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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
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episode 594 「人間の強さ」

スピードや破壊力は圧倒的に魔女が上だ。攻撃を一撃でもうければ、人間であるゼロなど木っ端微塵に吹き飛ぶ。攻撃を直接食らわなくてもその手に掴まれればそれで終わりだ。死ぬその瞬間までエネルギーを吸いとられてしまう。


神々が攻撃せずに傍観しているこの状況において、魔女は圧倒的優位に立っている筈だった。


が、魔女の攻撃は全くもってゼロとアーノルトに当たらない。殺し屋としての勘が二人の神経を研ぎ澄ませ、魔女の攻撃を未来予知のごとく回避していく。そして魔女の資格に回り込み、クナイや銃で絶え間なく攻撃を仕掛けていく。



「くそが! ちょこまかと……!」



魔女の怒りはだんだんと焦りに変わっていく。世界を滅ぼすための力を手にいれ、この世のすべての頂点に立っておきながらただの人間すら殺せない事実にさいなまれる。




(私は魔女だぞ!? 世界の支配者だ! 虫けらである人間など、本来拝むことすらできない超越者だ! こんなことが有っていい筈がない!!)




ゼロの銃弾が脳天に突き刺さる。ただの弾ならダメージなど無いに等しいが、殺意のこもったゼロの攻撃は魔女に確かなダメージを与える。


「おのれぇぇ!!」


そしてその傷が回復するよりも早く、アーノルトがクナイで更に傷を大きくする。


「ごふっ」



ゼロの撃ち抜いた脳天を一寸の違いなく突き刺すアーノルト。回復の間に合っていない脳天への攻撃は魔女のダメージを更に増幅させる。




「あの魔女と、まともにやりあっているのか?」


アスラは驚きを隠せない。そのアスラのとなりに並ぶマリン。



「驚くほどのことではない。私がこうなることを見越して育ててきたのだからな」


そう言うマリンだったが、アーノルトの成長はマリンの想像を遥かに越えていた。



(隣ではなく、私の先に行ってしまうとはな。お前の隣は、その青年がふさわしい)



アーノルトとゼロの背中を見つめるマリン。あの二人なら魔女と戦える、そう確信した瞬間だった。





だが、そう簡単にことは運ばない。


疲労からか、アーノルトのクナイが狙いからずれ始める。


「アーノルト、集中しろ。この瞬間にこの世界の命運がかかっている」

「わかっている。貴様こそ俺に構う暇があったら一瞬でも長く魔女の気配を探り続けろ」



エネルギーに限界がある魔女だが、それは当然ゼロたちも同じだ。しかもその残量は魔女を遥かに下回る。



(持久戦に持ち込めば勝機は私にある。だが、この虫けらどもに構っていては後ろの連中と戦うための力が……仮にこの二人の魂を吸いとったとしても、そのエネルギーはたかが知れている。腹の足しにもならない)



それでも二人の魂を吸いとろうとする魔女。だが、うまくいかない。二人は魔女の気配を過敏に察知し、攻撃を避け続ける。一撃当たれば勝ちという状況の中で、もどかしさが続く。






その頃、ガイアとマークは大津波に見舞われた地点まで到達していた。既に波は落ち着いていたが、その被害はすさまじく、至るところにその爪痕が残されていた。だがフェンリーたちの対応がよかったのか、人間の死体らしきものはひとつも見当たらなかった。




「兄上……」

「ああ、これが魔女の仕業だというのなら、見逃すことはできない」



二人は握りこぶしを強く握る。そこでふとガイアは背後から忍び寄る気配に気がつく。腰に刺しているエクスカリバーに手をかけ、振り向くガイア。



「誰だ!!」

「うぁ」



そこに居たのはケイトだった。ケイトは驚いて尻餅をついてしまう。


「あ、君は」


ガイアはすぐにかけより、ケイトが起き上がるのを助ける。



「君はケイトだったね。ここに魔女が現れたのか?」


ガイアがうつ向いているケイトに声をかける。


「まじょ? 何のこと? それより、ゼロとレイアとワルターを見なかった!?」


ガイアの服を掴みながら尋ねるケイト。目尻には涙を浮かべ、その顔からは必死さが伺える。



「話を聞かせてくれ」



ケイトはガイアとマークを隠れ家に案内する。そこでは更に暗い顔をしたフェンリーが待っていた。



「なんだ、誰か連れてきたかと思ったらお前らかよ。逃げ出した俺たちを蔑みにでも来たってのか?」



三つ聞こえた足音に少し期待したフェンリーは残念そうに肩を落とす。


「フェンリー、そんな言い方は……」

「一体ここで何があったんだ」



ケイトを手で制止し、質問するガイア。フェンリーは少しガイアを睨み付けるが、ここであったことを話し始める。





「兄上、やはりアーノルトの言っていたことが正しかったようですね」

「ああ、おそらく魔女の攻撃を何らかの方法で飛ばしたのだろう」


二人はフェンリーの話を聞いて憶測する。


「くそ、結局俺たちは巻き込まれんのかよ。俺たちが何したってんだ!」


フェンリーは地面を強く叩く。その時、叩いた音と共鳴するように遠くから爆発音のような音が聞こえる。



「兄上、あそこですね」

「ああ、あそこにきっと魔女がいる。アーノルトもな」



二人は早速立ち上がり、音のする方向へと向かおうとする。そのガイアの裾を掴むケイト。



「なんだ?」

「ゼロとレイア、それにワルターを探してよ」


泣き出しそうな顔でガイアを見上げるケイト。そのケイトの手を優しく剥がすガイア。




「すまない。俺も彼らのことは心配だ。力になりたいとも思っている。だが、俺たちは行く。この世界を救うために」

「おい……」



今度はフェンリーが二人を呼び止める。その声は敵意に満ちており、マークが剣に手をかける程度には凄みを帯びていた。



「お前さっき攻撃が飛ばされてきたっていってたな。何でだ」

「俺とアーノルトは共に行動していた。そしてアーノルトは俺たちでは感知できなかった魔女の気配を感じ取っていたんだ。そしてアーノルトはその気配の元に向かった」


話続けるガイア。徐々にフェンリーの怒りも鎮まっていく。


「そしてこの被害だ。ここまでのことができるのは魔族か神くらいのものだろう。なら攻撃はそこから飛ばされてきたととらえるのが自然。そしてその方法はおそらくマリンのゲートだろう」


段々と怒りの顔が希望に変わっていく。



「じゃあ!」

「ああ、逆にそのゲートによって向こうに転送された可能性は充分にある」



ガイアの言葉を聞いたケイトとフェンリーは顔を見合せ、立ち上がる。




「なら私も!」

「ああ、俺たちも行くぜ! 今度こそ魔女の所によ!」



フェンリーとケイトの二人は、マークとガイアと共に魔女を目指して歩き出した。








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