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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
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episode 99 「操られし者たち」

ゼロは殺意を撒き散らしながらも、なんとか自我を保っていた。


「ゼロ、使うかい?」


ワルターが木刀を手渡そうとするが、ゼロはそれを断る。


「必要ない。むしろその方が危険だ」


ゼロは拳を握る。


「相変わらず生意気ね。憎たらしいったら無いわね。ま、そこが可愛らしくもあるんだけれど」


ニコルは悩殺した男たちをゼロに差し向ける。弓矢部隊が矢を放ち、その後ろから槍を持った男たちが追撃する。


「……」


意識を集中させるゼロ。矢を紙一重で避け、男たちめがけて砂を蹴りあげる。怯んだ隙に槍をはたきおとし、こめかみ、あご、みぞおちなど急所に攻撃を加える。次々と倒れる男たち。


「さすがねゼロ君。最もこの程度でやられてもらっちゃつまらないけどね」


ニコルが指をパチン! と鳴らすと林の奥からまた続々と男たちが現れる。それだけではない。肉食の獣たちまでもがニコルの指示に従い、ゼロたちに牙を向く。


「おいおい、まじかよ。本物の野獣まで……」


フェンリーが驚愕の表情を浮かべる。


「ゼロ、まさかこの獣たちも殺すななんて言わないよね?」


ワルターが剣を構える。


「無論だ」

「そうかい。ま、できるだけ努力してみるよ」

「荷が重いんなら俺に任せときな。生かさず殺さずは得意分野だぜ」


フェンリーとワルターも向かってくる敵を見据える。


「フェンリー、お前は人間どもを。ワルター、お前は獣どもを。俺はニコル本体を叩きのめす」

「ああ。任せてくれ」

「はいよ」



男たちは弓や槍、サーベルを手にフェンリーに襲いかかってくる。


「マズハオマエヲチマツリダ」

「やってみろよ」


フェンリーを地面に手を当てる。地面は凍り出し、男たちの方へ向かって突き進む。その氷に足を踏み入れた瞬間、男たちは足の先から氷に飲まれ始める。


「ナンダコレハ!」

「さあな。神のご加護ってやつらしいぜ。ってもう聞いてねぇか」


男たちは氷のオブジェへと姿を変えていた。


「ま、こんなもんか」



獣たちはワルターのもう片方の腕も食いちぎろうと牙を向く。


「できれば俺があの美人さんのお相手を勤めたかったんだけどね。君たちで我慢するとするよ。予測できない動きの相手っていうのも悪くないね」


ワルターは木刀を握りしめ、体勢を低く構える。意識を集中させ、獣の動きを探る。


「まったく、君たちなっちゃいないね。チームワークがバラバラだ」


それもそのはず。獣たちは多種多様で動きや大きさもバラバラだ。ニコルに操られ、無理矢理集められたにすぎない。


一匹、一匹、剣で薙ぎ払っていく。攻撃を受けた獣たちはニコルの術から解放され、尻尾を巻いて林の奥へと姿を消す。


「なんだい、根性がないねまったく……おや?」


グルルルと低く声を唸らせる獣。どうやら彼らのリーダー格のようだ。


「君はなかなか手応えがありそうだ。いいね、やろう」


立派なたてがみをなびかせながら、獣は鋭い爪でワルターを襲う。間一髪で爪を逃れたワルターだったが、獣の足を振るう際に生じた風圧でよろめいてしまう。


「ハハ! やるじゃないか。その爪にその牙! くらったら只では済まなそうだ」


ワルターはうきうきで獣に飛びかかる。剣で爪を受けながら脇腹に蹴りを加えるが、全長二メートルはあるだろうその巨体はびくともしない。


(さてどうしたものかな。目をやろうか? んー殺すならともかく生かすなら少しかわいそうかな。まったく、残酷な男だよゼロは)


獣の目を目掛けて剣を突き刺すワルター。


(ごめんよ。恨むならゼロを恨んでくれたまえ)


その時、小動物がワルターの足に噛みついた。


「あいた!」


体勢を崩したワルターの剣は狙いをはずして獣の鼻に当たる。すると獣は急激に苦しみだし、一目散に逃げ出した。リーダーを失った他の獣たちも散り散りに姿を消した。


「結果……オーライかな?」



残るはゼロとニコル。

ニコルは手駒をすべて失い、圧倒的不利な状況にも関わらず、全く闘志の火を消していない。


「何を考えている?」

「ふふ、さあ? なんでしょう?」


不適な笑みを浮かべるニコル。そしてゼロに忍び寄る二つの影。最後の戦いが始まる。




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