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3.転生王女は、絶望する。

 マリーは2歳年上の兄である第一王子アレク=フォン=フロージアが、剣の稽古をしているはずの訓練場まで続く渡り廊下を歩いていた。

 護衛騎士を従えて。



 マリーの中でまだここが乙女ゲーム「王子様はお好き?」の世界だと信じきれないのだ。



 夢を見ただけかもしれない。

 たまたま、自分の容姿が、ゲームのライバル悪役王女に似ていただけかもしれない。



 そんな淡い期待を胸に足を進める。

 確認のため、まずは自分の兄であり攻略キャラでもあるアレクに会いに行くことにした。



 攻略ノートまで作っておきながら、お前何言ってんだ? とは、思うもののそうじゃないと良いなとマリーは、願わずにはいられない。



 このゲームのラストを思い出したけれど、どのキャラのルートを辿っても、マリーは学院を追放され王宮の地下牢に入れられる。



 マリーの前世・香はヒロイン・ダイアナとしてプレイし、全てのキャラを攻略済みだ。

 ラストはライバルのマリーは、ヒロインに対して数々の愚行を行い地下牢に入れられていた。一国の王女なのに。

 その姿にいじめっ子、ざまぁ! と思っていた過去が懐かしい……。



 一瞬マリーは、全てを諦めたように、死んだ魚の目になってしまう。

 頭をフルフルとふって、諦めに似た気持ちを振り払って気合を入れる。



 ---牢に入れられてしまうなんて! 冗談じゃないわよっ!



 その勢いのままに、訓練場のドアを開ける。



 バァン!



 勢いよく開いたドアに、中で訓練していた騎士達が一斉にマリーを見た。



 マリーの登場で、静まり返った訓練場になんとも言えない空気が漂う。



 ---や、やっちまったぜ!



 思わず何処かのお笑い芸人のような台詞が頭をよぎった。

 恥ずかしさに逃げ出したくなるけれど、それでは恥の上塗りのようだ。

 前世で培った笑いで誤魔化す! をマリーは発動すると共に、手にしていた羽根扇をパチンと開いて、訓練場の空気を変える。



「どうしたんだ、マリー?」

「アレク兄様」



 優しくマリーに問い掛けてくれたこの人こそ、攻略キャラにして、マリーの兄アレク王子だった。



 幼い頃からマリーのことを可愛がってくれた大好きなアレク兄様。



 マリーとしての記憶のアレクの姿と香としての記憶の彼と同じ姿だったことに、一縷の希望は絶たれた。



 ---分かってたけど! いやぁぁ!



 マリーと同じプラチナのように輝く銀の髪に紫色の瞳。マリーの丸く大きな瞳と違い少し切れ長な瞳は、愛しそうに彼女を見つめていた。



 そう。

 アレクは、シスコンなのだ。

 ここが、「王子様はお好き?」の世界なら、彼はそういった嗜好を持っているはず。



 この頃はまだそうでもないけれど、学院へ行ったあと、何があったのかアレクのシスコンぶりが炸裂する。



 攻略に成功してアレクといちゃラブエンディングかと思いきや。

 アレクは散々ヒロインに意地悪した可愛い妹も誰の目にも触れさせたくないと、牢屋へと閉じ込めるのだ。



 思わずゲームに向かって「何でだよっ!」と突っ込んだのは、香だけではないはず。



 ---ひぃ! 変態がここにいるぅぅ。誰かぁ、助けてっ!



 助けを求め思わず振り返ったマリーが見たものは、傍に控える護衛騎士だった。

読まなくても大丈夫な時々漏れる心の声。



アレク…ああ、マリー! 僕に会いに訓練場まで来てくれたんだね。今日も可愛いよ。僕のマリー。←イマココ


護衛騎士…マリー様、ああ今日もとてもとても愛らしい。お前らマリー様を見るんじゃねえ。マリー様が腐ったらどうするんだよ! 訓練場の騎士達を睨む←イマココ


皆様、しおりありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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