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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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番外編 「とある島での殺し合い part2」

ゼロはひたすら観察を続けた。殺し屋としての長年の勘を働かせるのにはこの場所はまさに格好の舞台であり、ゼロの気配に気がつく者は居なかった。ただ一人を除いて。



「へぇ、面白そうなヤツが居るじゃんか。退屈せずに済みそうだぜ」



男はスナイパーライフルに付けられたスコープを覗き込みながら呟く。そこには極わずかにゼロの姿が写し出されていたが、男は引き金を引こうとはしない。少しでも敵意や殺意を向ければ間違いなく気付かれると感じていたからだ。そして気づかれればこの距離では間違いなく避けられる。



「じっくりと待たせてもらうぜ。お前と俺、一対一の舞台が整うまでな」



男はゼロから目線を反らし、別の獲物を狙う。






(今、見られていたな)


ゼロは僅かな視線を感じ取っていた。が、どこから向けられているのかは見当もつかない。相当な距離から観察されていたとしか思えない。


(俺が他の獲物を狙った隙に仕留めようというわけか。中々に用心深いな。簡単には尻尾をつかませてはもらえんらしい)


ゼロは物陰に隠れる。この場所なら四方どこからでも狙われることは無い。



(よし、しばらくここに身を潜め、敵の数が減るのを待つとしよう)



ゼロは息を殺し、じっと身を潜める。その時だった。





「ッ!!」





突如後ろを振り返るゼロ。とてつもない殺気が押し寄せてくる。が、人の気配はまるでない。



(何だ……今のは)



相変わらず殺気は収まらない。それどころか、その勢いと強さは徐々に増してくる。このままここに居れば間違いなく死ぬ、そんな予感がゼロの全身を駆け巡る。その直後、見えない何かがゼロの体を通りすぎていく。




「うっ、」




その場にうずくまるゼロ。理由はわからないが、体が蝕まれていく。いつの間にか他の人間たちはこの場を去っており、座り込んでいるのはゼロ一人だけになっていた。


(なるほど……連中はこれを避けて……)



考えていても仕方が無い。ゼロは自分を追い抜いていった何かを追いかけていく。そしてある地点まで到達すると、ゼロを蝕んでいた何かも無くなる。


(活動できる範囲が存在する。なるほど、俺のように隠れてやり過ごすという考えは通じないというわけか)



ゼロは苛立ちを覚えながら背後の気配に気を配る。今はまだ追いかけてくる様子はないが、ゼロの予想通りならまた追いかけてくるのだろう。手のひらの上で踊らされているようで気にくわないが、今はここのルールに従うしかない。



範囲が狭まるにつれ、次第に他の人々の姿が見えてくる。皆ここまで生き残った猛者たちであり、それなりの気配も感じられる。ゼロは依然として身を潜めるが、その限界もそう遠くないだろう。



(あのスナイパーはどこだ? 第一に警戒すべきはそいつだが、気配がない)



慎重に辺りを見渡すゼロだが、あのときの背筋が凍るような感覚はない。少なくとも近くには居ないようだ。


(範囲はだいぶ狭まっている。既に何者かに殺されたのか?)


そんなはずはないと心の中では思っていても、姿は見えない。が、それは間違いだった。スナイパーはまだ息を潜めていた。




ヒュン……




ゼロの目の前でまた一人男が撃たれ、そして倒れる。ゼロはすぐさま弾の飛んできた方向に顔を向けるが、そちらは範囲の外だ。



(バカな……いや、しかし!)




スナイパーは範囲の外に居た。範囲の外に居れば徐々に体力を奪われていくが、すぐに命が無くなるわけではない。範囲の外でも回復を行えば、僅かではあるが延命を計ることが可能だ。



「何を驚いてやがる……さては素人か?」



スナイパーはゼロの動揺を過敏に察知し、スコープでゼロを覗く。


「ん?」


スナイパーはゼロの姿を捉えると、一度スコープから目を離し、ぱちくりと動かす。そしてもう一度覗きこむ。







「へ、へへ。只者じゃねぇとは思ってたけどよ。まさかお前だとはな、ゼロ!」




スナイパーは満面の笑みを浮かべてゼロに向かって銃口を向ける。勘のいい相手はなるべく最後にしておきたかったが、そんな悠長なことは言っていられない。そして何よりもこの胸の高鳴りが抑えられない。




弾がゼロの頬を掠める。見た目的には大した傷ではないが、何故か命が大幅に持っていかれたことがよく分かる。


「くっ!」


ゼロは岩影に身を潜める。スナイパーからは狙えない位置だが、安心はできない。今の音を聞いた他の人間たちがこちらに気づいてしまったからだ。


(多数の足音……間違いなくこちらに向かってきている)



この人数が相手では生き残ったとしても無傷とはいかないだろう。そしてスナイパー相手では万全の状態でも心許ない。ここから移動するしかないが、そうすれば間違いなくスナイパーに狙い撃ちされるだろう。



「やるしかない。ここから動かず、かつ無傷で連中を殲滅する」



ゼロはリボルバーに弾を込める。が、ゼロが弾を放つよりも先に向かってきた人間たちは目の前でばたばたと倒れていく。






「邪魔するんじゃねぇよ」





十数人居た人間たちはスナイパーによって撃ち抜かれる。あっという間に生き残りはスナイパーとゼロだけとなってしまった。



ゼロはスナイパーの方を向く。スナイパーは範囲外からゆっくりと現れた。その姿を一目見たとたん、ゼロは一瞬言葉を失うが、すぐに冷静さを取り戻す。




「まさか、いや、やはりと言うべきか。考えてもみればお前以外にはあり得ない話だ。ジャック!」



ゼロは目視したスナイパーに対して口を開く。そこに居たのはよく見知った人物、そして唯一ゼロが銃の扱いにおいて歯が立たない人物だった。



「さあ、あのときの決着をつけようぜ!」

「望むところだ、ジャック!!」



二人は共に姿を隠す。両者共に胸の高鳴りが最高潮に達する。


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