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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 595 「まだ、死ねない」

ゼロたちを仕留めるために魔女は、なりふり構わず攻撃を仕掛けた。直接ゼロたちに攻撃を与えることは出来ずとも、そうすれば間接的にダメージを与えることが可能だと考えたのだ。


「ゼロ、少々厄介だ」

「ああ、だが俺たちの後ろには神が居る」



ちらりと後ろを振り返るゼロ。レイアとワルターが神によって保護されているのを確認し、躊躇なく攻撃を避ける。



「もう!」


モルガナが四方八方に飛び散る魔女の攻撃を無効化していく。


「あの人間、完全に私たちを嘗めてない?」

「やさぐれるな。現状魔女にダメージを与えられるのはあの二人だ。ならば我々はサポートに徹する」


頬を膨らませるモルガナをなだめるアスラ。



「しょうがないなぁ、もう! 神様にサポートしてもらえるなんて、ありがたく思ってよね!」



文句を言いつつも、魔女の攻撃を遮るモルガナ。レイアとワルターに被害が及ばぬよう、きっちりとガードする。




「ゼロさん……」


レイアは手を組んで祈る。世界の平和を、そしてゼロの勝利を。






魔女のエネルギー残量はかなり減ってきていた。予想を上回るゼロとアーノルトの力によって、回復を余儀なくされていたからだ。おまけに、追い詰められての無差別攻撃によって燃費も大分悪い。もしかしたら魔女に勝てるかもしれない、ゼロやアーノルトクラスがあと数人居れば。




「うっ!」

「ゼロさん!!」




レイアが叫び声を上げる。ゼロが魔女の攻撃にかすったのだ。ほんの少しかすっただけだというのに、ゼロの体は大きく吹き飛ばされ、全身を打撲する。



「問題ない」


レイアを安心させるためそう言うゼロだったが、その顔はどう見ても問題がある。



「ゼロ、まだやれるか」


アーノルトが視線は魔女に向けたままで尋ねてくる。


「あたり、まえだ」


ゼロの体はここへ来る前に既にずたぼろだ。今の魔女の攻撃が完全に止めを指す形になり、ゼロは限界に到達していた。もう一度今の攻撃を受ければ、もう二度と立ち上がれないだろう。



「満身創痍を形にしたようだな。なぁ人間、いっそ楽になったらどうだ? どうせ遅かれ早かれ人は死ぬのだ。たかだか100年程度の命、苦しみに満ち溢れた最期など迎えたくはないだろう?」



魔女の邪悪な囁きがゼロに響く。その言葉には幻覚ににた作用もあり、レイアに出会う前のゼロならばここで折れてしまっただろう。だが、今は違う。




「笑えんな」

「なに?」




ゼロの言葉に、今度は魔女が耳を傾ける。



「笑えないと言ったんだ。俺が死ぬときは心から笑ったあとだと決めている。だから今は死ねない。少なくとも貴様を殺すまではな」




ゼロは最後の力を振り絞り、再び魔女に銃口を向ける。ルインからもらった石ころはもう残り少ないが、それでもこのすべてを急所に撃ち込めば勝てると確信していた。



「おのれ……おのれぇぇ!! この下等生物がっ! いい気になるのも大概にしろ!!」



魔女の怒りが爆発する。残ったすべての力を憤怒の力に変換し、魔女の体は巨大に変化する。ゆうに十メートルを越す巨体となった魔女は、その巨大な足で地面を蹴り飛ばす。



「モルガナ! ミカエル! ルナ!」


アスラが叫ぶ。呼ばれた三人の神は無言で頷き、ミカエルがレイアとワルターを安全な地点まで運ぶ。モルガナは全力で魔女の力を抑え込み、ルナは失われていくモルガナの体力の回復に専念する。




「人間、被害は気にするな。すべて我々が制御する!」


アスラもモルガナのフォローに入りながらアーノルトとゼロに叫ぶ。



「人間……か」


アーノルトは小さく呟き、クナイを構える。アーノルト自身も大分体力をすり減らしていたが、背中をマリンが見つめていると思うと、不思議と力がわいてくる。隣で戦っているゼロに遅れをとりたくないという心情もあるのだろう。とにかく、今のアーノルトは過去のどのアーノルトよりも強力だった。



「小賢しい有象無象どもが! 大人しく土に還れ!!」



魔女は無茶苦茶に地面を蹴り飛ばす。もうゼロたちの姿も目に入っていないのだろう。




「ゼロ、死ぬのは勝手だが今はまだ死ぬな」


アーノルトがゼロに語りかける。


「お前が俺の心配をするとはな。組織に居た頃ではあり得ない話だ」


ゼロはアーノルトの方を見ずに言葉を返す。



「そうだな。俺たちは仲間であり、敵だった。だが今は仲間だと思っている。お前の力を信頼している」

「ああ、俺もだ。俺一人では勝てない」



二人は顔を見合せる。




「勝つぞ。ゼロ」

「もちろんだ。アーノルト」




二人はクナイと銃を合わせる。そして化物となった魔女を睨み付ける。


攻撃手段はクナイと銃のみ。こちらは満身創痍、敵は世界最強の侵略者。パワーもスピードもまるで歯が立たない。一撃でも攻撃を食らえばその瞬間に敗北は決定する。それでも二人は諦めなかった。負ける気もしなかった。世界の命運がかかっているからというわけではない。たった一人の少女との日常、そしてたった一人の女性との共存、その為に戦う。その為なら戦える。


レイアとマリン。その二人の為ならば、ゼロとアーノルトは魔女にだって立ち向かい、そして打ち崩すことができる。二人はそう確信していた。






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