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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
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episode 81 「復活」

一歩、一歩と血の染み込む大地を踏みしめるゼロ。


数人血を流して倒れている。知らない顔もあるがこの女兵士の顔はよく覚えていた。


「ローズ・ヴァルキリア……よくぞ約束を果たしてくれた。感謝する。今は休め」


ローズに一礼し、今もなお戦いが続いている場所へと歩を進める。


元海賊、元殺し屋の氷殺、フェンリー・フェンネス。そしてゼロを苦しめ続けた老兵、モルガント帝国軍最高戦力、元帥イシュタル。二人とも忘れることのできない存在だ。


イシュタルがいち早くゼロの存在に気づく。


「まさか、あり得ん! なぜ貴様が立っている!」


驚愕の表情を隠せないイシュタル。フェンリーも振り返る。


「……おせーよ」


フェンリーはバタッと倒れる。受け止めるゼロ。そしてゆっくりと地面におろす。


「答えろ! どうやって残りの3人を排除した! こんな短時間では不可能なはずだ!」

「貴様がオリジナルか」

「答えろと言っている!」


動揺するイシュタル。


「排除などしていない。奴等は今もなお俺のなかでうごめいている」

「ならなぜ貴様が人格どもを支配できている!」

「さあな。だが今まで俺の頭の中にあったモヤは完全に消え去った。」

「このワシの掌握を越えるだと? 許せん。断じて許せん。再び虚空の彼方に閉じ込めてやる」


もはやイシュタルの目にはゼロ以外何もうつらなくなっていた。先程まで戦っていたフェンリーにさえも。


そんなイシュタルではフェンリーの攻撃を避けることは不可能だ。


最後の力を振り絞り、フェンリーは地面に氷を出現させる。それは小さな小さな氷だったが、我を忘れて突っ込んでくる老人の足元を掬うには十分だった。


「なっ!」

「終わりだイシュタル」


ふらつくイシュタルの顎に強烈な蹴りを繰り出すゼロ。なんとか体勢を立て直し、エクスカリバーでゼロを襲う。が、それも後ろにいた兵士に弾かれる。


「レオグール、貴様……!」

「観念してください。元帥殿」


ゼロの蹴りが迫る。


(ふざけるな……! 負けるのか? このワシが? そんなことあってはならない。ワシは帝国軍最高戦力、元帥だぞ!? こんな雑兵どもに遅れをとっていいはずがない!)


ゼロの蹴りは見事イシュタルの顎に命中する。吹き飛びながらイシュタルの意識が遠退く。そして地面に到達した頃には完全に途絶えた。



帝国軍最高戦力、イシュタル元帥は倒れた。



「やりやがったな、ゼロ」


フェンリーと握手をかわすゼロ。


レイアが駆けてくる。たくさんの涙を浮かべて。


「ゼロさん! 本当にゼロさんですよね!?」

「ああ、俺はゼロだ」


ゼロに抱きつくレイア。


「バカ! どれだけ心配したと思っているんですか!」

「済まない。だが、レイア。お前は泣かないのではなかったのか?」

「うるさい!!」


涙を隠すようにゼロの胸に顔を埋めるレイア。ゼロはレイアを優しく抱きよせる。


ケイトが縛り上げたイシュタルをフェンリーが凍らせる。全身を凍らせようとするが、気絶してもなおエクスカリバーを手放さないため、締めた縄と下半身のみ凍らせる。ワルターのこともあったため、腕を切り落とそうと提案するフェンリーだったが、ケイトとレイアに猛反対され断念する。


フェンリーは急いでワルターとリースを医者につれていく。マークはローズの肩を支えながら、リザベルトを取り戻しに帝都へ戻る。



「……済まなかった」

「もういい。お前のお陰でレイアは無事だった。感謝する」


目を覚ましたローズはゼロを見るなり一言謝罪し、ゼロの返答を聞くと救われたように微笑んだ。




残されたゼロ、レイア、ケイト。


「これからどうしますか?」


レイアが嬉しそうにゼロを覗きこむ。


「ああ、そうだな」


そこまで答えて腹の虫が騒ぎだしてしまうゼロ。


「とりあえず、お前の手料理が食べたい」

「はい!」

「私も、手伝う」


三人は港を後にする。いつの間にかイシュタルの姿が消えているとも知らずに。






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