何故そこにいる
続かないかもしれないし続くかもしれない。
ワンコっぽい方向音痴キャラが書きたかったんですよ(:3 _ )=あと女性向けに挑戦したかった
さて、皆様初めまして。私クレティウス辺境伯が娘、ベアトリーチェでございます。
突然ですが私、一目惚れとやらをしてしまったようなのです。
ある晴れた日の午後、自邸の庭園で咲き乱れる薔薇の花を愛でていた時、お父様へ用立てのある方か立派な騎士様が通られたのですが。
その方はどうも道に迷ったのか、そもそも入り口を間違ってしまわれたのか、本来客人のいるはずの無い、私のいる裏庭に顔を出されたのです。
「あの、お嬢さん」
捨てられてしまった仔犬のような表情、それが実に印象的な方です。
響く声は震え、然しながら随分と耳に心地よい高さと音でした。
「どうなさいましたか?」
「この家のご令嬢であろう貴女に聞けば、実に愚かしいと言われても仕方の無い事なのですが……」
曰く、父上に親書を届ける任を帯びてきたものの、極度の方向音痴たる彼は王城から放射状に伸びる大通りではなく小道に入り込んだ挙句、屋敷の入り口を間違ってしまったらしく。
我が家の正規の入り口は、王城から第十二通りを唯々曲がる事なく、出来るだけ太い道を三十分程抜けるだけである筈なのでその方向音痴力は本物のようでした。
あらあらと事の顛末を伺いなんとも言えない気持ちになっていると、彼は再び口を開きます。
「大変申し訳無いのですが、玄関口の方向を教えていただませんか?」
大層庇護欲を誘う深緑のような澄んだ翠が一瞬、張られかけた水膜に歪んで。それと同時にこの世界にこんなにも可愛らしい殿方がいたのかとき、ゅうと胸が締め付けられるような、恋の感覚を覚えたのです。
口調は永遠に安定しません