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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
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episode 61 「孤児の村」

リンは依然として気絶したままだった。ワルターもすぐには行動を起こさず、相変わらず稽古に励んでいる。


リースは皆をここに連れてくるのは避けたかった。ワルターを巻き込むのもそうだが、自分達の過去を知られたくなかったからだ。


リースとワルターは本当の兄妹ではない。二人は戦争孤児だった。


この村はリースの父が興した村。孤児たちはこの村に集められ、もとい追いやられた。ワルターだけではない、リースにはたくさんの家族ができた。経済面はとても苦しく、リースの父を助けるためリースの8つ年上のワルターが軍に入隊する。生活は苦しかったが、孤児たちで支え合って生きていった。


しかしそんな日々は長くは続かない。ある者は疫病に倒れ、ある者は人拐いにあい、ある者は生活に耐えられず自ら死を選んだ。やがて子供たちはリースとワルターだけになっていた。


ワルターは訓練好きの性格が幸いし、瞬く間に出世していった。ある日を境にやけに血の臭いがするようになり、家に帰らないことが多くなったが、どうせ山籠りでもしているのだろうと特に気にはしていなかった。


生活は子供が減ったことにより大分楽になっていた。しかしある日事件が起きた。リースの父が戦死したのだ。生活は瞬く間に苦しくなった。


リースも軍に入隊した。父がそうだったように。兄のように瞬く間にとはいかなかったが、もうすぐ将校というところまで来た。


たが今回のイシュタル元帥への反逆で軍をクビになるかもしれない。もしそうなっても悔いはない。自分で選んだ道なのだから。






ゼロは意識の中でイシュタルと戦い続けていた。ゼロの攻撃はすべて弾かれ、イシュタルの攻撃はすべて命中する。絶命しても絶命しても次の瞬間には蘇り、再び戦いを余儀なくされる。そのうちに何をしているのかさえわからなくなる。自分がゼロだということも。レイアの名前さえも。


だが最近になって攻撃が当たるようになってきた。イシュタルの攻撃も少しずつ見切れるようになる。モヤがかかったような状態が解消されつつあった。





ワルターを訪れてから3日が経った。


「ワルターさん帰ってきませんね。何かあったのでしょうか?」


ワルターは森にいって以来帰ってこない。それを心配するレイアだったが、リースは特に気にしていないようだ。


「兄が家を空けるのはいつものことです。ふらふらと出ていってフラフラになって帰ってくるのです。それよりもゼロさんの様子はどうですか?」



リンも全く目を覚まさない。が、こころなしか以前よりも顔が落ち着いているように見える。



「今はゼロさんの記憶が戻るのを信じて待つしかありません。」



ドカン!



家の外で音がした。


「あ、ワルターさん帰ってきたのでしょうか?」

「いえ、おかしいです。森とは方向が違う。」


二人は恐る恐る窓から外を覗く。現れた人物を見て安心したのかリースはドアを開けてその人物の元へと駆ける。



「フェンリーさん!無事でしたか。よくここがわかりましたね?」


現れたのはフェンリーだった。だがなぜかリースの問いかけに答えようとしない。



「フェンリーさん?」



フェンリーは黙ったままリースに手をかざす。


「え?」


かつての記憶が甦る。初めてフェンリーと会った時のあの記憶が。


フェンリーはリースの頭を掴む。が、既にそこにリースの姿はなかった。辺りを見渡すフェンリー。すると遥か後方にリースを抱えた一人の男を発見する。



「全く危ないなあんた。俺の大切な妹を氷付けにして持ち帰ろうとするなんて。」



ワルターは気絶しているリースをそっと地面に下ろす。そして剣を構え、フェンリーに向ける。



「話は聞いているよ、氷殺のフェンリー。うらやましい加護だな。しかし何で妹を狙うんだい?まさか妹に惚れているのかい?だったらまず兄である僕に話を通すのが筋じゃないかな?」


フェンリーは黙ったままワルターに向かって突進してくる。


「ハハ!ゼロ戦の前の準備運動とさせてもらうよ!」







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