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スティールスマイル  作者: ガブ
第三章 もう一人のゼロ
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episode 87 「オイゲン」

空気が張りつめる。


ゼロは銃に手をかけ、オイゲンは拳を握りしめる。


「ゼロ。お前の噂は嫌というほど聞いている。血も涙もない殺人マシーン。お前の歩いたあとには屍すら残らないという。だが俺にはやらなければならないことがある。そう簡単に殺られはしないぞ」


とてつもないプレッシャーがゼロを襲う。オイゲンの足元から振動が発せられ、船が揺れはじめる。


「フェンリー、あの男は誰なんだい?」

「あいつは組織最強のパワーを持つ殺し屋、殴殺のオイゲン。最近顔見ねぇと思ったらこんなところに居やがったのか」

「ふうん。最強ね」

「……なに考えてやがる」


フェンリーの話を聞いてオイゲンの方に歩き出すワルター。


「なんだお前は。俺は今ゼロと話している。よそ者は引っ込んでいろ」

「俺は惑殺のワルター。君と同じ、殺し屋だよ。俺とも戦ってみないかい?」

「なるほどな。ゼロの連れがまともな人間の筈はない。……よく見たらそこのお前も見たことがあるな」


ワルターとフェンリーをまじまじと見るオイゲン。どうやら二人も敵として認識されたようだ。


ワルターは剣に手をかけ、フェンリーも吸っていたタバコをしまう。




「何をしているのオイゲン! わたくしを無視するつもり?」


客室からセシルの声が響く。


「お、お嬢様!」


その声によって張りつめていた空気が一気にとける。オイゲンは先程までの険しい顔を崩して、ゼロたちに背を向け一目散にセシルのもとへと駆け出した。



「なんだい、一体……」


ワルターはがっかりしたように剣から手を離して座り込む。




「オイゲン! あなたはわたくしのボディーガードでしょう? 何を呆けているの!」

「も、申し訳……」

「言い訳は結構!」


先程まで自分達を殺そうとしていた大男が一人の少女に頭を下げ、申し訳なさそうに体をちぢこませている。


「あれが組織最強のパワーかい? 確かにさっきの気迫はすごかったけど、まるで隙だらけじゃないか」


ワルターはすっかりオイゲンに興味をなくしたのか、日課の訓練に取りかかる。まだ片手の素振りにはなれないようだが、ふらつきながらも少しずつモノにしていく。


フェンリーは新しいタバコを取り出し、火を付ける。


「フー。確かに拍子抜けだ。オイゲンと言やぁお前に負けず劣らずの冷血な男と聞いてたが……ありゃ本当にオイゲンか?」


ゼロにも思うところがあった。


(オイゲンほどの男が権力に屈するとは考えにくい。ではなぜあの貴族の少女に仕えている。 金か? いや、違う。この様子はまるで……)


セシルと会話するオイゲンの姿に自分を重ねるゼロ。


(そう、あれはまるで……)



セシルと話すオイゲンの優しい顔を見て、殺し屋と想像するものは誰もいないだろう。



(俺とレイアの様だ)



オイゲンに近づくゼロ。ゼロに気づいたのかオイゲンの表情が再び険しくなる。


「どうしたの、オイゲン。怖い顔をして」

「……お嬢様、失礼します」


オイゲンはセシルの首もとに触れ、トンっと指で叩く。セシルはたちまち気絶し、オイゲンの腕のなかで眠る。


「無様なものだろう。この女は俺の標的だった」


オイゲンは腕の中の小さな少女を優しい眼差しで見つめる。



「ゼロ、大方お前たちは任務を全うしない俺を処刑すべく、組織から派遣されてきたのだろう」

「……ああ、そうだ」


ゼロはあえて嘘をつき、オイゲンの反応を見る。


「お前を抹殺する前に、裏切った理由を聞けとも命じられている。そうすれば少女の方は見逃してやる」

「組織の犬どもの言葉など信じられるか。だがいいだろう、聞かせてやる。そのあとでお前たちを殺してやる。何があってもセシルは俺が守る」


口元が緩むゼロ。


オイゲンは語り出す。これまでの経緯を。セシルと出会い、何があったのかを。





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