4.転生王女はため息をつく。
---何で気付かなかったのぉぉ! 私のバカバカバカ! お兄様に会う前にずっと傍にいたじゃない。
護衛騎士であるランディを見てマリーは頭を抱えた。
---彼も攻略対象キャラじゃない! 今頃気が付くなんて!
「マリー様?」
ランディは、何か言いたそうなマリーを気遣うように見てそっと声をかけた。
「ランディ。な、何でもありません」
気付かれないように平静を装う。
けれど、マリーの心の中は恐慌状態だった。
---今からソッコーお部屋に帰りたいぃぃ。もう、部屋に篭って生活したい!
そう叫びたいのをぐっと我慢する。
攻略ノートは、ルーク王子の分しか作ってなかったことが悔やまれる。
夢とはいえルーク王子に会ったあとに、アレク兄様・ランディに出会ったマリーはあらためて、ここが……今いる世界が、ゲームの中であると確信した。
---ここが夢だったらいいのに……。
思わず遠い目になるマリーに、アレクが問いかける。
「どうした? マリー」
アレク兄様に気遣われマリーは、現実に戻ってきた。
「アレク兄様、何でもありません。お兄様に会いたくてこちらまで、思わず来てしまいましたが、迷惑でしたか?」
「僕に会いに来てくれたんだね。嬉しいよ。どうか迷惑などと言わないで」
嬉しそうに微笑むアレクに頭を撫でられる。
「何なら、マリーはずっと傍に居てくれても良いんだよ。勉強も一緒にすればいい」
---しまったぁぁぁ。シスコンのフラグを回収するつもりが、変態に拍車を掛けてしまったぁぁぁ。
「に、兄様。わたくしは、1人でも大丈夫です。1人でも兄様を支えられるように勉強しますわ」
「マリー! 僕を支えてくれるなんて。嬉しいよ」
---1人でも大丈夫アピールが、変態をもっと喜ばせてしまった。何でなのぉぉぉ。もう部屋に帰りたいぃぃぃぃ。誰か助けてっ!
「さ、マリー僕はそろそろ訓練に戻らないと。そこに座って僕の訓練を見てておくれ」
断る間もなくテキパキと指示を出し、マリーが見学できるよう場を整えアレクはマリーの頭を撫でた。
「やっぱりマリーは、可愛いな。お茶も用意させたからゆっくり見学していて構わない。なんなら終わるまででも」
そう言ってアレクは、名残惜しそうに訓練へと戻っていった。
---可愛くない! 可愛くないですからぁ! 誰かそこのシスコンを成敗してぇぇぇ。
うっかり剣が飛んできて、アレクにあたってマトモにならないかなとマリーは思った。
読まなくても大丈夫な、心の声だだ漏れ。
・マリー…とにかく、シスコン兄様を誰か闇に葬ってくれないかな。←イマココ
・アレク…ああ、お茶を飲んでいる姿も可愛いよ、マリー。今だけは僕はマリーが手にしているカップになりたい。←イマココ
・ランディ…マリー様のアレク様を睨む目……良いあんな目で見られたい。←イマココ
皆様、読んでくださりありがとうございます。
お気づきの点ございましたら、なんなりとお申し付け下さい。