道での事。
転んだ妖精ハーさんの手から落ちたタバコは雪に包まれ、火を消しています。
「あはははは」
私はお腹を抱えて笑う。
しばらく笑った。
けれどハーさんは、まだうつぶせのまま倒れている。
「はやく起きろよ!スコップ買いに行くんだから!」
起きない。
白い空気が流れている。
早くッ!
……あれ?動かないぞ……。
~~~~~~~~~~~~~~~
寝起き、耳の奥がガサガサしたんです。
さぶ!
なんだかいつもの朝と空気が違う。
私は立ち上がり、肩を抱いて窓際へ行った。
カーテンを開けると、その原因がわかりました。
雪。
積った雪。
昨日テレビも見なかったからな。
そういえば、何日か前、雪が降るかもしれないなんて言ってたっけ。
何処へも行く予定はないし。
家にじっとしていればよいのだけれど。
雪が気になる。
積もった雪が。
積もる雪なんて何年振りかだし。
仕事へ行く人は大変だろうな。
仕事なんか行かなければ、こうして思いを静かに出来るのに、かわいそうだな。
なんて勝手な事を考えて。
なーんだか、ジッとしておられず、私は玄関を開けてエントランスへ向かいました。
静かに、ムオン、と雪。
それは世界の音を吸い取っていて。
すごい。静かに。
少なくとも1メートルは積もっている。
エントランスのドアを開き、足を進めた。
あ、サンダル!
私はサンダルで出てきていた。
この辺が雪に慣れていない所なんだろうなぁ、と思って長靴を持っていない事に気が付きました。
外は誰も歩いておらず、振り返り受付を見ると、管理人さんもいない。
「本日定休日」の立て札が目に入った。
サンダルでもいいや!
とっさに思った私は、白が積もった世界の片隅に出てゆく。
白はいいなぁ
白に包まれて嬉しいなぁ
本当にそう思ったのです。
部屋に戻ると私は決心していたんだ。
取り敢えずパンをかじって。
手袋を探して。
箪笥のどこに入れたのか、ちょっと探したけれど一番下の引き出し、靴下の横にそれはあった。
よしよし、よーし。
マフラーは無いけれどいいや。
靴は運動靴がある。染みてくるかな。
そう思って靴下を引っ張り出す。
2枚ぐらいもってけばなんとかなるさ。
そうやって自分でも驚くぐらいテキパキと外出の準備をしたのでした。
家を出る時、
そういえばハーさんいないな。
そう気が付いた。
なんだかちょっと申し訳ない気がした。
が、家を出た所で。
「一緒に行くよ。雪なんて久しぶりだもんねぇ」
現れやがった。
「いたの?」
そっけなく聞いてやる。
「いたよぉ~」
仏頂面してるぞ。
私はさっきの思いが引け目として感じられ、黙って鍵をかける。
「寒いよ。それにちょっと遠いよ」
本当は一緒に歩くのが面倒くさいんだけれど、「家に居ろよ」とは言えず、少しだけツンとして歩き出す。
ハーさん黙ってついてきたぞ。
まったく、ハーさんと歩くと、あちこちあちこち寄り道をするので面倒くさいのです。
そこらにいる犬や猫をかまうぐらいならまだいいのですが、この前なんか、アリの数を数え始めた。
なんだよ、それ。
目的を果たすまで、時間が3倍かかるんだ。
そして今日は転んでやがる。
~~~~~~~~~~~~~~~
転んだまま動かないハーさんを見て、笑うのをやめた私は声をかけます。
「おい、大丈夫か?」
突然立ち上がりやがった。
私はまた腹が立つ。
「いーかげんにしろよ!」
と、顔を見ると、その認識できない顔は、なんと泣きそうなのだ。
身体は雪でボフボフだし。
「ちべて~よー」
泣きそうな顔だ、というのがわかったので、私はまた笑ってしまつった。
「ははは、はははははは」
ハッキリ声をあげて笑ってやるのだ。
するとヤツはニヤリと笑い、私の許に突進してきた。
私を突き飛ばす気だな。
そう思って身構えると、ハーさんはまた滑って転んだ。
「いってー」
今度はあおむけにひっくり返ったハーさん。
手足を宙にばたつかせて、またすぐには立ち上がらない。
「バーカ。ほら、落ちたタバコ拾って」
また立ち上がらないぞ。
「何してんだよ!早く!」
「転べばいいのに~、こんな雪めったにないよーきもちいいよー」
「いいからっ!」
私はハーさんの手を引っ張る。
「早く帰って雪かき……」
言いかけたところでハーさんが手を引っ張り返してきた。
雪の上に引きずり込もうという魂胆だ!
予想しなかった私がバカだった!
が、私の手は思ったよりも力強く、ハーさんの手を振り払う。
「もう!いい加減にしなさい!」
ハーさんを睨みつけた。
また仏頂面がこちらを見ている。
今度は泣いてないぞ。
笑えない私は、なんだかその見えない顔を睨み続けることが出来ず、先に目を反らしました。
そんな自分が悔しくて、私は一人で歩きだすんだ。
「もう来ないで!帰ってなよ!じゃね!」
雪によろけながら歩く。
「どっか行ってよ」じゃなくて「帰ってよ」
「どっかいってよ」
何でそういわなかったんだろう。
悔しい。
腹が立って、腹が立って。
せっかくの雪なのに。
まだ足跡の無い白い雪の上なのに。
モフモフ中、ハーさんを放って。
絶対、滑らないようにと。
道に滑らない様に、俯き、歩いてゆく。
つづく
お読みいただきありがとうございました。
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